閑話6.1 この美術部には問題があった(前編)

 生徒会の業務として、各部活の活動実態を把握するというものがある。

 たいていの運動部については実績を判断するのは容易であり、予算配分が県大会や全国での成績に比例する。


 逆に文化部では、大きな大会がある部活を除けば、活動が内向きになり、文化祭での活動実績が部の活動実績に繋がるのであるが、それ以外にも日常的にどのような活動をしているのか、部活として内容が部の看板に対して著しくカイリしていないかどうか調査に入ることもある。


 生徒会長の葵は、大輝を連れて、各部活の抜き打ち調査に出かけた。

 その最初のターゲットがこの美術部であった。

 手元の資料によれば、美術部の部員は四名。うち三年生が二人であり、他の学年がそれぞれ一人ずついる。全員、女子であるのは本校の部活動としては一般的なものだ。


 活動実績は特にない。定期的にコンクールに出品しているが、入選はない。人数や実績からすれば、元々出ている予算も微々たるものであり、むしろ部として活動するためには個人の持ち出しが大半を占めていることだろう。


 特に葵から重箱の隅をつつくような真似をするつもりもなく、一年生に仕事を教えるために、たまたま査察することになったという程度でしかなかったのだが。


「こんにちは、生徒会です」

 ノックをして美術部が入っている、美術準備室のドアを叩く。


「あいよー。どうぞー」

 と、中からやる気のない声が返ってきて、葵はドアを開けた。

 美術部そのものは、大輝の想像と大きくかけ離れたものはなかった。

 準備室は広くはないが、彼女ら四人が活動する上では手狭ということもないだろう。


 中央にイーゼルが一脚置いてあり、それと向かいあうように一人の少女がイスに座っていた。

 キャンパスに向かって筆を動かしている少女が一人。彼女はなぜかオーバーオール姿だった。油絵の具特有の臭いが鼻を突く。


 他二人の部員は、奥のイスで向き合ってお菓子片手に駄弁っているところのようだ。制服の着崩れ具合から、彼女らが三年生ということだろう。ということは、モデルと画家が一、二年生ということになる。


「こんにちは。生徒会から活動実体の調査に来ました」

「ああ、うん、聞いてるよ。毎年毎年ご苦労なものだね」


 返事をしたのは筆を持っている少女だ。葵が来たというのにキャンパスの前から離れず、一心不乱に筆を動かしている。よく見れば頬に絵の具がついている。ついているのは顔だけではなく、オーバーオールもあちこち汚れていた。だが、一番の問題は、彼女の肌色がやけに多いというか、デニム生地がない部分は例外なく肌色ということだった。つまり、裸にオーバーオールを着ているだけなのだ。


 大輝は裸オーバーオールの少女を見て赤面するとともに、目を白黒させた。

 少年みたいなベリーショートの髪に、あどけない顔、頬を飾る絵の具、とはいえ女の子らしいぷっくりとした艶のあるピンク色の唇、体つきも少年と見紛うほど華奢で、手足が細くしなやかではあるが、オーバーオールからこっそり覗くささやかな膨らみが、彼女が女性であることを物語っていた。


 まだ膨らみかけの蕾のような、瑞々しくキズひとつない柔肉が、少女が筆を執るたびに小さく揺れる。激しく筆を動かせば先っぽの大事なところさえ見えてしまいそうで、大輝はついつい、視線を彼女の胸元へとやってしまう。


