閑話6.2 この美術部には問題しかなかった(後編)

 美術部に訪問した大輝と葵の話が前回から続く。

 美術部部長、裸オーバーオールの少女と葵が堅く握手を交わし、大輝が嫌な予感を覚えたところに話は戻る。


 にんまりと下卑た笑みを浮かべた部長は、そのまま大輝のすぐそばまで近寄ってきた。


「にししし、ちょっとごめんよ。ほら、会長さんの許可は取ってあるからさ」

 そう言って彼女は大輝の体に手を触れてきた。

 最初は肩に手を置き、骨格を確かめるように撫で回すと、すぐに胸板へと降ろしていく。


「へぇ、やっぱり男の子は筋肉の付き方が違うね。見た目は華奢なのに、がっちりしてて逞しい。なんかちょっと恥ずかしくなっちゃうな」

 性差を意識して部長は頬を赤らめる。ボーイッシュな彼女の頬が染まり、恥ずかしそうに目を背ける様は小学生が初めて男というものを知ったかのような背徳感があった。


「ちょっ、いったい何してるんですか」

 ただ服の上から体を撫で回されているだけだというのに、大輝も恥ずかしくなって叫ぶ。


「いや、ほら、会長から君の絵を描いてほしいって言われてさ。ボクも男の子を描くのは初めてだから、こうやって筋肉の付き方とか、感触とかを確かめてるんだよ。ねぇ、せっかくだし、シャツを脱がない?」

「脱ぎませんっ! ってか、まさかと思いますけど、僕の絵もヌードなんですか?」


「当然じゃないか。服を着た子なんて描いたって面白くもなんともないよ」

「人権侵害では?」


「表現の自由は憲法によって守られてるよ?」

「そういう問題じゃないと思うんですけど」


「いろんな女の子の裸婦画を見たんだし、ちょっとくらい協力してくれてもいいじゃないか。あっ、乳首発見。ここ……だよね? 男の子も気持ちいいのかなぁ……?」


 そう言って部長はくりくりと大輝の胸の突起を指先でのの字を描くようにこねくり始めた。

 むずむずとした鈍い快感が大輝を襲う。

 思わず声を漏らしてしまいそうになるが、大輝はぐっと唇を噛んで堪えようとする。


「のっ、ノーコメントですっ」

「ふーん、まぁ、体に聞けば正直だしね? あっ、ちょっと硬くなってきたよ。うわっ、女の子と同じなんだね」


 興味津々に、目を輝かせながら大輝の乳首をこねくり回す部長は、自分が裸オーバーオールだということを忘れているようだった。さっきはあれほど恥ずかしがっていたというのに、今では知的好奇心の方が勝っていて、オーバーオールの胸元から微かな膨らみが大輝の視線に入ってくる。


 見てはいけないと思いつつも、ついつい目線は下へ向いてしまう。部長のあどけない顔が赤く染まっている中で、さらにその下には女の子特有の丸みが見える。

 大輝は快感から逃れようと体を捩るのだが、部長が執拗に追い回すものだから、体を動かすたびにサクランボ色の頂がちらりとデニム生地からこんにちはする。

 ボーイッシュに見えても確かな女の子の証に、大輝は股間に血が集まってくるのを覚える。


(まずいっ)

 部長が密着してくるものだから、もしこれ以上興奮してしまえば、彼女の下腹部に硬いものが当たってしまう。そうなれば、好奇心旺盛な彼女をさらに煽ることになってしまうだろう。


 それに、目の前には葵もいるのだ。他の生徒相手に鼻の下を伸ばしているところを見せてしまえば、軽蔑されるか罵倒されるか、どちらにせよ彼女の評価を下げることになってしまう。


