閑話5.5 お見舞いの次のお礼参り

 今、大輝は人生の中でも最大のピンチにあった。

 明日香の家の食卓で、目の前には彼女の母が、その隣には彼女の父がにこやかな笑顔で座っている。


 大輝の隣には明日香が座っている。席はこれですべて埋まっている。

 食卓を囲む四人は全員笑顔を保っている。少なくとも、表面上は。



 何が起きたのかといえば、金曜に明日香が大輝に少し言い辛そうに誘ったのが始まりだった。


「この前、お見舞いに来てくれてありがとう……。それでね……、お母さんがお礼をしたいからって、大輝を家に招待しなさいって……」

「いやぁ、そんなお礼されるようなことはしてないよ。明日香が寝込んだらお見舞いに行くのは当然だし、むしろ僕の方がお礼をしたいくらいで……」


 明日香の家であったことを思い出す。シュークリームを口移しで食べさせ、勢い、キスまでしてしいまった。あのクリームの甘みと、彼女の柔らかい唇の感触は、今なお鮮烈に覚えている。


 それに、キスだけでなく、明日香のおっぱいも見てしまったのだ。服の上からでもわかる圧倒的なボリュームは、服を脱いでも変わりはなく、白いモチモチのお餅と淡いピンクの飾りは、グラビアモデルにも引けを取らないもので、童貞の男子高校生にとってはたまらないものだった。


 その胸と唇が、今、目の前にあるのだ。少し手を伸ばせば触れられそうで、やってはいけないとわかりつつも、その衝動にかられてしまう。

 大輝は顔を真っ赤にしながら明日香の目を見ようとするのだが、彼女もまた潤んだ瞳で大輝を見返してきて、その色気に思わず撃沈しそうになる。


「お願い、大輝。あたしも大輝にお礼をしたいから……」

 そう懇願されても、二つ返事というわけにはいかなかった。明日香だけではなく、彼女の母ともイロイロあった。具体的には一緒にお風呂に入り、男子高校生にしてはちょっと早すぎる経験をしてしまったということなのだが。


 今度顔を合わせることになれば、何が起きるかわからないという恐ろしさがある。

 とはいえ、必死にお願いする明日香の眼差しには大輝も勝てず、ついつい頷いてしまったのだった。



 そんなわけで冒頭のシーンに戻る。

 大輝は制服姿のまま明日香の家にお邪魔することになり、どういうわけか今日は彼女の両親も七時には帰宅していた。食卓には鳥の丸焼き等、やたらとご馳走がならんでいる。手作りということを考えれば、今日は休みだったのか、大輝のために有給を取ったかだろう。


 重いおもてなしに恐縮してしまうが、万が一でも大輝が誘いを断ってしまえば、明日香の立つ瀬もなかっただろう。


 相変わらず明日香の母の胸は大きい。正面に座るとその圧倒的ボリュームがよくわかる。乗せるつもりがなくても、テーブルの上に乳房が乗ってしまうのだ。鳥の丸焼きよりもおっぱいがご馳走なのではないいかと錯覚するほどだが、眼福なのは間違いない。


 見ようとしなくても視界に入ってしまうものだが、大輝の視線を彼女は気づいているのだろうか。むしろその隣に座る父の方が、笑顔を湛えつつも、眉間に険が浮かんでいるような気がする。


「さぁさぁ、遠慮なく召し上がってくださいな。年頃の男の子なんですもの、お腹が空いたでしょう?」


 何を? と、つい聞き返しそうになるが、大輝とて目の前のご馳走を前に空腹を覚えないわけもない。とりあえずジュースで唇を湿らし、丸焼きを飾るハムやらローストビーフやらに手を出す。気になるのはやはりおっぱい、もととい、丸焼きなのだが、どう手を出していいのか悩むものだった。


「大輝、取ってあげる」

 そんな大輝の逡巡をくみ取ってか、隣に座る明日香が気を利かせて丸焼きをナイフで切り分けてくれた。身を乗り出したために明日香の柔らかい胸が大輝の腕に当たる。


「明日香、ありがとう」

 大きなもも肉の塊が大輝の取り皿に乗る。おっぱいの感触に思わず大輝の頬は緩み、どっちにお礼を言ったのかわからない。


「どう? 気に入ってくれた?」

「あっ、はい。とっても美味しいです」


「そう。腕によりをかけた甲斐があったわ。遠慮せずに好きなだけ召し上がっていいのよ。なんならさっきっからジロジロ見てるおっぱいも触ってみる?」

「んぐっ、げほっ、ごほっ、ごほっ。ちょっ、いったいなにを?」

 上機嫌で鶏肉を咀嚼していると、とんでもない発言に大輝は思わずむせってしまう。


「あらあら。年頃の男の子なんですもの、おっぱいに興味があるのは当然でしょう? あら、でもわたしのおっぱいは遠くて触れないかしら。じゃあ、隣の明日香のおっぱいを揉んじゃっていいわよ」