「痛っ」

 と、大輝が鼻の下を伸ばしていると、葵から肘打ちが腹部に飛んできた。彼女は表情一つ変えていないが、ピリッとした空気を感じる。


「あの、どうしてそんな格好を?」

「見てわからないかい? 制服を絵の具で汚したら大変じゃないか」


「だからって素肌にオーバーオールだけっていうのもどうかと思うんですが」

「そう? Tシャツ着てもいいんだけど、どうせ汚れるだけでもったいいないじゃないか。むしろ全裸で描かないだけ感謝してもらいたいものだよ」


「裸オーバーオールだってたいがいですが」

「いいじゃないか、どうせ女子しかいないんだし。恥ずかしくもなんともないよ」


「いえ、ここに男子がいるじゃないですか。副会長なんですけど」

 葵に言われて少女は初めて大輝に視線をやり、急に頬を赤らめて体を腕で隠し、しゃがみこんだ。


「ちょっ、ちょっと! なんで男の子がいるんだい? 聞いてないよ。なんで来る前に言ってくれないんだよ!」

「言ったら抜き打ちにならないでしょうよ。だいたい、うちには男子もいるんですから、当然、男が来るというのも予想してもらわなければ困ります」


「そんなの知らないよ。男の子の前でこんな格好してたら、ボクがまるで痴女みたいじゃないか」

 男がいなくても痴女ですから。大輝と葵はそう言いたげに、困り顔で顔を見合わせた。


「すみません、うちの部長、絵のことになると周りが見えなくなるタイプでして」

 イスに座っていたモデルの少女が言った。


 しかし、この裸オーバーオールが部長だとは驚きだった。この中で最も年下に見えるどころか、下手をすれば小学生にしか見えない。とはいえ、三年生は引退する時期ではあるのだが。


 しかも、見た感じではモデルの少女の方が年上に見える。一年生が部長なのか、それとも、小学生に見えるだけで二年生なのか。葵と大輝がさらに困惑していると、モデルの少女が察したのか、破顔して言った。


「いえいえ、ちゃんと一年生ですよ、部長は。ほら、わたしって部長に向いてませんし、こんな見た目でも実績は部で一番なんですよ?」

 目欲しい実績はなかったはず、と葵が首をひねっていると、さらに説明してくれた。

「中学の時のことですけどね。でも、高校でもそのうち入選くらいはすると思いますけど」


「大輝、お前はちょっと廊下に出てろ。もうちょっとマシな格好に着替えさせるから」

 合点がいったところで大輝は追い払われてしまった。

 もう少し、彼女の姿を網膜に焼き付けたかったところではあったが、こればかりは仕方がない。



 とはいえ、再び呼ばれた時にも、部長の姿は裸オーバーオールのままだった。

 恥ずかしそうにキャンパスに体を隠す部長と、困り顔の葵、そして常に笑顔を絶やさないモデルの少女と、なにが起きても無関心に駄弁り続けている三年生の二人がいるだけで、大輝が廊下に追い出される前と何も変わっていなかった。


「あの、これはいったいどういうことなんですか……?」

 大輝も困惑顔で問いかけると、葵も困り顔で答えた。


「絵の具で汚しても構わない服がなかったのだ。せめて下着だけでも付けてもらったのだが、オーバーオールにブラだけという方が、かえって目の毒だと判明した。仕方がないから元のままで通すことにしたが、大輝よ、あまりジロジロと見るなよ。今度鼻の下を伸ばしたら、その目で二度と彼女を見られないようにしてやる」

「そっ、そんなっ、鼻の下なんて伸ばしてなんかないですってば……」


 大輝は必死に否定するものの、ついつい部長の方に目線が行ってしまうのは否めなかった。チラチラ見ても、オーバーオールから覗く白い肌が色っぽい。微かに見える膨らみは、やはりうまく覗き込めば突起が見えそうだった。


 部長はそんな大輝の視線を感じているのか、まだ恥ずかしそうに、頬を赤らめつつ、体を腕で隠しながら筆を取ってキャンパスに向かっている。


「とっ、ところで僕たちって何しに来たんでしたっけ」

「査察だ。ちゃんと部活をしているかどうか、部室を不正に使っていないかどうかのチェックに来たのだ」

「その……、ちゃんと活動しているのではないでしょうか」


 大輝が言うまでもなく、しっかりと絵を描いているのだから美術部としてはどこからもケチのつくはずはない。

 これ以上、ここにいればさらなる地雷を踏みそうな予感がして、やや名残惜しいものはあるが、大輝としてはでいる限り早く去りたい気分だった。


 部屋の隅々まで見回しても、そう変なものは置いてない。描きあげたキャンパスが重ねられておいてあるくらいで、何が描かれているかは布が被せられているためわからないが、普段からもいろいろ描いていることは間違いない。


