文化祭準備

 夏休みが明けてすぐに、文化祭がある。内容はだいたい一学期のうちに決めていたので、全力で準備するだけだ。


「椅子どけてー」

「はいよ」

「絵の具持ってきてー」

「ほい」

「「抱いて?」」

「学校でそんなこと言わないで!?」

「「チェー」」

「拗ねないで手動かして」

「「はーい」」


 なんて、いつものやり取りをしながら。


「看板の絵は順調?」

「うん、いい感じ」

「一週間しか準備できないって短いよね」

「でもうちのクラスは大丈夫でしょー」


 うちのクラスはタピオカドリンクを売る。双子に専門店に連れて行かれたことがあり、味は知ってる。まあ、嫌いじゃないかな。食感がいいよね。


「俺、食ったことない」

「男はあんまり好きじゃないかもね」

「でも一回食いたいな」

「わかった。待ってろ。試作品作る」


 大城は作れない。俺は家で双子に頼まれて作ったから作り方はわかる。ということで厨房で総料理長を任された。さすがにそんな重要な役職にさせられても。


 ☆


「よーし、できたぞー」

「おー、どんな味だろー」


 いや、タピオカ自体は食感がメインだと思うが。


「んー、あんまおいしくないなー」

「まあそりゃそうだろ」

「こんなのなんで流行ってんの?」

「それはよくわからんけど」


 だいたい予想つくけど。クラスの他の女子が騒ぎ出したし。


「わーい映えー」

「バズるかなー」


「SNSか……なるほど」

「そういうこと」


 承認欲求を満たす方法って主にSNSだからね。最近の若いもんは……


「なんか年とってない?」

「おじいちゃんご飯まだ?」

「逆では?」

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