温泉旅行─一日目:勿忘草の湯

「今日はここにしようか」


 滝から帰ってきた。滝よかった。でも少し水しぶきがかかったりしたので、夕食前に温泉に入ることにした。


勿忘草わすれなぐさの湯?」

「ここがいい」


 花言葉は『真実の愛』。俺たちの愛は本物か? なんて。


「さあ入ろう」

「とりあえず後ろ向いてていい?」

「なんで?」

「裸は刺激が強い」

「毎日見てるじゃん」

「俺の裸を見ても同じことが言えるか?」

「「「すいませんでした」」」

「わかればよろしい」


 ☆


「ふいー……」


 露天風呂の混浴はすごいや。いろいろ。


「なんで揉み合いしてるの?」

「なんとなく」

「なんとなくでするものじゃない」


 目のやり場に困るのですが。


 勿忘草の湯は、乳白色の湯だった。勿忘草には、青、ピンク、白、紫など、いろいろな色があるけど、白よりも青が好きだな。


「愛って有限だと思う?」

「急にどうしたの?」

「勿忘草の伝説にこういうのがあって」


 ある日、川のほとりをカップルが散策していた。女性が岸辺に咲く美しい花を見つけて、男性は女性のためにその花を摘もうと岸を降りたが、川の流れに飲まれてしまう。男性は最後の力を尽くして花を岸に投げ、女性に「Vergiss-mein-nicht!(私を忘れないで)」という言葉を残して死んでしまう。残された女性は、思い出に生涯この花を身につけ、その花は「忘れな草」と呼ばれるようになった。そんな伝説。


「この女性は生涯愛してたってことだ」

「すごいね」

「俺、自信ないなー」

「大丈夫!」

「わたしたちが!」

「死んでも愛してるから!」

「みんな……!」

「「「だから抱いて?」」」

「さっきまでの気分返して」

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