閑話17.6 王様ゲームは続くよどこまでも

 王様になった真由の命令を皮切りに、大輝たちを囲む場は急速に盛り上がっていった。


確率でいえば、女子同士で命令を遂行することが多いはずなのだが、そこに大輝というワイルドカードが入ったことで、むしろ大輝がおもちゃになっていた。


 曰く、「大輝が3番(明日香)のおっぱいの上に置いたポテチを食べる」「大輝が2番(真由)の胸で泣かせてもらう」「大輝が1番(翠緑)をくすぐる」など、大輝一人だけ美味しい思いをしていると言っても過言ではない。


 もちろん、女子同士でもいろいろとあったのは、これはもう真由の狙い通りだったのだろう。「2番(翠緑)が4番(葵)と間接キスをする」「3番(真由)が4番(翠緑)の頬を撫でる」「1番(明日香)が王様(真由)に愛の告白をする」など、堂々と繰り広げられる百合百合しい行為に、大輝はいけないものを見ている気がしてドキドキしっぱなしだった。明日香は王様を引けず、クジを引く度に大輝の背中をガリガリとひっかく。


「そろそろレベルを上げていくよー。4番が2番のおっぱいを揉む。2番のおかえしも可」

 調子に乗った真由の命令に、大輝は吹き出す。同時に葵が異議を唱える。


「おいちょっと待て。いくらなんでも大輝がいる前でそれはないだろう」

「別にいいじゃないおっぱいくらい揉まれたってサ。揉む胸がない人もいるみたいだけど」


「そうですよ。僕が当たったらどうするんですか」

「その発想はあまり考えてなかったなぁ。まぁ、男の子の胸だって揉んでみたら面白いかもしれないしね? ところで、2番と4番は誰?」


「あ……」

 再度文句を言う寸前に、大輝は自分が2番だったことを思い出した。


「4番は私だぞ……」

 抗議した二人が当事者だったのは、後になってから気づいたことだった。


「えっと、つまり、葵が後輩くんのおっぱいを揉むってことかい? あはは、これは大爆笑だ。逆だったらもっと面白かったかもしれないけど、これはこれで楽しめそうだね」


「本気でするんですか? 僕、男ですよ?」

「王様の命令は絶対だよ。浴衣を脱ぐっていうなら許してあげるけど」


「なんで浴衣なんですか。パンツだってありますよ?」

「ふーん、後輩くんはパンツを脱ぎたいのか。変態だね」


「パンツ一丁より浴衣一枚の方がなんぼかマシじゃないですか」

「まぁ、脱いだパンツをボクにくれるならそれでもいいけどね」


「なんで真由先輩にパンツをあげなきゃいけないんですか」

「えーっ、だって後輩くんっていつも女の子のパンツにぎにぎしてるじゃない。ボクも異性のパンツを被って後輩くんの気持ちを実感したいんだけど」


「パンツなんてそうそう被ってませんっ!」

「じゃあ、かぶらないならいいんだ。あとでクンカクンカさせてもらうから、はやくパンツちょうだいよ」


 いつの間にかパンツをあげる流れになってしまっており、大輝は絶句する。と、もう一人の当事者である葵が二人の間に割って入ってきた。


「なに馬鹿な漫才を続けているんだ。別に胸を揉まれるくらいなんでもなかろう。ほら、はやくおっぱいを出さんか」

 平然と言う葵だが、やはり恥ずかしいのか、頬が若干朱に染まっている。


「いやっ、その……さすがにこの展開で脱ぐのは恥ずかしいんですけど」

「ふーん、いつも女子たちのおっぱいを見たり揉んだりしているのに自分がされるのは恥ずかしいのか」


「それ風評被害ですから。いつもしてるみたいに言わないでくださいっ」

「あんまり動くんじゃないぞ。ただでさえ身長差があるんだからな」


 そう言って葵は大輝に馬乗りになる。手を伸ばし、色っぽい表情で鎖骨を指先で撫でながらゆっくりと指を浴衣の中へと潜り込ませる。


「んっ……そこっ……やっ、やめっ……」

「ぺったんこのくせに、先っぽはもうコリコリじゃないか。期待してたんじゃないのか?」

 迫真の演技に、どよっと、真由たちギャラリーが沸く。


「ちょっ、葵会長、やりすぎですってば……」

 葵のすべすべとした指先が敏感な場所に当たって思わず大輝は変な声をあげてしまう。乳首を責められるのは初めてではなかったが、みんなが見ている前だと余計に興奮してしまう気がする。


