温泉旅行─三日目:薔薇の湯

 温泉旅行、最終日。朝食を食べて、温泉に向かった。まだ入っていない温泉がある。それは。


「『薔薇ばらの湯』! これでコンプリートだ!」

「今回も楽しみ!」


 この旅館の温泉は質が良い。四人とも来る前より体の調子が良い。肌、ツヤッツヤ。普段から双子にくっつかれて凝ってる肩も軽い。


「今日で終わりだね……」

「さすがに、ね……」

「最後くらいは、ね……」

「おい俺の股間を見るな」


 しません。何があろうと。


 ☆


 最初に見たときと同じように、お湯に薔薇が浮いてる。赤い薔薇だ。


「ヘイ、お花大好きマン」

「そのあだ名、まだあったの?」

「薔薇の花言葉教えて?」

「どこかのAIに話しかけてるようにしか聞こえない」


 薔薇は花言葉がたくさんあるぞ!


「薔薇全般は『愛』『美』。この赤い薔薇は『あなたを愛してます』『愛情』『美』『情熱』『熱烈な恋』。他の色にもいろいろあるよ」

「さすが」

「ちなみに赤いつぼみには『純粋と愛らしさ』『純粋な愛に染まる』、トゲには『不幸中の幸い』ってのがある」

「トゲにもあるんだ」


 つい語ってしまった。楽しい。将来は四人で花屋の経営も良さそう。


「よし、花言葉通りの事しよう」

「嫌な予感しかしない」

「わたしたちは」

加賀美幸太カガミコウタに」

「熱烈な恋をしています」

「あなたを愛してます」

「だから!」

「「「抱いてください!」」」

「ダメ」

「「「抱けよ!」」」

「ルパンダイブ!?」


 三人一斉に飛びかかって来た! マズイぞ!


「ぐえっ」


 全身にダメージ! 幸太は倒れた! 目の前が真っ暗になった……


「はあはあ、お兄ちゃん……」

「コウの息子……」

「コウの腹筋……」


 意識が遠くなりかける中で、俺に群がる美少女たち。なんかもう、あきらめよう……


 数時間後。俺は部屋の布団で目が覚めた。三人がいつもよりツヤツヤしてたのは見なかったことにしよう。うん。

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