吸血鬼 ※ただし血液アレルギー
第一幕では、利駆、茜、織羽の織り成す、非日常的な恋愛譚が描かれる。
幼い頃に両親と死別した少女・権田利駆。幼馴染の少年で、現在人気上昇中のアイドル・蝶野茜の実家に居候中の彼女は、彼の両親やファンからは邪険にされ、当の茜からはパシリ扱い。肉親の情に飢えていた。
そんな中、ふとしたことから、不良少年と噂の狭山織羽と顔見知りになる。徐々に距離を縮めてゆく中で、織羽は利駆に、自身が吸血鬼であること、それも、血液アレルギーのため血を飲めない体質であることを知られてしまう。秘密を共有したことで更に近しくなる二人だが、ある時織羽は、栄養失調で倒れてしまう。試しに自分の血を吸ってみろという利駆に従い彼女の血を吸うと、アレルギー症状が出ないことがわかる。何故彼女の血なら飲めるのか。織羽の保護者代わりの吸血鬼研究者・狭山偶見は、利駆の血液を調べ始める。
第二幕では、織羽を連れ戻しに吸血鬼界からやってきた戀羽と爽羽が登場する。まず戀羽が織羽を迎えに行くも、利駆を理由に断られる。利駆に興味を持った戀羽がしつこく利駆に構うと、怒った織羽がある日戀羽をコテンパンにし、負けた戀羽は夜の街を彷徨う。そこへ偶然看護学生・内藤理由が通りかかる。戀羽は彼女の血を吸うも、O型好みのはずなのに、A型の彼女の血を美味しいと感じてしまう。何故だろうと不思議に思っている間に、理由には逃げられる。
理由に興味の湧いた戀羽は翌朝、登校途中の理由を校門で横から攫う。「何故助けた」の問いに対し、理由が「助けるのは当たり前」と答えると、偽善者は嫌いだ、と戀羽は怒って、以降理由を試す行動を繰り返すようになり、彼女の祖母の形見の首飾りも千切って奪ってしまう。
そんな中、父子家庭の理由の父親に再婚話が持ち上がる。突然のことに気持ちを割り切れない理由は家を飛び出す。理由の行方を探すために首飾りの記憶を読み取った戀羽は、理由の「助けるのは当たり前」の発想が強迫観念から来ていたことを知る。公園で理由を見つけた戀羽は彼女を一頻り泣かせた後、「落ち着くまで、一緒に住もう」と持ち掛ける。当然父親は許さないが、戀羽は持ち前のしつこさで毎日説得に行き、理由もそんな戀羽の様子に惹かれていく。最終的に、織羽が血液アレルギーを克服した訳も悟り、織羽を連れ戻す任から降り、自身も理由と一緒にいるために人間界に留まることを決める。
第三幕では、役目を降りた戀羽に代わり、それまで静観していた爽羽が行動開始。利駆に茜と懇意になって織羽から離れてもらおうと、茜に近づいて利駆を奪い返すようけしかける。茜は耳を貸さないが、爽羽も自分の立場がかかっているのでなかなか諦めず、度々茜の前に姿を現す。そこを、茜ほど知名度はない駆け出しアイドルの梨咲に目撃される。
梨咲は茜に近づきたいため、爽羽に対し、協力するから茜と自分の仲を取り持ってほしいと持ち掛ける。爽羽は茜には利駆とくっついてほしいから断る。梨咲は爽羽が茜と自分以外の仲を取り持とうとしていると知り、邪魔を始める。ひょんなことから爽羽が吸血鬼と知った梨咲は、言いふらされたくなければ自分と茜の仲を取り持てと迫る。
そうして、茜がいるところには爽羽が、爽羽がいるところには梨咲が現れるという図が出来上がる。茜は、最近セットで自分の周辺をうろうろするその二人が鬱陶しく、ある時、遂に堪忍袋の緒が切れて、二人に対して怒鳴ってしまう。
アカネに怒られたのは爽羽のせいだ! と梨咲は一人夜闇に消える。そこで熱心な追っかけにストーカーされ、人目がなくなったところで襲われかけるも、追いかけてきた爽羽に助けられる。その時、梨咲は今までのアカネへの気持ちは勘違いだったとして、今度は爽羽に自分の気持ちを受け止めてもらうべく、茜のことは関係なしに爽羽を追い掛け回すようになる。爽羽の逃げ回る日々が始まるも、織羽と戀羽を連れ戻すため、彼は奮闘するのだった。
一方、偶見の研究は一段落つく。【吸われても良いという精神状況にある時のみ分泌される血液中の物質】があることを見つけ、それを含む血液型をF型――Blood Type:Fと名付ける。