「ちょっとお母さん!?」

 飛び火した明日香は立ち上がって抗議する。明日香の父の眉間のシワが増えた気がした。


「いいじゃないおっぱいくらい。あなたたちはこっそり揉んだり吸ったりしてる仲なんでしょう?」

「ちょっ、明日香とはただの友達で……」


「ただの友達なのにキスしたり裸を見たりしたの? それってつまりセックスフレンドってこと? さすがにそれはお母さんも許しませんよ」

「そんなわけないじゃないですか。明日香は大切な友人なんですから。なんか前もこんな話ししませんでしたか?」


 大輝だけが抗議する中、明日香は顔を真っ赤にして押し黙り、彼女の父は額に青筋を浮かべながら微笑んでいた。


「大切な友人もけっこうだけれど、もう一歩進めてもいいんじゃないかしら。大輝くんも年頃の男の子なんですもの、いろいろな女の子からちやほやされたいっていうのもわからないでもないけどね」

「そういうつもりじゃ……」


「明日香もですよ。もたもたしてたら大輝くんを他の子に取られちゃうわよ。恋は戦争なのだから、どんな手を使ってでも自分のものにするくらいじゃないと、そのうち泣くことになるわよ。ママもパパもあなたたちと同じように生徒会の一員だったのよ。役職も副会長と書記で一緒だしね。ママだってパパを落とすために高校生の時には毎日、猿みたいにセックスしてたのよ。盛り上がりすぎちゃって三年の三学期には赤ちゃんができちゃったけど。それで卒業後に学生結婚して産まれた子がお姉ちゃんよ。もうちょっと早かったら、大きなお腹を抱えて卒業式に出ることになるところだったわね」


 とんでもない事実を聞かされ、大輝は唖然とした。

 先ほどまで青筋を立てていた父も、さすがにこの話には気まずそうな顔を浮かべて視線を逸らした。


「そういうわけだから、ママは高校生のセックスには寛容よ。ちゃんとゴムはつけてほしいけれど、ナマの方が気持ちいいし、盛り上がっちゃったらゴムがなくてもシたくなっちゃうものね。危険日ほど互いに体を求めたくなっちゃうものだし」

 彼女は照れながら言うものの、照れで誤魔化せるような話ではなかった。


「ほらほら、さっきみたいにさりげなくおっぱいを当てるのもいいけれど、もっと積極的に抱きついた方がアピールできるわよ。あなただってママほどじゃないけれど、おっきいのを持ってるんだから」


 こういう風にするのよと言わんばかりに母は隣の父の腕に抱きつき、豊満な胸を腕に押しつけた。さきほどまで厳粛な顔をしていた父も、慣れている感触とはいえ頬を緩めた。


「お母さん、からかわないでよっ。大輝、ごめんね……。お母さんっていっつもこんな感じで。今日は大輝が来たからいつもよりはしゃいじゃって。気を悪くしないでね」

「うっ、うん、あけすけな人でびっくりしたけど」


 明日香は顔を赤くしているだけで、さすがに母の扇動に乗ったりはしなかった。テーブルの下でこっそり手を握ってきただけだ。


 と、大輝の股間に適度な柔らかさをもった何かが当たった。ぐりぐりと押しつけてくるそれは、形からして足の裏だろう。位置関係から、明日香の母の足に違いない。

 どういうつもりなのかと彼女の顔を見ると、意地悪そうな笑みを返してきた。


 生々しい話を聞かされた大輝の股間は既に膨らんでいた。硬くなったそれを確認して、彼女はさらに妖しく口元を綻ばす。適度に柔らかい足の裏の感触が大輝の一番敏感な場所をなぞってくる。


(ちょっ……おばさん……?)

 大輝は気持ちいいのやら隣に明日香とその父がいるのやらで気が気ではなく、どう反応していいのか困惑するだけだったが、さすがに百戦錬磨の女の足技だけあって、器用に大輝の一番気持ちいい所を刺激してきた。


 テーブルで隠れているとはいえ、その下ではとんでもないことが起きている。あまりの快感に大輝は思わず変な声を漏らしてしまいそうになるが、さすがにそれはまずいだろう。だらしない顔もできるだけ引き締めるべく努力するのだが、それがかえって変な表情にならないか気になるところだった。


「男子高校生だもの、これくらいじゃ満足できないわよね。遠慮せずにもっと召し上がれ。明日香もほら、ぼーっとしてないでもっと大輝君にお肉を取ってあげなさい」


 母に言われて明日香は再び肉を取り分ける。つまり、意識しているかしていないかはともかく、再び彼女のおっぱいが大輝の腕に当たるわけで。ただでさえ股間が刺激されているというのに、明日香のおっぱいの感触も加わって大輝はたまらなくなる。


 なる、のだが、すぐに斜め前の不機嫌そうにしている彼女の父の顔を見てできるだけ冷静になろうと努める。

 だが、ここで彼の微妙な違和感に大輝は気づいた。さきほどまでの仏頂面が、やや緩んでいるような気がするのだ。大輝と同様に、何かを我慢し、無理して固い表情を作っているような気がした。


(まさか……?)

