双子の幼馴染と同棲してるだけ。

嬾隗

幼馴染三人は同棲している

 ──ピピピッピピピッ


「んー……」


 カーテンの隙間から漏れた光と目覚まし時計の音で目を覚ます。

 ……学校行かなきゃ。

 起き上がろうとするが体は重く、動かない。


「……なんだ、またか」


 俺の体の両側に双子の幼馴染が抱きついていた。セミダブルサイズのベッドが狭い。同棲が決まった時から大きめにしたが、大きさが足りなかったようだ。


「ほら朝だ、起きろ」


 早く起きてくれ。目覚まし時計がうるさい。腕を拘束されてて何もできない。


「……んー、コウ?」

「……コウ、おはよう」


 二人は幼馴染の双子。左腕を抱いてるのが姉の矢車春香ヤグルマハルカ。右腕を抱いてるのが妹の矢車秋穂ヤグルマアキホ。双子なだけあって、ほぼ同じ顔だ。見分け方は、泣き黒子の位置。春香は左目、秋穂は右目にある。


「おはよう。結局俺のベッドで寝るのか。自分たちの部屋あるのに」

「「だって、コウと一緒にいたいんだもん」」

「……はいはい」


 申し遅れたが、俺は加賀美幸太カガミコウタ。三人で同棲することを提案した本人。なんで提案したか? だって毎日ストーカーされてたらもう一緒に住んだほうがいいじゃん。あきらめた。


「とりあえずどいて、目覚まし時計止めるから」

「コウの匂い堪能してから!」

「はいはい、一分だけね」


 二人にクンクンされる。もう慣れた。


「はい一分。一回どいて」

「「はーい」」


 目覚まし時計を止めると、また抱きつかれた。いつものことだ。


「弁当作るからどいて」

「「やだ」」

「弁当抜きにされたいか?」

「「どきます」」

「よろしい」


 家事は全部俺の担当。この双子、包丁握れないし、洗濯機壊すし、高一から同棲してるけど怖くて任せられない。

 拘束を解かれたので、顔を洗ってご飯を作り始める。


「今日は始業式だな。もう同棲から一年経ったのか」

「「一生同じ家に住みたい」」

「はいはい考えとく」


 両家の親はゆるいので、たぶん許される。というか必ず。これは自信ある。


 ご飯と弁当を作り終えた。着替えてから戻ると、二人は身支度を整え、テーブルで待っていた。


「「「いただきます」」」

「「はい、あーん」」

「あーん」


 毎回のことである。慣れた。


 食べ終えて、学校に行こうとすると、また両側から抱きつかれた。


「またこのまま行くのか。新入生ににらまれそうでやだ」

「「絶対離さない」」

「絶対秋穂と結婚してね? あたしは事実婚でいいから」

「春香もわたしもコウもずっと一緒だよ?」

「はいはい」

「「というか抱いて」」

「それは無理」


 高校二年生になってもこれ。俺、高校卒業してからしたいんだけどなあ。

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