温泉旅行─一日目:旅館探検

 旅館に着いた。駅からタクシーで山道めっちゃ時間かけて来た。彩華、なんかすごい場所のチケット持ってたな。


「秘境って感じがすごくいい」

「ありがとう! オークションで競り落としたからね!」

「ちょっと待て、ちゃんとしたとこで買ったか?」

「大丈夫、ネットを信じて!」

「不安しかないのだが」


 旅館はこじんまりとしていて、周りは森。露天風呂がめっちゃ気持ちいいタイプの旅館だ。……チケットが怪しいけど大丈夫かな?


「ようこそいらっしゃいました」


 入ると女将さんに出迎えられた。老舗って感じがする。


「本日から二泊三日のご予約ですね。貸し切りとなっておりますので、温泉はご自由にご入浴ください」

「貸し」

「切り」


 三人で彩華を見る。


「すごい頑張った!」

「頑張ったどころの騒ぎじゃないよ! ネットの評価も星四.八だぞ!?」

「えへへ~内緒~」


 この妹、末恐ろしいわ。


 ☆


 部屋に案内された。部屋は『桔梗ききょうの間』となっている。ちなみに桔梗の花言葉は『永遠の愛』。絶対偶然じゃないな。


「温泉見に行こー!」

「そうだな、どんな感じか見たいし」


 とりあえず荷物を部屋に置いて、女将さんに案内してもらう。


「こちらは『薔薇ばらの湯』です」


 赤い薔薇が湯船に浮いている。赤い薔薇の花言葉は『熱烈な恋』。ここ、恋愛関係の旅館だったのか。


「こちらは『胡蝶蘭こちょうらんの湯』です」


 ピンク色の湯だ。ピンクの胡蝶蘭の花言葉は『あなたを愛してます』。


「こちらは『勿忘草わすれなぐさ』の湯です」


 花言葉は『真実の愛』。なんかすごいところ来ちゃったな。


「貸し切りですので、すべての湯が混浴となっております」

「あとでゆっくり入ろう!」

「そうだな」


 他にも朝食と夕食を食べる宴会場や、ダーツや卓球台が置いてある娯楽室を案内してもらった。予想を遥かに上回る良い旅館だこれ。


 ちなみに俺が好きな花言葉は、白いアザレアの『あなたに愛されて幸せ』。みんなで一緒に年を取って、あの世でも仲良くしていたい。

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