幸太誕生祭(佐藤家)

「二万円はどこ行った?」

「お前のプレゼント代だ!」

「え、このケーキとかは?」


 テーブルの上にはホールケーキがある。やたらフルーツが山盛り。


「これ? 別料金。このぐらいは金出せるぞ」

「どこから出したんだ」

「俺の財布」

「盗んでないよな?」

「……親には借金した」

「どんぐらい?」

「半年小遣いなし」

「そこまで!?」


 テーブルの上の料理全部でその金額って、相当いいとこのばっかり買い集めたな?


「そこまですんなよ」

「めっちゃ笑顔で言われても」

「感情が制御できないだけだ。気にすんな」


 べ、別にうれしくなんてないんだからね!


 ☆


「では、少し早いですが、七月十五日、加賀美幸太の誕生を祝って、」

「乾杯!」

「ちょ、かおちゃん、それ俺が言おうと思ったのに!」

「かんぱーい!」

「このジュースおいしい!」

「無視しないで!?」


 確かにこのジュース美味いな! これも高いんだろうな。


「おいしい~」


 彩華は七面鳥食べてる。七面鳥ってクリスマスに食べる奴じゃないの?


「主役、ケーキ入刀」

「まだ結婚してねえよ」


 まあほぼ確実に結婚できると思うけど。


「私たちも手を添えるよ!」

「本当の結婚式より先にやるとは」


 本当の結婚式はもっと大きいケーキでやりそう。


「ケーキおいひいよコウ」

「こら、食べながらしゃべるな」

「オカンみたい」


 うちの母さんは「賑やかね~」ですませる人だけどな。


 ☆


「そろそろプレゼントはよ」

「はいはい、わかったよ」


 大城と香緒里がプレゼントを取りに行った。何もらえるんだ。二万円だろ? いろいろ買えそうで買えない金額。


「はい、これ!」

「うん、絶交だ」

「なんで!?」


 なんでプレゼントで極薄を大量にもらわなきゃならんのだ。


「まあ、これはオマケだから」

「そっちは就職した後にもらいたかった」

「本命はこっちだ!」

「おおっ!」


 オシャレな革財布だった。ちょうどこの前壊れたんだった。


「これは二万円越えてないか?」

「少し越えたが想定内だ!」

「極薄は?」

「別で買った」

「財布は大事に使わせてもらう。ありがとう。でも極薄はいらん」

「わたしが保管しておくけど?」

「しなくていいです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る