閑話3.6 公園でパンツを見せるのもどうかと思います

 逃げるようにカラオケボックスから出て向かったのは、近くの公園だった。

 公園といっても、小さなものではなく、木々に囲まれ、中央には大きな池があるという、ちょいと有名なデートスポットでもあった。


 元々、ここに来ようというつもりではなく、足が自然と向かったのは偶然ではあったが、一息入れるにはちょうどよかった。

 真由がぎゅっと背伸びをし、胸部の山が強調される。

 その様子を大輝は横目で眺め、カラオケボックスで触った感触を思い返した。


「えっと、公園に来ちゃいましたけど、どうしましょうか」

 公園でカップルがすることといえば、なにがあるのだろうか。鬼ごっこでもして、きゃっきゃうふふとじゃれあうだけでも楽しいのかもしれないが、普通に人目を忍んで抱き合うだけというのも定番と言えた。

 できることなら大輝はそういうことは避けたいのであるが、他にすることもなかなか思い浮かばない。


「うーん、そうだね。その辺の茂みに隠れて青姦でも」

「ボートに乗りましょう!」

 真由の不適切発言を塞ぐかのように大輝は力強く言い、彼女もまたにっこりと微笑んだ。


「これまた定番だね。まぁ、奇をてらう必要はないけれど。ところで、ここのボートに乗るとパンツが見えそうになるんだよね。まさかとは思うけど、それが狙いかい?」

「初耳ですから! ボートに乗るのだって初めてですから」


「む。じゃあ、言わない方がよかったか。見えそうで見えないのも、ちらっと見えちゃうのも、どっちも素敵だよね。知らなければうまく誘導できたかもしれなかったか」

 残念、と真由は言う。


「見えないようにしてくださいよ。ってか、わざと見せつけるつもりなんですよね?」

「ちょっと難しいんだけどなぁ。それに大丈夫だよ。今日はちゃんと穿いてるし、見られても恥ずかしくない、勝負パンツだからね。むしろ見てもらえない方がかわいそうだ」


「いや、誰がかわいそうなんですか。ちょっとは女の子としての恥じらいとかをですね……」

「大輝くんはそういう奥ゆかしい子が好きなのか。女の子がOKサインを出してるのに、鈍感やら奥手やらだと、そのうち愛想尽かされちゃうゾ」


「むしろ真由先輩には愛想を尽かされた方がいいような気がするんですけど」

「つれないなぁ。そういうことを言われるとさすがのボクでもちょっと傷つくんだけど」


 悲しそうな表情を見せる真由に、大輝は言い過ぎたと反省し、すみませんと謝る。

 さっそくボートを借りるのだが、大輝は張り切ってボートの中に先に入り、真由に手を差し伸べる。


「おっ、なかなかわかってるね。うん、紳士だね」

「けっこう揺れるんですね」

「まぁ、水に浮いてるだけだからね。この不安定感を利用して、女の子を惚れさせるんだよ。うまくバランスを崩させて、危ないと言いつつ、抱きしめたりとかね」


「なんかすごく手慣れてませんか」

「そりゃぁ、ボクは百戦錬磨だからね。落とせない女の子はいないんじゃないかなぁ」

 豪語する真由だが、実際に数々の女子を落としてハーレムを作ってきたのだから、言葉には自信が満ちあふれている。


「エスコートしてるつもりが、エスコートされてるみたいなんですけど」

「あ、ごめんネ。今日はせっかく女の子らしいデートが楽しめると期待してたんだった。忘れて忘れて」


 しおらしくなった真由はボートの後ろ側に座る。当然、足は横にうまく折り畳んでスカートを巻き込み、パンツを見せるようなことはなかったのだが。

 大輝はほっとするような残念なような気分で自分も座り、櫂を手に取る。


 実際に手漕ぎのボートに乗るのは初めてだったし、つまりは漕ぐのも初めてなのだが、こんなのどうとでもなると思っていたのはまったくの間違いだった。

 うまく漕ぎ出せたのは最初だけで、すぐにまっすぐ進めなくなり、ぐるぐると回ったり、そもそもちっとも前に進むことすらもできなくなった。


「あ、あれ?」

「あはは、けっこうコツがいるんだよ。アヒルボートとは違うからね。それを知らずに乗ってデートで恥をかく男の子もけっこう多いとかなんとか」

「今、さっそく恥をかいてるんですけど……」


 えいっ、やいっと焦りつつも櫂を動かすのだが、どうやってもうまくいかない。

 こんなに難しいものだとはつゆ知らず、世の男性はどうやってボートを操舵しているのか不思議に思った。


「ちょっと代わろっか。漕ぎ方を教えてあげるから。もうちょい池の中央の方へ行ったらね」

「はい……」

 しゅんとしつつ、大輝はどうにもならずにボートに立って真由と位置を交換する。


「おっっとっとと」

 ボートは当たり前のことながら、水に浮かんでいるのである。二人が立って位置を変えれば、当然、ぐらっと揺れてしまう。そのことすら失念していた大輝はたたらを踏みつつ、真由の方へと倒れ込んでしまう。


「危ない」

 むしろ危なかったのは大輝なのだが、真由を抱きしめてなんとか踏みとどまる。


「この発想はさすがになかったヨ」

 つい思わず抱き締めてしまった真由の肩は想像以上に小さく、スポーツ万能とはいえ、やはり女の子らしい丸みがある。しかも正面同士で抱き合った格好になったため、彼女の柔らかい二つのボールが大輝の胸でぎゅっと潰れる。今まで腕に当たっていたものの感触をフルに味わうことになった。