「いつもみたいに可愛く鳴いていいんだぞ。おや、私のお腹にも硬いものが当たってるんだが。立たせていいのは乳首だけだぞ。何を興奮しているんだ?」


 被虐的な葵の笑みに、大輝はぞくっとした。普段なら恥ずかしくて赤面するほかないが、この状況ならむしろご褒美のようにみえる。


 さらに、馬乗りになった葵の浴衣がはだけてうっすらと膨らみが見えてしまっている。ないないと言われていても、そこはやはり女の子で、可愛い膨らみは健在だった。もう少しで見えそうな先っぽに大輝の視線はつい吸い寄せられる。


「どこを見ているんだ? いやらしい奴だ。喘ぎ声をあげたいなら我慢しなくていいんだぞ」


 くいっとアゴを持ち上げられ、視線を葵の正面に戻される。目と目が合い、瞳に上気した顔が映る。口からは熱い吐息が漏れ、同じく半開きになっている葵の唇にむしゃぶりつきたくなる。先ほどのキスの感触を思い出し、このまま唇を重ねても許されるのではないかと錯覚する。


「後輩くん、そんなにおっぱいが好きなら葵のを揉んでもいいんだよ。ほら、反撃も可って言ったじゃないか。むしろ乳繰り合っていいんだけど」


 もう我慢の限界で葵の唇にむしゃぶりつきそうになった時に、真由の茶々が入る。葵も我に返り、胸を揉まれる可能性に恐怖を感じて胸元を整えた。


「おい、本当に反撃するつもりじゃなかろうな?」

「その……ですね……」


 揉みたいか揉みたくないかで問われれば、揉みたいに決まっている。男だもの。と、大輝は主張したくなるが、さすがに小さい胸にコンプレックスを持っている葵の胸に手を出すのは憚られる。幸いにも、この命令は強制ではない。