「ちょっ……やめてくださいよっ……」

「だーめっ。そんな気持ちよさそうな声で嫌がってもやめてあげない。痛いなら話は別だけど。大丈夫だよね?」


 それでも執拗な密着と乳首への刺激、そしてちらちらと見える部長のおっぱいとで、大輝の股間はむっくりと起きあがってしまった。

「あ、ボクのお腹に当たってるよ? ふーん、ナニかなこれは?」

 全ての答えを知ってるのに、わざと部長は人の悪そうな笑みを浮かべて大輝に聞いてきた。


「いやっ、そのっ、あはっ、あはははー」

 大輝は焦りつつも笑って誤魔化すほかなく、すぐ隣にいる葵の顔色を窺う。


「ボクみたいな貧相な体でもコーフンしてくれるんだ。ちょっと嬉しいナ。それとも、君ってロリコンの変態なのかな?」

「誰だって年頃の女の子に抱きつかれたらドキドキするに決まってるじゃないですかっ。ってか、あんまり大きな声は……」


 葵には丸聞こえだろうが、大輝はできるだけ小さな声で言った。

 葵自体は相変わらず全てを察しているかのような余裕の表情でこちらを見下ろしていたが、一連のやりとりでやや眉が強ばったように見える。大輝は虎の尾を踏みつけた思いに背筋が凍るが、今、部長を突き放せば、ズボンに張ったテントが見られてしまう。このままイチャイチャするのも問題だが、かといって離れられない事情もあった。


「大丈夫だって。ねぇ、ゴリゴリ熱いのが当たってるんだけど、ボクを妊娠させたいの?」

「違いますって! これはそのっ……男なら誰でもある生理現象なんですってば」


「オスが妊娠適齢期のメスを孕ませたいっていうのは、普通の生理現象だよね」

「そっ、そういう意味では……」

「別にキョーミないわけじゃないし、今度シちゃおっか?」


「もう、年上をからかわないでくださいよっ」

「そんなこと言いつつ、ボクを突き放そうとはしてないじゃん? 素直になってもいいんだよ? 会長には秘密にしておくからさ」


 どこまで本気なのか。いや、最初からからかって楽しんでいるだけなのだろう。部長はニヤニヤ笑いながら密着してきて大輝の反応を面白がっていた。


「まっいいや、そろそろ会長の視線が怖くなってきたとこだし。目当てのモノも計れたからね」

「はい?」


 大輝が頭に疑問符を浮かべていると、部長はさっと体を離し、葵の方へ振り返って親指を立てて合図を送った。


「バッチリだよ。これで大きさも太さもだいたいわかったから。ついでにすごくコチコチだった。でもさ、本当にこんなおっきいのがお腹の中に入っちゃうの? 信じられないよね」

 部長は頬を赤らめ、下腹部に当たっていた感触を思い出すかのように、股を擦りあわせる。唖然とするのは大輝だ。


「ちょっとちょっと、どういうことなんですか?」

「んー、わかってるくせにー。ほら、会長に君のヌードを描いてあげるんだよ。でもさ、ボクってこれでも女の子じゃん? 同性の大きさとか形とかはわかっても、男の子のアレは見たことないんだよ。ネットではそういう写真も転がってるけどさ、実際に君の大きさとかを確認しないと、絵のリアリティが……」


「そんなくだらないことに才能を使わないでくださいっ」

「まぁまぁ、怒らないでよ。気持ち、凛々しく描いてあげるからさ」


「ちょっと待ってください。ギリシャの彫像とかでもさすがに勃起した状態のアレはないと思うんですけど」

「新機軸ってやつだね」


「さすがに恥ずかしいにもほどがあるんですけど」

「だいじょうぶ大丈夫。会長しか見ないからさ。どうせエッチする時に見られちゃうんだし、遅いか早いかだよ?」


「しませんって!」

「強がらなくていいのに。それともアレかい、電気消して……とかって頬を染めながら言うのかい? 君もなかなか乙女だね」


「だいたい、美術部の人たちにも見られちゃうじゃないですか」

「それはまぁしょうがない。野良犬にでも噛まれたと思ってあきらめてほしい」

「僕にメリットないじゃないですか」


「ま、そこはバーターってことで。そうそう、バーターついでなんだけどさ、今度、君のおちんちんをデッサンさせてくれないかな。もちろん、ボクも全裸になって体の隅々まで見せてあげるからさ。ねっ、君さえよければそのままエッチしちゃってもいいし。もちろん会長には内緒にしておくらから」


 最後に部長は大輝に耳打ちしながら言うが、返事は当然決まっている。

「そんなこと絶対お断りです!」



 そんなやりとりがあった中で、大輝はふと部室の棚にとある石膏像があることに気づいた。

 気づいてしまったことに後悔するべきだったのか、それとも華麗にスルーするべきだったのか。しかしながら、大輝の性分からしてそれにツッコミを入れざるを得ず、ついつい大声で叫んでしまう。