「すっ、すみません……」

 謝っても大輝が体を離さなかったのは、また慌てて動くことで再びバランスを崩すことを避けるためでもあったが、もうちょっと真由のおっぱいの感触を味わいたかったからでもあった。

 抱きしめられた真由はそっと大輝の背中に手を回し、顔を大輝の胸に埋めた。


「わざとらしいけど、大輝くんから初めてボクを抱きしめてくれたね。だから80点あげる。それに……、うん、やっぱり男の子だよね。胸とかたくましくてドキドキする。ねぇ、大輝くんも、もっと抱きしめてよ」


 ボートの揺れは徐々に収まりつつあったが、大輝は素直に真由肩に置いた手を彼女の背中へと回し、さらに自然と位置を下げてお尻の少し上あたりを撫でた。

 抱き合ってることで、真由の髪の甘い匂いが大輝の鼻孔をくすぐる。

 胸板にあたるおっぱいはもちろん、背中も腰も柔らかくて気持ちいい。


 どうして女の子はこんなに良い匂いがして触り心地も良いのか。

 大輝は思わず、もっともっと真由の体を味わいたいと、さらに手を下へと降ろして彼女のむっちりとしたまん丸なお尻を鷲掴みしたいという衝動にかられてしまった。


「あの、真由先輩……、そろそろヤバいんですけど」

「うん……。ボクのお腹に当たってるネ。これってボクで興奮してくれてるんだよね。いいよ、好きにしても……」


「これ以上するとさすがに我慢できなくなりますから。好きもなにも、こんなところで蛇の生殺しみたいなのはさすがにちょっと」

「焦らすのも、後で盛り上がるための大事なスパイスだよね」


 さすがにこのままだと、大輝はなにをしてしまうか自信がなくなり、慌てて真由を引き離そうとする。

 ぎゅっと抱きしめられて阻止されるかと思いつつも、不思議と真由は素直に解放してくれた。


「あれ?」

「さすがに池の上で青姦ってわけにはいかないもんネ。それとも、お口でシてあげるだけなら、バレないかな」

「しませんから!」


 ボートに座り、真由が船底に隠れるように大輝の股間にうずくまる。

 ズボンのチャックを降ろし、トランクスの穴から窮屈そうな大輝のそれを解放する。

熱くそそり立ったそれを真由は目を丸くしながらも、エッチな笑みを浮かべてそっと手に取り、感触を確かめつつ上下にゆっくりとしごき始める。


 それまでズボンとパンツによって封印されていた強烈なオスの臭いに真由は当てられ、大輝が制止する暇もなく、それをパクっと口にくわえ込んでしまう。

 アイスキャンディーを嘗めるように舌を這わせ、たっぷりと唾液を竿全体に塗り込んでいく。大輝の敏感な場所をくすぐるように真由の舌が蠢き……、 


 と、そんな姿を妄想しつつ、大輝は顔を赤らめて、妄想を振り払うように彼方の木々を見つめた。

 落ち着いたところで場所を入れ替え、真由が櫂を取った。


「ほら、こうやって左右を揃えて水の中にゆっくり沈めて、ぐいっと力を入れて引く。あとは流れに任せて力を抜いて櫂を前に戻して、またぐいっと漕ぐ。まっすぐ進むにはこの繰り返しでいいんだよ」


 とにかく一生懸命、一心不乱に櫂をかき回そうとしていた大輝にとっては、目から鱗のような話しだった。なにを無理矢理動かそうとしていたのか。真由は最初に漕ぐ時以外はほとんど力を入れていなかった。


「ほらね、簡単だから。クロールと一緒だよ。力を入れるのは最初だけ。あとは形だけを意識しながら櫂を回転させていけばいい」

 本当におもしろいように、すいすいと前へと進んで行く。

 真由も調子に乗ってきたのか、笑顔をこぼしながら、ぐいぐいと櫂を漕いでスピードを上げていく。


 大輝は自己嫌悪に陥りつつも感心したが、すぐに真由が元気よく漕いでいるために、スカートの中が丸見えになっていることに気づいた。

 白地に小さなイチゴが山ほど散りばめられ、クロッチの部分がこんもりと盛り上がっている。


 健康的に笑う真由に、そんなにエッチな気分はないのだが、それでもこれまでの経緯から、とても艶めかしく感じられた。

 間近で見えた生パンに、大輝は顔を真っ赤にして慌てて真由を止めた。


「見えてますから、見えてますから!」

 まさか見せつけてきたのではないかと疑ったが、大輝に言われた真由はパッと両手を櫂から離し、スカートを手で押さえた。


「ごっ、ごめん……。見た……よネ?」

 どういうわけか真由も恥じらいを見せ、大輝と同様に顔を真っ赤にして俯いた。


「すっ、すみません。その……」

「あははっ、いつももっとエッチなことで迫ってるのにね。でも心の準備なく不意に見られると、やっぱり恥ずかしいヨ……。いつも女の子同士だから、見えても気にしなかったしサ」


「本当に、僕も不注意でした」

「いいよいいよ、まるっきりボクが悪いんだしさ。でも、パンツを見るために、わざと下手に漕いだんじゃないよね?」


「そっ、そんなことあるわけないじゃないですか!」

「本当かなぁ? ほら、おちんちんを大きくさせてたし」

「時系列が違いますから。替わろうって言ったのはその前でしたよね?」


「どっちでもいいヨ。大輝くんが見たいっていうなら、いつでも見せてあげるから」

「恥じらいはどこに行ったんですか!」


 スカートを再びめくりあげるのかと思えば、しっかりと裾を押さえて、真由はぺろっと舌を出した。

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