閑話17.8 合宿の夜は保健体育の補習もあったり


 大輝は頬を撫でる優しい手の感触で目を覚ました。

 心配そうに覗き込む顔が見える。明日香だ。あまりにも近くに見える彼女の顔と、下から見上げる二つの富士山は絶景だった。重量感のある膨らみが呼吸とともにぽよぽよと揺れて、今にも大輝の顔に落ちてきそうだ。


「目が覚めた?」

「えっと、僕はいったいどうしたんだっけ?」


 記憶が混濁していて、これまで何をしていたのか、どうして明日香に膝枕で介抱されているのかすぐには思い出せなかった。


「忘れて。思い出さないでっ」

 明日香は疑問符を浮かべる大輝を、恥ずかしそうに制止する。そのおかげで、大輝は明日香の胸で窒息しそうだったことが記憶によみがえってきてしまった。


 目の前で揺れるこの凶悪な膨らみに顔からダイビングしていたことを思い出し、その感触を反芻するとともに、また飛び込みたいと思ってしまうのは男なら仕方がないことだろう。


「あれ、みんなは?」

 部屋の中にいるのは大輝と明日香の二人だけだった。あれだけ賑やかだった部屋が閑散としていて不思議な感じだ。


「温泉に入ってるよ」

「明日香はどうしたの?」


「大輝を放っておけないでしょ」

 そう言って微笑む明日香に大輝は天使を見た思いだった。


「もう大丈夫だし。温泉に行ってきたら?」

「うーん。けっこう時間経っちゃってるし、今度でいいよ。大輝が一緒に入りたいっていうなら考えるけど」

 そう言って明日香は悪戯っぽく微笑んだ。


「一緒って……」

 残念ながら混浴風呂はない。女湯が女子たちで埋まっている以上、必然的にこっそり明日香が男湯に入るということで。彼女の裸と男湯に入っているという背徳感を想像して大輝は興奮してしまう。


「もう、エッチなんだから。すぐおっきくしちゃって。浴衣だから丸わかりだよ?」

「ごっ、ごめん……」


 謝ったところで暴れん坊は萎縮するわけもなく、大輝は羞恥で赤くなる。


「そんなにわたしのおっぱい気になるの? すごく見られてる感じするんだけど」

 重量感たっぷりの双つの山が目の前にあれば、男なら誰だって凝視してしまうだろう。バレているのならと観念して、大輝は頷く。


「ちょっとくらいなら触ってもいいけど……。でも気持ちよくなっちゃったら、ちゃんと責任取ってくれる?」


「うん、うん、なんでもする……」

 ゴクリと唾を飲み込んだ。


「ちょっとだけだよ……」

 明日香は恥ずかしそうに視線を逸らす。それを合図として大輝は手を伸ばす。


「せんぱーいっ、目が覚めましたか? いいお湯でしたよー」

 と、おっぱいに触れる寸前のところで、場違いなほど元気な声で温泉から上がってきた翠緑が乱入してきた。


 大輝は慌てて飛び起き、正座して翠緑に返事をする。


「えっ、ああ、うん、おかげさまで。翠緑ちゃんも気持ちよさそうだね」

 温泉で暖まって桃色に染まった頬と湿った髪、そして肌から沸き立つ湯気と着崩れた浴衣に大輝は見惚れてしまう。そのうち翠緑に続いて葵たちも部屋に戻ってくる。みんな温泉から上がったあとだけあってやたらと色っぽくみえる。


「先輩も一緒に入ればよかったのに。どうせ翠緑たちの借り切り状態なんですから」

「さすがにそれはマズいだろう。うん、絶対にダメだ」


「葵ちゃんが反対するのは、おっぱいを比べられたら困るからよね」

「葵の感度のいいおっぱいも可愛いけどなぁ」


「ちょっと待て。なんで私の胸の感度を知ってるんだ」

「小学校の時に乳繰り合った仲じゃないか」


「あの時は真由が無理矢理・・・・・・。おほん、ところで大輝はもう大丈夫なのか?」

「いやぁ、おかげさまで」


「明日香ちゃんも温泉入って来なよ。気持ちいいよ。どうせ誰もいないし、後輩くんと一緒に入っちゃえば」

「えーっ、それなら翠緑ももう一回入りたいです」


「ダメだ。さっきものぼせる寸前だっただろう」

「さっき入ったばかりですし、今日はもういいです」


 そういえば、食後に入ったばかりだったと大輝は思い出す。そしてなぜ葵たちがまた温泉に入りに行ったのか、その理由がぼんやりとしていてわからない。何度入ってもいいものとはいえ、さすがに間隔が短すぎる。何か汗をかくようなことがあっただろうか。


「んじゃ、夜は長いしもう一回くらいゲームしよっか」

 何か思い出せそうになった瞬間、真由の提案でまた遊ぶことになる。

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