自らが義妹の身代わりと知り、絶望の心のまま祠を壊してしまった少女、小夜。
眠りから覚めた美貌の土地神様は、小夜をほんの暇つぶしにと気まぐれから匿う。
けれどもひた向きな小夜と生活を共にするうち、目の離せない存在となっていき――
人への愛など知らなかった、知りたくないとすら思っていた神様が、少女によって名付けられ、呼ばれ、かけがえのない存在へ変化してしまったことに気付かされる。
認めようとしない神様の傲慢と、執着があらわになっていくのがたまらないですね!
小夜さんも、神様・暁への想いを自覚するようになりながらも、その身分差から口にすること叶わず。
ゆえに拗れていく二人の関係。
ここに神様友達の蜜さん、人間イイ男の惣一郎さんなど魅力的なキャラたちが入ることでその想いを浮き彫りにしていきます。
ジレジレはらはらしながらも、愛し愛されることで自分を持った小夜さんの行動によってハッピーエンドへ導かれる。
最後はきっちり虐げへのお灸をすえながら、固執もないのが本当に幸せを手にした証なのだと思います。
生贄となるか、花嫁となるか――少女と神様の選択とそれからをぜひ見届けてください。
番外編では、神らしく淡白だったヒーローの、溺愛ぶりが堪能でき糖度十分です♡
ヒロインは、神の末裔と言われる領主に嫁ぐ為に拾われ育てられ.拾われてから16年、嫁ぐ直前家出をし、それまで不幸にあっても神に助けられない境遇と神の末裔と言われる領主への嫌悪感から、神への当て付けから通り掛りの祠を破壊した所、祠の後ろから現れた土地神から神罰が降ると言われも、死を厭わない旨を伝えた所、神が気紛れによる揶揄いから、祠破壊は咎めず、ヒロインは家出した以上帰る場所も食べる事もままならない現状から、神に下働きを願い出て神と同居する嵌めとなった。以後互いに恋愛感情が芽生え結ばれるも、そこに至る過程が面白く感じました。
兎に角、ヒロインが孤児で、拾われてから領主に嫁ぐまで育てられたが、生かされた境遇の為、文字書きや一般教養は習わず、神の元で純粋な振る舞いに好感が持てました。神による、ざまぁ、もありますし、読み応えはある作品と思います。
辛い境遇にいた小夜が祠を壊したら気まぐれな神様に溺愛されて――というお話です。
人ならざる存在に愛される和風シンデレラストーリーの王道と、今流行りの「因習村の祠を壊す話」とを掛け合わせた部分が新鮮です。
美丈夫なのにどこか飄々としていてつかみどころのない暁と健気で無垢な小夜。脇を固める蜜や弓彦、惣一郎といったキャラもよく、感情移入できました。
暁に拾われ人間らしい生活をするようになる小夜と、小夜に出会い人間らしい心を持ち始める神様の暁。
二人が出会うことで互いに失ったものや足りなかったものを補い合う関係なのがいいですね。
特にライバル出現に嫉妬する暁や夏祭りの場面はロマンチックでニヤニヤが止まりません。
互いに相手への気持ちを自覚するシーンは切なく、心の機敏の描写が丁寧で素敵な作品だなと思いました。
じっくりと丁寧な恋愛描写を楽しみたい方、二人のじれじれ感を楽しみたい方におすすめの作品です!
「罰当たりだな。これは君、死んだね」
「別に良いよ。ちょうど、死にたかったところだから」
自身の運命を掻き回した元凶の祠を壊した小夜。
だが土地神――暁は気まぐれで、小夜を振り回す。感情が読めない暁の奇行に怯える小夜。だが帰る場所がない小夜は、暁のところに住まわせてもらうことになる。
実は暁は、うかつにも小夜に神力を与えてしまった。神は神力を与えてしまえば、責任を取らなければならない。
そのことは明かさず、暁は小夜にこう告げる。
「小夜、君はどちらになりたい? 神(わたし)の生贄か──それとも、花嫁か」
暁の気まぐれ翻弄されながらも惹かれる小夜と、心の中で言い訳をしながら小夜に触れる暁。
だが小夜は、暁がなぜ求婚を迫ったかを知ってしまい…。
「自分が愛されるなんて思い上がってはいけない」と、自身の恋心を抑え込む小夜。小夜に様々なものを与えながらも、「人に本気で恋することなどあるか」と言い訳を続ける暁。
神は気まぐれで、冷徹で、助けを求めても優しさなどは持たず、けれどどこかあたたかく憎めない。
力の差がある神と人の恋の行方は、どうなるのか。
二人の丁寧な日常の積み重ね、すれ違う二人の想いがジリジリと来る物語です。
あと私の推しは蜜さまです。
澄み渡った水の中で生きられない魚がいるように、この世界の物語は、下界で生きる私にとって眩しいものでした。
救いがあるとすれば、神という存在であっても、人間と同じ喜怒哀楽の"感情"があるなら――
ときに惑わされ、ときに不合理な選択をすることもあるのだと、一抹の安心感を得られたことでしょうか。
最初の選択が正解でも、時の移ろいによって同じ選択が必ずしも正解とはなり得ないこと。なぜそうなり得ないかの心理描写がとても丁寧に表現されていて、もどかしさを含めて最後まで楽しく読めました。
などと、サラッと『最後まで楽しく読めました』と書きましたが――
他の方のレビューでも触れられている通りで、私もこのように思えたのは久しぶりです。ましてや10万字超えのWeb小説を、日を跨いで読み浸る熱量が残っていたことに自分自身驚きました。
"気まぐれ"でたどり着いた作品ではございますが、土地神さまと小夜姫さま。
私の心を浄化していただきありがとうございました。