ハイキング

 秋にはいろいろある。「スポーツの秋」とか。ハルとアキはいつも「食欲の秋」を優先する。秋の果物はおいしいからね。俺は「読書の秋」だ。


 もきゅもきゅ。


「ハムスターみたい」

「コウも食べる?」

「本が汚れるからいらない」

「じゃあこれ食べちゃうね」


 もきゅもきゅ。

 かわいいなあ。


「んー目が疲れた。休憩」

「腕枕してー」

「逆では。いいけど」


 もきゅもきゅ。


「……ちょっと重くなった?」

「気のせいじゃない?」

「いや、いつもよりモチモチしてる」

「……気のせいだよお」


 そんな遠い目をされながら言われても。


「運動しようか」

「ジムには行ってるじゃん」

「それでも足りないってことでしょ」

「悲しいなあ……」

「痩せてる二人のほうが好きだよ」

「「痩せます」」


 ☆


 という訳で。


「なんで山」

「夏は海に行ったから」

「理由おかしくない?」

「いいじゃん! たまには」


 ハイキングに行くことになり、山に来ています。


「ハイキングじゃなくてもよかったじゃん」

「コウはさっきから文句多いよ」

「まあやる気になってくれたならいいけど」


 ウォーキングでもよかったけど。


「卑弥呼さまー!」

「なんで考えてることわかったの」

「心は一つだぜ☆」

「急にイケメン風な返しをしてくる女子高生」

「あなたの心を頂戴しに参りました」

「どこかの怪盗アニメかな?」


 今やってるか知らないけど。


 ☆


 山頂まで行って帰ってきた。俺だけ。なんかあと三周するとか。明日学校だよ?


「ただいま」

「おかえり」

「痩せたか確認するために」

「「抱いて?」」

「まだ運動する気ですか」


 無事痩せたとさ。

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