 そういえば、と、大輝は何気なく部長が筆を走らせているキャンパスを覗いてみた。

 と、そこで絶句しつつ、目を白黒させたのだった。


「ちょっ、ちょっと待ってください。これっていったい……?」

 描かれていたのは、イスに座る裸の少女だった。別人を描いているのではなく、確かに目の前で微笑んでいる部員の少女そのものだ。まだ途中のために危ない部分は描かれていないが、一糸纏わぬ姿なのは間違いない。


「裸婦画だよ。美術の基本じゃないか」

 大輝の疑問に、部長は平然と答えた。葵の叱責が飛んでくるのではないかと大輝は身構えるのだが、恐る恐る彼女を見ても、相変わらず困ったような顔をしているだけで鉄拳制裁は飛んでこない。


「う、うむ、健全か不適切かと言われると微妙なところなのだが、裸婦画にイチャモンは付けられん」


 美術の教科書にも載っているし、美術館でも堂々と飾られている。それをいやらしいと言う方が間違っているのかもしれないが、目の前にいる実在の女性の裸が描かれていると知ると、どうしてもエッチな目で見てしまうのはしょうがないことだった。


「服着てますよね。なんで裸になってるんですか?」

「そりゃぁ、ボクくらいになると、想像で裸を描くのはわけないさ」


 冬の桜の木を見ながら満開の桜を描くようなものだろうか。とはいえさすがに裸体を一度も見ずに正確に描けるものなのかは疑問だが、そもそも服の下に忠実である必要もなかった。


「あの……、恥ずかしくないんですか?」

「服着て座ってるだけですから。でも、男の人に見られるのはちょっと恥ずかしいですね……」


 視姦されているような視線を感じたのか、モデルの少女は腕で胸を隠すように恥じらって言った。


「おいこら、セクハラだぞ」

「痛っ」

 すかさず葵の鉄拳が大輝の後頭部に飛んできた。


「そもそもなんで裸婦画なんですか?」

 頭をさすりながら大輝は再び部長に問う。


「んー? だってつまんないじゃないか。普通に服着て座ってるだけなんてさ。やっぱ芸術はヌードだよ。描いていて楽しいじゃないか」

 見ていても楽しいですね、と、大輝は心の中でだけ同意する。


 ジロジロと見ていいものなのか、それとも視線を外した方がいいのか悩みつつ、大輝は左右を見回し、ある事実に気づいた。

「まさかと思いますけど、そこの布がかけてある絵も全部裸婦画なんですか……?」


 もしかすれば聞いてはいけないことだったのかもしれないが、部長からは平静なトーンで答えが返ってきた。


「そうだよ。見たければ好きにしていいよ。そんなにおもしろいものでもないだろうけど」


 勧められて確認するべきなのかどうか、大輝は恐る恐る葵の顔色を伺ったが、予想外にもノーリアクションだったために、怖いもの見たさもあり、思わず布をめくってしまった。


 最初に出てきたのは三年生の一人の裸婦画だった。イスに逆向きに、足を広げて座って談笑している姿で、局部と胸の大事なところは隠れているものの、大きな丸いラインが覗いている。全裸なのが不思議なポーズと表情だが、制服を着ていたものと考えれば違和感はない。しかし、意外に着痩せするタイプの人のようだ。


 次に出てきたのがもう一人の三年生の部員の裸婦画であり、窓下の壁に体育座りをしながらぼーっとどこかを見つめている。相方とは対照的に胸は小さめだが、あいにく立てた足に隠れてよく見えない。反面、股間が丸見えで、見えてはいけないところが克明に記されていて、大輝は思わず赤面する。


 三枚目は自画像で、絵を描いている部長自身だった。オーバーオールさえ着ておらず、白い肌のあちこちが絵の具で汚れているが、それがまた色っぽく感じる。小学生みたいな華奢な体つきと、ささやかな胸の膨らみが背徳感を生み出し、ただ一人、胸のさくらんぼが記されていることも、またエッチな気分にさせる。


