第6話 穏やかな春の日

「今度の日曜日、集まりませんか?」


一夜さんからグループメールが届いたのは奈那と飲みに行った日から数日後のことだった。


「はーい! 参加します!」


蒼斗くんの文面からはテンションの高さが伝わってくる。


「私も参加で! 美愛はどう?」


奈那の質問に


「私も参加できます!」


と返信した。


「じゃあ11時にこないだのところで!」


初めて待ち合わせをした日と同じように奈那たちの地元で待ち合わせをすることが決まった。


よし、また週末まで仕事頑張りますか!


***


そして日曜日、私は約束の時間に駅にいた。

あのときの記憶を頼りに、駅に背を向けて歩く。

少し歩くと、見覚えのあるワンボックスカーが停まっていた。


「あ、美愛ちゃん良かった! 場所わからないかと思って迎えに行こうと思ってた」


私を見つけると一夜さんが走ってきてこう言った。

もうみんな到着していた。


「美愛、方向音痴だからねー」


奈那がいたずらっぽく笑う。


「もっと駅側に停められたら良かったんだけど、ごめんね」


申し訳なさそうに一夜さんが言ったので、


「 全然! 確かに私、方向音痴なんですけど、ここはわかりやすかったので」


と、慌てて首を振った。


「良かった」


一夜さんはこう言って笑うと、また後部座席のドアを開けてくれた。


そして車は30分程走り、大きな公園に到着した。


「わーピクニック日和」


奈那の言うとおり今日は快晴。

レジャーシートとそれぞれ買ってきたお弁当やお菓子を広げた。

私たちは他愛もない話をしながら過ごす。


「美愛、失恋の傷は癒えてきた?」


突然、奈那が話を振ってきた。


「え? なになに? 美愛ちゃん失恋したの?」


蒼斗くんが食い付く。


「付き合ってた人と最近別れてね……。でも仕事が忙しいからそれどころじゃないかな」


私は苦笑いしながら言った。


「じゃあ美愛ちゃんの新たな門出を祝ってかんぱーい」


蒼斗くんが缶酎ハイを振り上げて言った。

門出……なのか!? まぁいっか。


「かんぱーい」


私たちも蒼斗くんに続けた。


「奈那みたいに優しい彼氏が見つかるといいなー」


つい、奈那と飲んでいるときのテンションで言ってしまったが、言い切ったところで、しまったと思った。

一夜さんは表情を買えずに手元のノンアルコールビールを飲み干した。


「ん! 蒼斗くんが買ってきてくれたおつまみおいしいね!」


私は慌てて話題を変えようと、おつまみに手を伸ばした。


「だろー? これあんまり売ってないんだぜ!」


蒼斗くんはドヤ顔で言った。


「そうなのー? 私も食べてみよーっと」


そう言って奈那も手を伸ばす。



雲ひとつない快晴。

そんな空の下で4人の男女がワイワイしてる。

一見共通点なんて何ひとつなさそうな私たち。

でも、奈那という接点で私たちは繋がった。


「あ! いってー!」


どこからともなくボールが飛んできた。

向こうでサッカーをしていた中学生のボールが蒼斗くんに当たったのだ。


「すいません!」


蒼斗くんがボールを投げると中学生は頭をさげた。


「あんな距離から飛んできたボールが当たるなんて蒼斗、ある意味強運だな!」


一夜さんが笑う。


「確かに! 宝くじ買ったら当たるんじゃない?」


奈那が言う。


「じゃあ買っちゃおうかなー!」


お調子者みたいな口調で蒼斗くんが言う。

そして私たちはまた笑った。



端から見たら私たちは俗に言う【青春】みたいにキラキラして見えるのかな?


気づけば楽しくて笑ってばかりで、時間が経つのも忘れていた。


こんな日々がずっと続くと思っていた。


ずっとずっといつまでも……。

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