「これはいったいなんなんですかっ!」

 大輝が指さした先に部長と葵の視線が集まる。部長は当然平然としていたが、さすがに葵も面を食らっていた。


「御神体?」

「こんな卑猥な御神体がありますかっ」


 神社にある男性の象徴をかたどった御神体もあるにはあるが、たいていはある程度デフォルメされている。そこにあったのは生々しいまでの勃起した男の股間であり、とても神々しくは見えない。


「そういう建前なんだからいいじゃないか。ねっ、会長?」

「うっ、うむ、そうだな。御神体ならしょうがない」

 急に振られた葵はまだ困惑していたが、どういうわけか美術部の肩を持った。


「会長までっ。どう見てもただの張型かディルドーでしょうに。どうなってるんですかこの部は」

「芸術にエロって大事だからね。ちなみに、誤解してるかもしれないけれど、アレを作ったのはボクじゃないよ。あっちの三年生の先輩たちの作品」


 大輝がじと目で部長を見ると、彼女は誤解されては困ると言いたげにバラした。

 その三年生たちは飛び火したにも関わらず、我関せずと談笑を続けている。


「まぁ、大輝よ。多少は多めに見てやろうではないか、うん」

「まさかと思いますけど、何か籠絡でもされてるんですか? そういえばさっきも部長に僕の絵を描いてもらうみたいですけど……」


「そっ、そんなことはないぞっ。公私混同はいけないしな。絵のことがなくても、わたしの発言は変わらないぞ」

「そうそう、会長もけっこうコレ好きだもんね」


 話の流れでさらに爆弾を投下したのは、やはり部長だった。どこからか半透明状のピンクの御神体を取り出して大輝に見せつけてきた。


「今度はなんですかこれ?」

「飴だよ。石膏像から型を取って飴を作ったんだよ。これなら舐めても大丈夫。毎年、文化祭で売っている、人気の裏メニューだよ」


「ちょっと待ってください。なんでこんなもの売ってるんですかっ」

「えー、だってほら、美術部は弱小で部費も雀の涙じゃない? 絵を描くにもお金はかかるし、これが一番売れてるんだよねー。ほら、女の子ってみんなおちんちん大好きじゃない。しかも舐めちゃえば処分も簡単だしね。まさに乙女な女子高生のためのアイテム?」


 そう言って部長は飴をぱっくりとくわえて、じゅぽじゅぽと卑猥な音をたてながらしゃぶりだした。


「ほにゃ、おひょこの子もしゅきでひょ? んぷっ、女の子がフェラしてるとこってさ?」


 飴とはいえさすがは美術部が作ったものか、男のアレにそっくり作られている。骨張ったところとか、血管が浮き出ているところとか、裏スジの形とか、女子しかいない美術部で何を参考に作ったのかよくわからないが、今はネットで無修正が簡単に入手できるのだから、案外モデルには困らないのかもしれない。


 そんな男のアレにそっくりな飴を、まだ小学生みたいな体つきの部長が美味しそうに頬を赤く染めながら舌を這わしているのだ。その背徳感に大輝は自分の股間がさらに隆起するのを覚え、目を血ばらせながら部長を凝視した。


「恥ずかしいからあんまりジロジロ見ないでよ」

 そう言いつつも部長は飴をしゃぶるのをやめようとはしない。今度はその小さな口いっぱいを使って飴を根本まで飲み込んだ。喉まで入れてやや苦しそうに、目尻に涙を浮かべ、次に頬の裏に激しく擦りつけ、飴の突起が頬を膨らませる。


 滑りをよくするためなのか、口の中に唾をいっぱい溜め込んで飴に塗りたくる。じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てながら唾と溶けた飴を混じりあわせ、部長は恍惚の表情を浮かべながら、それを美味しそうにこくりと飲み込んだ。


