部活勧誘

 始業式から数日後。特に何か宿題があるわけでもないので、帰ろうとしていた。


「幸太、部活は?」

「俺は幽霊部員だぞ?」

「じゃなくて勧誘! ほぼ強制参加だぞ?」

「うへえ、忘れてた」


 話しかけてきたこいつは、佐藤大城サトウダイキ。中学からの腐れ縁。席替えすると席が必ず前隣か後ろ隣になる。ちなみにハルは左隣固定、アキは右隣固定。どうなってんだ。


「部長がゆるいとはいえ、一応行けよ?」

「やだ」

「文句言わずに行った行った」

「へいへい……」

「横でおとなしいお二人さんもね?」

「「コウから離れたくないから行く」」

「いつも通りだな。じゃ、俺も行くから」

「おう」


 大城はサッカー部。どんな事をしてんのかは知らん。興味ない。というかハルとアキの事が最優先。


「久しぶりの部活~」

「まあ、俺ら幽霊だし」


 俺ら三人の部活、それは──


「はい、一位! 俺が最速王だ!」

「フルコンボは常識ですよ?」

「ここの裏に強い武器があって……」


 ゲーム部だと思うじゃん? 残念。生物部です。「生物を愛でる部」という謳い文句の部活なのに、無生物愛してます。一応、ハムスターの世話はしてる。


「おい、リア充が来たぞ!」

「よし、手りゅう弾準備!」

「うん、帰ろう」


 俺は目の敵である。だから幽霊なんです。部でもイチャイチャするかららしい。


「勧誘は?」

「知らぬ。拙者は忍ばねばならん」

「ゲームはいいから。まあ、こういう部活だし、いいか」

「帰れ! リア充がいていい場所じゃねえ!」

「帰りたくてもね……」


 ちらりと奥を見る。


「あああカレンちゃんかわいいいい」

「抱きしめたい……」


 双子がギャルゲー始めてる。家にPC置くとずっとゲームしちゃうから置いてないので、ここぞとばかりにやっていやがる。


「あの子たちかわいいな?」

「この部活入ろうかな?」


 廊下の新入生を無意識に勧誘してる二人。幽霊なのに。


「たまには役に立つでござるな」

「道具扱いすな」

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