 四枚目は驚いたことに、学園のスターであり、水泳部の部長の相川真由だった。プールで飛び込むところの姿が描かれていて、水面にちょうど着水するところの絵だ。当たり前のように全裸であるが、引き締まった肉体と、豊満な胸、そして真剣な眼差しから、全裸であるというのにいやらしさはちっとも感じられない。いつもの真由の過激さからすれば、むしろ全裸で泳いでいても不思議ではないのだが、あいにく、大輝はその姿を見たことはない。


 五枚目……、と見たところで、今度は葵の絵が出てきた。顔を見たところでヤバいと大輝は慌てて次の絵へと移ろうとするものの、すぐに違和感に気づいて静止する。

 その絵は、どういうわけか制服を着たままの、普通の肖像画だった。


「あれ、これってどういうことですか?」

 これまで全てが裸婦画だというのに、葵だけが服を着ているというのは不思議なことだった。

 不思議なことはそれだけではない。これまでは全て油絵であったのに、これだけは水彩画のようだった。


「まさかと思いますけど、会長が脅して描かせたんじゃ……」

 大輝がじと目で葵を見るが、彼女は慌てて手を振って否定した。


「違う違う。というか、こんなの知らないし、そもそも美術部の部長とは初対面だ」

「でもこれだけ裸婦じゃないって不思議じゃないですか? ほら、他の絵も全て裸婦ですよ」


 残ったキャンパスを見てみても、美術部顧問を除けば大輝の知らない人ばかりだ。しかし、知らないとはいえ、全員女子高生であり、同じ学校に通う生徒でもあり、その女子のヌードであると考えると、大輝は心臓が高鳴るのを覚える。


 よくよく見れば、同じ年頃の女子といえども、一人一人体つきが全然違う。成長の度合いというのもあるだろうが、特におっぱいの大きさや形など、千差万別であることを知って、大輝は驚きを隠せずにいた。


 どういうことだろうと、大輝も葵も美術部部長を見やるが、彼女はにへへと笑いながら、ペインティングナイフを手に取って大輝の方へと近づいてきた。


「ああ、それは特別製なんだ。ほら、水彩になってるだろう。下絵は油絵でね。こうやって上から水彩を塗ってやると定着しないから、そのうちポロポロと剥がれ落ちちゃうんだよ。で、ナイフで水彩部分を削ってやると……」


 ガリガリと葵の制服部分を削っていくと、下から肌色が見えてきた。綺麗なお腹とかわいいおへそが露出する。服から覗くそれらは想像以上に艶めかしく、大輝は頬を赤らめつつも、つい凝視してしまった。


「ね、けっこう楽しいでしょ。どうだい、君もやってみるかい?」

 ペインティングナイフを手渡され、ついつい絵を削ってみたくなったが、さすがに剥がす寸前に葵の視線に気づく。


「や、やぁ、そんなことするわけないじゃないですか。あははー、あはははー」

 愛想笑いで誤魔化そうとするものの、葵はじと目で大輝を見つめるだけだった。


「遠慮することないのに。美術部顧問とボク以外は想像図に過ぎないんだからさ」

「そういう問題じゃないと思いますけど」


 部長は大輝の背中に体をぴとっとくっつけて耳元へ囁いてくるが、その誘惑に屈するわけにもいかない。後がどうなるか怖いのは当然だった。


「じゃ、ボクが削ろっか? 会長のヌードなんてそうそう見られないもんね?」

「ちょっと待てちょっと待てちょっと待てええええええぇ!」


 部長が大輝の手からペインティングナイフを引ったくって絵のちょうど胸のあたりを削ろうとすると、顔を真っ赤にした葵が叫びながら彼女の手を取って制止する。


「なななっ、なんて破廉恥なことをしようとしているのか。ダメだ。絶対に許さんぞ。いいか、大輝の前で削るのだけは絶対にダメだ」

「ええっー? 会長のおっぱい、形が良くってかわいいと思うけど?」


「それでも、だ! いいか、もしそんなことをすれば、美術部の部費は九割カットにしてやる」

「九割カットでよければ削ってもいいってこと? どうせ微々たる額しか出てないし、それでもいいよ?」


「あっ、ぐっ……ぬぬぬぬ……、ぶっ、部費だけじゃないぞ、不適切な活動ということで、廃部に追い込んでやってもいいぞ」

「廃部? まぁ、でも絵を描くなら別に部活動じゃなくてもいいしね。なんならそこの……、えっと名前なんだっけ。まぁいいや、副会長君の家に会長の恥ずかしい裸婦画を送りつけてあげてもいいけど?」