「ぷはっぁ」

 一息つくために口から出てきた飴は一回り小さくなっていたが、まだ元の形を保っている。部長の唾がたっぷりとまとわりつき、ヌラヌラと卑猥に光る。

 大輝はそのいやらしい光景に目を血走らせ、ズボンに痛いほどのテントを張りながら凝視していたが、葵もまた頬を染めつつも興味深く見つめている。


「ほら、会長も一緒に舐めようよ」

 そう言って部長は葵の唇に飴を当てる。飴の亀頭の部分が彼女の柔らかい唇をぷにっと押す。ちょうどキスしている形になった。


「ちょっ、なんでわたしがっ……んっ」

 拒絶するために口を開いた瞬間に、部長は飴を葵の口の中へと押し込んだ。喉の奥まで一気に進入してきたため、それ以上言葉も出せず、思わず嗚咽する。


「ただの飴だよ? 美味しいでしょ、ピーチ味だよ」

 喉を二三回突いたところで先端を下の上に持ってきて葵に飴を舐めさせる。果実の甘みと香りが口の中に広がり、葵も自然と舌を絡ませ糖分を味わっていた。


 飴といっても男の象徴を象ったものだ。それをあの葵が美味しそうに舐めている。その光景に、大輝は信じられないものを見た衝撃と、彼女の口の中に入っているものを自分のそれに置き換えることを想像し、ごくりと唾を飲み込んだ。

 再び外気に触れた飴は、葵の唾液によって光輝いていた。


「もっと舐める? じゃあ今度はあの子に見えるようにしてあげなくっちゃね」

 そう言って部長は、今度は葵の口の側に飴を持ってきて、彼女に舌を伸ばさせる。

 羞恥の光景としか言いようがないが、どういうわけか葵は唯々諾々と受け入れる。場の変な空気に当てられてしまったのかもしれない。


「ほら、この裏スジの段差になっているところがあるでしょ。男の子はここが一番気持ちいいんだよ」

 部長のレクチャーのままに、葵は一番敏感な所に舌を伸ばす。小さい舌を一生懸命伸ばしてチロチロと飴を舐め、甘い蜜をこそぎとっている。


「ねぇ、どうしてここが一番気持ちいいか知ってる? 女の子のアソコなら、コレを全部包んで気持ちよくしてくれるでしょ。別に裏側に一番感じるところがなくてもいいよね。ここってさ、女の子が口でシてあげる時に、舌で一番舐めやすいところなんだよ。そう考えると、フェラって遺伝子レベルで認められたエッチな行為ってことだよね」


 エッチな笑みを浮かべながら、部長は大輝と葵に、したり顔で説明する。

 生々しい言葉に大輝は驚きながらも、興奮せざるをえない。それは葵が飴を舐めているからということもあるし、彼女が自分のモノを美味しそうに奉仕してくれている所を想像しているからでもある。


 部長は大輝の顔を眺めると、次に視線を落として彼の股間を見やった。そこの膨らみがさらに大きくなっていることに満足し、また妖しく微笑んで今度は自分も飴に顔を近づけた。


 葵が舐めている横から、部長は飴に舌を伸ばしてちろっと舐めた。

 童顔な二人が一つの男のモノを美味しそうに舐めている光景は、ある意味夢のようでもあった。


 二人の唾液で少しずつ飴も濡れそぼっていき、溶けた飴と混ざりあって滴り落ちていく。それを二人の少女がもったいなさそうに舐め取り、さらに顎まで雫がこぼれていく。


 二人の少女が一つのアレを奉仕するという、男にとって夢のような光景に、大輝の目は釘付けになった。


 もし自分のものを彼女らが舐めているのだとしたら。

 それを想像するだけでも堪らない気分だった。


 葵の小さな舌がちろちろと自分のものを舐めている。

 もうそれだけで股間のテントは突き破らんばかりに猛り、何もしていないというのに我慢汁が溢れ出ている。


『ピクピクしてきた……。もうイキそうなのか?』

『いいよ。このまま。ボクたちの顔にかけて。出すところを見せて』

 二人の声が幻聴として聞こえてくる。


 大輝の様子が伝わったわけではないだろが、ラストスパートをかけるように、二人とも左右から一番敏感な場所を執拗に責め立てた。


『もう……無理……我慢……できない……っ!』

 大輝は心の中で叫びながら、腰をガクガクと震わせた。

 一瞬、パンツを汚してしまったのではないかと危惧したものの、ズボンの中で不快は生じなかった。

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