温泉旅行─一日目:滝

 滝。滝と聞いて何を思い浮かべる? 川の一部。うんうん。滝行。わかる。ナイアガラ。ブドウおいしいよね。シャインおいしい。それはマスカット? だいたい同じだろ。


 話がそれた。滝とは何か。滝である。誰がなんと言おうと滝である。滝以外の滝など存在しない。つまり滝である。


「変なこと考えてるときの顔だ」

「その顔も良い」

「写真撮ろう」

「「「抱いて?」」」

「ダメ」


 ☆


 現在、旅館からタクシーに乗り、滝を見に来ていた。滝っていいよね。誰が見ても滝だもん。変に美術館行くよりいいね。あれは作品について不確定要素が多すぎる。滝! って感じがやっぱり良い。


「すごい」

「きれい」

「カッコいい」

「大丈夫? 語彙力低下してない?」

「なんかさ、こういうの見るとそういう感想しか湧かなくない?」

「それはわかる気がする」


 ネットには「織物のようにきれい」とか書かれてたけど、見てると心が洗われる感覚があり、そんな大層な感想は出てこない。


「……」

「……」

「……今、抱いて欲しいと思う?」

「「「……思わない」」」

「滝すごい……」


 今度三人が暴走したらここに連れて来ようかな……


 ☆


 滝の裏に入れるらしいので、入場料を払って入ってみた。なんで入場料なんか取るんだ、なんて文句でも言ってやろうと思ったが。


「うわあ……」

「これはこれで……」

「また違う……」


 すごい。普通に見てもいいが、裏から見るとまた違う。すごい。


「きれいだな……」

「うーん……」

「ん? どうした?」

「滝をバックに写真撮りたい」

「いいぞ」


 滝の裏with俺。来年の年賀状にいいかも。


「ヤバい性欲が」

「なんで!?」

「カッコよすぎる」

「さいですか」

「「「抱いて?」」」

「観光スポットで俺を撮らせるの禁止しようかな」

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