手持ち花火

『暇だから花火しようぜ』


 旅行からしばらくして、大城から連絡が来た。確かに暇だ。夏祭りは来週だし、そのあとにハルとアキの誕生日だし。


「やる。いつ?」

『明日』

「了解~」


「何するの?」

「明日花火だって」

「やったあ!」

「楽しみだねお兄ちゃん!」


 お気付きだろうか。しれっと彩華がいることに……

 夏休みの間はずっといる。でも部活あるよね? 気になって聞いたら、「ここから通うから!」って言われた。ここから中学遠いよな、とか思ってたら「お兄ちゃんの顔が毎日見られるだけで元気が出るから!」って。泣かせるやないけ……


「お兄ちゃんは線香花火得意だったよね?」

「まあまあだよ」

「コウ、競争しよう」

「おう、いいぞー」


 ☆


 さすがにマンションでする訳にはいかないので、近所の川原に……近くに川がないので大城の家の庭(らしきスペース)でやることに。


「楽しみでござる」

「なんか久しぶり」

「それは部活に来ないからでござるよ」


 生物部(ゲーム部)部長の忍者、久しぶりのご登場。部活関連以外で関わりがないから顔を見るのも久しぶり。


「さーて、やるか!」

「線香花火は最後に全員で勝負でござる」

「さすがに打ち上げタイプはやめとこう」

「ススキ花火からかな」


 ☆


 ネズミ花火を放つ忍者がめちゃめちゃ様になってたり、ススキ花火両手持ちの双剣士カオリが現れたり。


「線香花火で最後だ」

「負けないでござるよ!」


 全員一斉に火を着けてスタート!


「……」

「……」

「……あっ」


 最下位、香緒里。


「落ちちゃった」

「じっとしてられないー」


 双子と彩華も落ちた。


「男の闘い……! ……あ」


 大城が落ち、忍者も落ちた。


「優勝、加賀美幸太~」

「優勝者には夏野菜をプレゼント~」

「何気に助かる」

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