「ちょっ、それっ……ああっ、もうっ……どうしたら……」

 部長はにやにやと葵の足下を見るように言い、逆に葵は酸欠状態の金魚のように口をパクパクさせて絶句した。

 葵が言い負けるのを初めて見て大輝は驚くとともに、外見は幼く見えてもしたたかな部長に舌を巻いた。


「んじゃ、ごにょごにょ、ごにょにょにょにょ……」

 完全に屈服させられた葵に部長が何度か耳元で囁き、それに葵が何度か頷くと、どうやら交渉事がまとまったようで、二人で堅く握手を交わしてにっこりと微笑み、大輝の方を見つめてきた。


 なんだか嫌な予感がした大輝だが、残念なことにこの予感は外れることになる。


「おっけーおっけー、部費三倍だってさ」

 部長が嬉しそうに宣言すると、他の部員たちから喝采があがる。

 元々、微々たる額に過ぎなかったのだが、まさかこんな結末になるとは露にも思わず、大輝は唖然として口を開けてそれらの様子を見ていた。

 さぞ葵も悔しいことだろうと察するのだが、どういうわけか彼女は負けた屈辱感でいっぱいということはなく、満更でもない表情をしていた。



 さて、後半へ続く前に今回のオチ。


 結局、葵の肖像画は後日、どういうわけか大輝の家に宅配便で送られてきたのだが、大輝は自分の部屋にそれを急いで持ち込み、美術の道具箱から嬉々として持ち出したペインティングナイフで彼女の服を剥がしにかかった。


 興奮し、鼻息荒くナイフを振るいつつ葵の服を剥いでいくと、下から白くなめらかな肌が露出する。

 ゴクリと唾を飲み込み、葵の大事な場所、つまり胸の部分にナイフをあてがってゴリゴリと削り、待望の葵のおっぱいを露出させにかかる。

 おおお、と目を見開き、股間の息子がたぎる中で徐々に露わになっていく葵の乳房が見えてきたところで、大輝は絶句した。


 前と同じ絵であることは確かなのだろうが、どういうわけか下から出てきた葵のおっぱいは、彼女のものとはとても似つかない、たわわな膨らみがあった。

 混乱する中でどんどん服を剥いでいっても、巨乳が露わになっていくだけで、葵の小さな膨らみはどこにも見当たらなかった。


 どういうことかとまだ服のある部分を凝視してみるものの、ご丁寧に上の制服姿の葵は普段のそれと変わりがなく、着痩せするというには無理がある大きさだった。


 悪質なコラージュを見た思いだったが、葵と部長が堅く手を握りあった理由が判明し、大輝はがっくりと肩を落とす。まさか巨乳に改変させられているとは思わず、前にも似たようなネタがあったような気さえした。


 こうなりゃヤケだと下まで服を削り落としてみたのだが、下の方はしっかりと割れ目や毛までしっかりと書き込まれていた。もし、下だけ剥ぎ取ったのならいいオカズになったかもしれないが、さすがに上についている偽乳を見てしまうと、どうにも使うに使えなくなってしまうのだった。


「ちっぱいだっていいじゃないか!」

 一人、自分の部屋で大輝は叫ぶのだが、今更どうにもならない。


 油絵が上から何度でも書き直せるものだと知り、いっそどうにか自分で修正できないものかと考えるのだが、そもそも生の形を見たことがない大輝ではどうにもならなかった。

 また後日、どうにか美術部部長に頼み込んで再度の修正をお願いできないかと悩んだことは、また別の話だ。

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