 とんでもないことに思い当たり、大輝は明日香の母の顔を見る。

 大輝の驚きが通じたのか、彼女は全てを見透かしたような笑みを返し、さらに大輝の股間を激しくこすりあげてきた。


『んっ……くっ……』

 大輝と同時に、彼女の父も小さな呻きを漏らす。

 彼女の母は大輝の股間を足で刺激すると同時に、隣に座る夫へも手でアレをいじり倒しているのだった。


 もう我慢ならなくなってきた所で、急に彼女の足の感覚が離れる。大輝は安堵したようながっかりしたような不思議な気分だったが、ただ気まぐれで止めてくれたわけではなかった。テーブルの下をのぞき込めばわかるが、彼女は器用にも大輝のズボンのチャックを足の指で引き下ろし、開いた窓から足の指を進入させてトランクスの中へともぐり込み、大輝の硬くなったソレを引っ張りだした。


(ちょっとちょっとちょっと?)

 さすがに大輝も声を上げて制止しようかと考えたほどだったが、さすがに性器をほっぽり出しながら言う台詞ではなかった。立ち上がって抗議すればよかったかもしれないが、それでは明日香に見えてしまう。


 大輝は目でしきりに抗議するのだが、彼女は「気持ちいいならやめてあげませんよ」と言わんばかりに微笑み返してくるだけだった。


 ズボン越しでさえなくなれば、もうあとは全て彼女の掌の中だった。直に一番気持ちいい場所を擦りあげてくる。足の裏の堅さと柔らかさを兼ね合わせた感触と、適度な力の入れ具合に、大輝はもうたまらなくなった。


 必死にお尻に力を入れて我慢するのだが、その程度でどうこうなるわけではなく、終末をわずかでも遅らせる効果しかない。


 しかも、今はズボンの中にあるわけではないのだ。パンツを汚すことにはならないが、かといってこのままではテーブルの下を汚してしまう。栗の花のような臭いを明日香に気づかれてしまうかもしれない。それを考えれば、むしろパンツを汚した方がマシだったかもしれない。


「大輝、顔色悪いけど、どうかしたの?」

 切羽詰まった状態で、明日香が心配そうに話しかけてきた。


「べ、別に。なんでもないよ、大丈夫」

「無理しなくていいよ。大輝、すごく辛そう。ベッドに横になる?」


 ぎゅっと明日香は手を握ってきて、さらに再び腕におっぱいが当たる。

 大輝としてはただ気持ちいいのを我慢してるだけとは言えない。そもそもこの下半身の状況ではベッドに行くこともままならない。優しくしてくれる明日香にはいつも感謝しているが、今回ばかりはむしろほっといてもらわなければならなかった。


「額の汗もびっしょりだよ。体調が悪くなったのなら遠慮しないで」

「だっ、大丈夫だから。本当に大丈夫だから。ちょっとこのまま休んでいればすぐに良くなるし」


 明日香はポケットから取り出したハンカチで大輝の額を拭った。その好意にきゅんと来るのだが、下半身は相変わらずのっぴきならない状況になっている。額には汗が、下の口からは透明な汁が滲み出し、我慢も既に限界を迎えていた。


 明日香は優しく汗を拭ってくれながら、心配そうに顔を近づけてくる。おでことおでこをくっつけて熱でも計るつもりなのか、ともかく目の前に彼女の柔らかそうな唇があり、そこから熱い吐息が漏れてくるのだ。ドキドキしてしまうのは男ならしょうがないことだった。


「明日香っ、だめだって……」

 なにが? と明日香が小首を傾げた瞬間に、大輝は我慢の限界を超えてしまった。体がビクビクと震え、急に襲ってくる疲労感に大輝は背もたれに寄りかかった。


 同時に明日香の父もテーブルに肘をつき、あちらでも何かが起こったのがわかった。

 体はぐったりしつつも、股間のあれはまだ小刻みに痙攣している。もう既に出し尽くしてはいるものの、それでも彼女は敏感なそれを足でしごき続け、余韻を蹂躙し続けた。


「あらあら、大輝君ったら汗びっしょりじゃない。わたしたちがいるから緊張しちゃったのかしら。せっかくだからお風呂に入っていったらいいわ。明日香、大輝君のためにお風呂を沸かしてきなさい」


 明日香に気づかれず、どうこの事態を収集するつもりなのか不思議ではあったが、彼女の母はうまく明日香を遠ざけた。

 落ち着いてきたところでようやく執拗に責め立ててきた足からも解放され、大輝もテーブルに突っ伏したくなった。


 とはいえ優先順位からいえば、明日香が戻ってくるまでに小さくなったアレをズボンの中にしまうことであり、汚してしまったテーブルの裏の後始末をどうするかでもあった。


「あとはやっておくから、大輝君は一足先に脱衣所に行っちゃいなさいな。そのままじゃ気持ち悪いでしょう?」

 大輝はお言葉に甘え、オス二人の臭いが充満してきたダイニングから抜け出した。

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