第17話 彼女の気持ち
「え……ありえないんだけど」
気持ちの整理がつかないまま、私はあのとき梨乃にメールをしていた。
梨乃はすぐに駆けつけてくれた。
「それは想定外だった。ごめん、美愛!」
梨乃にイチくんの話をしたとき、まず奈那に話してみなよ、と背中を押してくれたことを謝っているのだ。
「ううん。私も奈那の協力なしじゃ進めないと思っていたし、まさか奈那がこんな子だとは思ってなくて……」
こうして、梨乃が来てくれて私は心から救われている。
「その女、何がしたいのかな?」
梨乃が怒りを露にする。
「うん……私もわからない。」
私を傷つけることが目的なら3人でご飯に行こうなんて言ったりしないだろう。
だから奈那のことがわからなくなる。
「私が傷ついたり、喜んだり、そういうの見て面白がってるのかな……」
私は呟いて、ため息をついた。
「私が元彼と別れてからは私の前ではノロケ話ばっかりだったし、幸せそうだったから、私の邪魔なんてする必要ないと思うんだけど……」
その私の言葉に梨乃はうーんと首を傾げた。
「美愛が可愛いから嫉妬してるんじゃない?」
梨乃の一言にそんなことあるわけないと思った。
奈那が私に嫉妬……?
嫉妬してるのは私の方……。
「前に写真見せてくれた子だよね?正直、可愛いタイプではなくない?地味だし……」
確かに初めて奈那に会ったとき、私の周りにはいないタイプだと思った。
真面目でおとなしそうで、どちらかというと地味なタイプで。
だけど、いつからか私は奈那のことをイチくんの目線で見るようになっていた。
か弱くて、甘え上手で、それに地味くらいな女の子な方が真面目なイチくんは好むのだろう。
「一緒にバイトしてたときは何もなかったの?」
「そういえば……」
梨乃に言われて、私は思い出していた。
居酒屋のバイトを始めて半年くらいたった頃に、バイトの先輩といい感じの関係になった。
バイトの後に家まで送ってもらったり、休みの日にデートしたり……。
友達以上恋人未満みたいなところだった。
奈那と私は数ヶ月違いで入ったこともあり、わりとすぐに打ち解けたので、私はそのことを奈那にだけ話していた。
もうあと1、2回デートしたら付き合えるかな?
そんなタイミングのときだった。
先輩が私とのシフトをずらすようになったり、メールの返信が来なくなったのだ。
もちろん会うこともなくなっていた。
その頃、別の先輩たちが私といい感じになっていた先輩と奈那が会っているのを見かけたと噂しているのを耳にした。
そのときも奈那のことを一瞬だけ疑ったけれど、その後すぐに奈那が
「あの人はいろんな女の子に手をだしている」
と話していたので、私は変な男に引っ掛からなくて良かった、なんて呑気なことを思ったのだ。
「それ先に言ってよ~」
梨乃が怒った口調で言った。
「ごめん、忘れてたよ……てっきり私、先輩が遊んでる人だと思い込んでて……」
私は馬鹿だと思った。
同じようなことが昔にもあったのに忘れてるなんて。
「すぐに縁切りなよ!」
梨乃の口調は強くなる。
どうして、イチくんじゃなきゃダメなんだろう。
もう奈那が協力者ではないとわかったところで、私はどうすることもできない。
奈那と縁を切ったら、イチくんとももう二度と会えないような気がして……。
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