キャッキャウフフ

 世の中はだんだんと冷えていく。息が白くなり、手が凍える。さらに冷えると、雲から白い雪が舞い降りてくるのだろう。

 いや、なんでこんな詩的なんだよ自分の心の声。


「やがて女子はマフラーをつけ始め、モッコモコの手袋をつけ、見るだけで心が洗われるような天国が出来上がるのだろう──」

「いや、お前の独り言かよ」


 大城の独り言だった。


「ん? 俺なんか言った?」

「自覚症状なしかよ……」


 それが一番怖いわ。


「そろそろ冬だぞ」

「そうだな」

「幸太は何も思わんのか?」

「何に対して」

「冬のモコモコしている女子に対して」

「かわいい婚約者とマフラー共有してキャッキャウフフしたい」

「「激しく同意」」

「ほんとお前らラブラブだよな……」


 ただの共依存だよ、とは言わないでおこう。


 ☆


 紅葉も終わり始めているこの時期に修学旅行って。京都は紅葉が大事だと思うんだが。


「班は六人構成なー」


 担任が言う。


「クラスが違っても大丈夫ですか?」


 大城の彼女の香緒里は隣のクラスだからな。


「ダメだ」

「解脱します」


 京都で坊さんになる気か。


「まああとはお前らで決めろ。解散!」


 なんて投げやりなんだ。


「どうしようか」

「四人しかいないしな」


 と、悩んでいると。


「私、入ってもいい?」

「委員長。いいぞ」


 これで五人。


「あ、俺もいい?」

「ん、木本キモトか。いいぞ」


 木本勝キモトマサル。去年から同じクラス。茶髪に染めた髪は、高校デビューのときかららしい。至って普通の人である。


「揃ったね!」

「部屋割りは?」

「自由行動どこ行く?」


 しばらく話し合った。修学旅行、楽しみ。

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