「おっぱいくらい揉ませてあげてもいいじゃないか。減るもんでもなし」

「減るんだよ。私のプライドがだ」


「えっー? さっきまで散々、後輩くんのおっぱいをこねくりまわしてたくせに」

「それは命令だからしかたがなかろう」


「ふーん、その割にはノリノリだったように見えたけど?」

「もっと大輝先輩をあんあん言わせちゃってくださいっ」

 関係ない茶々が突然入る。


「で、後輩くんはどうしたいんだい? 葵のおっぱいを揉みたいのか、揉みたくないのか」


 真由と葵に睨まれ、大輝は二人の顔を見合わせながら返事にまごつく。ついでに明日香の目は既に冷凍イカのように冷たく濁っている。


「揉めるわけないじゃないですか。こんな状況で」

「そうか、大輝は私のおっぱいを揉みたくないのか」


「って、その発言は酷くないですか? どうすればいいんですかっ」

「嫌よ嫌よも好きのうちってやつね。大輝くん、押し倒すなら今よ。さっきまで散々、いいように弄ばれたんだもの、イクまで葵ちゃんのちっぱいをこねくり回してあげる番よ」

 ずーんと沈む葵に、さらには未来まで参戦し、場は混迷をきわめてきた。


「葵先輩のを揉みたくないなら、翠緑のおっぱいどうですか? 大輝先輩の乳首もこねくりまわしたいです」

「もういっそ、みんな好き放題乳繰り合うのはどうだろうか?」


「もうめちゃくちゃにもほどがありますよ。この辺でやめときませんか?」


 気がつけば翠緑も明日香も体を乗り出して大輝と顔を突き合わせている。間一髪、くんずほぐれつと言ったところで、大輝からギブアップ宣言が出る。


「しょうがないなぁ。んじゃ、葵と後輩くんはパンツ脱いでボクにちょうだいね」

「ちょっと待て、どうしてそうなるんだ?」


「えーっ、だって場を盛り下げたら罰って言ったじゃないか。ほら、どうせ浴衣は着てるんだからいいじゃないか。それとも、後輩くんにおっぱい揉ませる?」


 究極の選択なのだろう。葵は大輝をきつく睨み、観念したかのように浴衣の裾から手を入れて、もぞもぞとパンツを脱ぎ始めた。


 浴衣から覗く艶めかしい太ももと、パンツを脱ぐという仕草に、大輝は目が釘付けになる。すっと脱いだパンツを葵はぎゅっと握りしめ、憎々しく真由へと突き出す。


「ほら、後輩くんも見てないで脱ぐ」

「ええっ、僕もですか?」


「当然じゃないか。女の子のパンツをはぎ取っておいて、自分だけ免れようなんて男の子らしくないヨ」


 そう言われてしまえばどうしようもなく、大輝も渋々浴衣の中に手を潜り込ませ、パンツに手をかける。


「どうせなら浴衣をもっとはだけさせて、パンツを脱ぐところを見せてくれてもいいんじゃないだろうか」


「なんでそうなるんですか。痴女なんですか」

「うーん、でもさ。そのままで脱げるの? もしかしておっきくなっちゃってない?」


 真由に指摘されるまでもなく、股間にはとっくにテントを張っている。葵に乳首をこねくりまわされただけでも我慢ならなかったのに、パンツを生脱ぎするという場面を目撃して平静でいられるわけがない。


「ほら、さっそくパンツが引っかかってないかい?」

「そんなことないですから!」


 大輝は一気にトランクスをずりおろす。足から抜いたそれを握り、葵と同様に真由へと差し出した。


「これでいいですよね」

「うんうん。よいかなよいかな。ほら、こっちは後輩くんにあげよう」


 真由はにっこりと手に握ったもう一つのパンツを大輝に手渡した。思わず受け取ってしまったが、葵のパンツである。可愛いイチゴ柄のパンツと、今さっきまで穿いていたため彼女のぬくもりが伝わってくる。初めて触る彼女のパンツの感触に、大輝の股間はさらに昂ぶってしまう。


「ちょっ、なにやってるんだ真由。さすがに大輝に渡すことはなかろう!」


 わわわと、耳まで真っ赤になった葵が慌てて大輝に渡された下着を奪い返そうとつかみかかる。その勢いに押し倒され、大輝は葵もろとも巻き込むように布団へと倒れ込んだ。


「うわっと……もう何がなんだか」


 ひっくり返る視点をよそに、大輝は手のひらに柔らかい感触のものが当たっていることに気づく。気づけばそれは葵のささやかなおっぱいだった。小さくても確かにある女の子の感触に、大輝は感動してつい呆然と手をにぎにぎしてしまう。


「あっ、あんっ……、おいこら大輝、何をしてるんだ!」


 思わず嬌声を漏らすとともに、葵はすぐに大輝を叱責する。だが、手のひらに吸い付くこの感触には抗い難く、大輝は謝りながらも手をすぐには離せなかった。


「それにっ、すごく硬いモノが私に当たってるんだが……」


 葵が馬乗りになっていたため、ちょうど女の子の敏感な部分に大輝のそれが当たっている。まるで騎乗位をしているかの状態に葵は羞恥心を覚え、大輝を突き放して部屋の隅へと逃げ出した。そのまま、膝を抱えるようにして座り、大輝を恨めしそうに見る。


「すっ、すみません……」

「いいから早くパンツを返せ」


 葵のパンツは一連の行動で大輝のすぐ横に転がっている。むしろみんなの目に晒されてしまった形になった。


「しょうがないなぁ。んじゃ、葵のパンツはボクが預かっておくということで。代わりに後輩くんのパンツをあげるよ」


「いらんし!」

「まぁまぁ、そう遠慮しなくてもいいじゃないか。後輩くんのパンツなら穿いてもかぶってもOKだから」


 ぐずる子を宥めるように真由が言う。葵は真由の説得にとりあえずパンツを受け取ることだけは了承したようで、トランクスを握って背中へと手を回した。


「うーん、葵はちょっと休憩ってことで。じゃあ次のゲームを始めるよ」

 これで打ち切り、などと甘いことはなく、王様ゲームは続く。

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