遅めの花見

「花見行こう!」

「唐突」


 ハルがそんなことを言い出した。春香、という名前だけあって春が好き。だから桜も好き。


「もう半分葉っぱじゃないの?」

「行って見ないとわからないでしょ?」

「それもそうか」


 次の土曜日に行くことが決まった。


 ☆


 土曜日。朝から三段弁当を作って、去年も花見に来た川に行って、シートを広げた。


「で、お前らも来たかったと」

「部活休みだったし」

「だいたい暇でござる」

「二人の許可もらってるからよし」


 一緒に来たのはサッカー部の大城と生物部(ゲーム部)部長。紹介が遅れたが、部長は服部泰蔵ハットリタイゾウという。名字と口調からあだ名は「忍者」。ちなみに好きなゲームはくノ一のゲームらしい。巨乳多そう。


「やっぱり葉っぱ多いな」

「これはこれで拙者は好きでござる」

「その心は」

「移り行く世界の儚さを示しているからでござる」

「なるほどわからん」


 忍者は意外とロマンチストです。全然わからん。


「幸太のから揚げってなんでこんな美味いの? こりゃいい主夫になるな!」

「お前は花より団子か」

 三段弁当がものすごい勢いでなくなっていく。運動部怖い。


「想定内だ」

「いつ持ってきたそれ」


 三段弁当、三つ追加でーす。まあ三段弁当を四つ作るぐらいなら一時間で充分。


「あれ? 双子は?」

「俺の膝見ろ」

「あっ幸せそう」


 弁当もそこそこに、俺の膝枕で寝てる。二人分の頭が乗ってる。桜と俺の顔を見ながら寝たっぽい。かわいい。


「もう腹いっぱい」

「全部食いやがった」

「双子の写真撮らせてもらってもいいでござるか?」

「婚約者の俺が許可しません」

「残念でござる」

「俺も寝ていい?」

「家で寝てどうぞ」

「グ~……」

「早い」

「拙者は帰ってゲームするでござる」

「何しに来たんだ」

「双子と話したかったけど寝てしまったので……」

「了解。気をつけて」


 なんだこのマイペース空間。これが春の魔力か……


 二時間後。四人で熟睡してました。足めっちゃ痺れた。

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