閑話19.2 生徒のパンツ事情について(後編)

「パンツの調査はもう十分じゃないですか。いい加減ズボン穿かせてくださいよ」


 パンツ一丁でスースーする状態に、大輝は思わずくしゃみをしそうになった。抵抗できないようにいつの間にか後ろ手で縛られ、椅子に座らせられている。


 今更とはいえ、生徒会室で一人、パンツを丸出しにしている状況というのは羞恥心を刺激するにもほどがある。トランクスならまだよかったかもしれないが、今日はあいにくグレーのボクサーパンツで、もっこりとした膨らみが丸見えだった。


「そんなわけあるまい。むしろここからが本番ではないか」


 何が本番なのか大輝は不安に思わざるをえない。まさかさらにパンツも脱がされるということはなかろうが、ろくなことにならないのは目に見えている。

 と、未来がこっそり生徒会室の鍵をかけた。


「ちょっとなにしてるんですか未来先輩。施錠する必要ないですよね?」

「あらあら、怖がる大輝くんも可愛いのね。大丈夫よ。痛くないから」


「それ絶対に痛いやつじゃないですか」

 怯える大輝に、葵は咳払い一つをして黙らせる。


「何も取って食おうというわけではない。むしろ、一般的にはご褒美に相当すると思うのだが」


 そう言って彼女は恥ずかしそうにパンツの裾をゆっくりとたくしあげた。女子高生らしい肉付きの良いむっちりとした白い太ももに大輝の目は釘付けとなる。視線が吸い寄せられるように動いてしまうのは男として悲しい性だった。とはいえ、彼女の方からたくしあげているのだから、見て悪いというものでもない。


 魅惑の布地に大輝の胸は高鳴ったが、露わになったのは厚手の布地、つまり紺のブルマだった。少しがっかりするものの、それでもたくしあげられたそれは艶めかしく、多くの学校で女子の体操服から廃止になった理由がわかった。むちっとした股間の膨らみと、足の付け根の部分がブルマにしめつけられ、微かに隆起している。見ているだけで思春期女子の色気が臭ってくるようなブルマは、むしろパンツよりエッチに見えなくもなかった。


 ブルマの下に隠されている魅惑のゾーンを想像し、大輝は思わず股間に血が集まってくる感じがした。


「あらあら、大輝くんも素直ね」

「うっ、うむ。予想はしていたが、そんな風に想像通りの反応をされると、やっぱり恥ずかしいな」


 性的な目で大輝に見られ、葵はさらに顔を赤く染めた。スカートの裾から手を離せばそれで済む話だが、どういうわけかブルマを見せつけたまま恥ずかしそうに目を泳がせている。ちらちらと見られている先には、大輝の股間があった。収納しているものの形をくっきりそのまま浮かび上がらせているボクサーパンツだった。


「ふーん、パンツの中でもこんなに大きくなっちゃうのね。もう少しで上からこんにちはしそうなんだけど」

 さすがの未来も頬を赤らめている。興味津々なのは他のメンツと変わらないようだ。


「なんなんですかこれ。僕を辱めて楽しむ会ですか?」

「ブルマも十分、男の目からはエッチに見える、と。ふふふ、校長め。やっぱり私が正しいではないか。翠緑、ちゃんと記録しておけよ」


「では次と行くか。恥ずかしいのはこっちもなのだが、大輝もパンツ一枚だし、これはしょうがないな」

 そう言って、葵はブルマに手をかける。見えてもいいはずのブルマがくしゃくしゃになりながら彼女の太ももを滑り降りる。再びスカートに隠された花園を想像し、大輝は目を血走らせる。


 脱いだブルマを手に取り、葵は艶めかしい笑みを浮かべてそれを放り投げた。ブルマが放物線を描きながら宙を舞い、大輝の頭に乗る。雌臭い甘い香りが鼻孔を刺激する。


「鼻の下をだらしなく伸ばしている男の前でスカートをたくし上げるのは癪だが、そこまで喜んでもらえるなら悪い感じはしないな」


 そう言って葵は再びスカートの裾をゆっくりとたくし上げる。

 さっきと同じように白い太ももが露わになり、大輝の視線は釘付けになる。さらにスカートがめくれ上がると、今度は青と白の縞々パンツがお目見えした。


 こんもりとした恥丘をぴったりと覆うストライプの布地が眩しく見える。このまま飛び跳ねてそこに顔から飛び込みたい、ぐりぐりと鼻先を押しつけて匂いを嗅ぎたいと言わんばかりにそこを凝視する。


「ふふっ、こうも予想通りの反応をされると、縞パン好きとわかっていたとはいえ、嬉しく感じるな。さっきよりも股間の膨らみが大きく見えるぞ」


 嗜虐的な目線で葵は大輝の股間を見る。羞恥に塗れていても唇は驚喜で大きく歪んでいる。焦らすようにたっぷりと下着を見せつけ、大輝が飛びかかりそうになる瞬間にスカートから手を離した。


「これも好反応ではないか。明日香も興味深そうにチラチラと見ているぞ」

 辱められているのはいったいどちらか大輝はわからなくなる。さりげなくもしっかりと凝視してくる明日香にも、大輝は羞恥を覚えざるを得ない。


「じゃあ、次に行くか。先が長いからちゃっちゃと換えていかないとな」


 そう言って葵は再びスカートの中に手を入れる。もぞもぞと手を下ろすと、滑り落ちるように縞パンが太ももを通る。片足ずつ上げてパンツを脱ぐと、その瞬間、わずかにスカートの裾がめくれ上がって見えてはいけないものが見えそうになる。今度こそ、正真正銘下は穿いてないに違いない。


 大輝はごくりと唾を飲んでいると、再び脱ぎ立てのパンツが宙を舞い彼の頭に被さる。仄かに薫る甘い匂いに大輝の息子はあらぶった。


 絶句している大輝をよそに、葵はバッグから次の下着を取り出す。今度は純白の綿パンツだった。厚手のそれはやや野暮ったくも感じるが、それは些末なことだった。白いパンツが彼女の大事な部分を包む瞬間を想像し、大輝は何もしてないのに達しそうになる。


 悪戯っぽい艶めかしい笑みを浮かべながら、葵はパンツをゆっくりと穿いた。スカートの中でパンツをきゅっとお尻に納める。ギリギリまでまくれ上がったスカートは、彼女のむっちりとした太ももの付け根まで丸見えにする。


「種明かしされていると、興奮しないなんてオチもなかろうか」

 パンツを穿いた上で、スカートをたくし上げて開帳する。三度目ともなって葵はやや興奮しているのか、息が荒い。こんもりとした丘を包む布に、大輝はまたもや目が釘付けになった。


 こうやって次々にパンツを交換しては披露していくことを繰り返しているうちに、葵も呆れて疑問を呈する。


「なんでこうも次から次へと興奮しているんだ。そのセンサー壊れてるんじゃないのか?」

「そんなの知りませんよ。だいたい、女の子のパンツを見れて嬉しくない男なんていないわけないじゃないですか」


 大輝は正論で返すものの、あくまでもこれは調査なのだ。資料の信憑性という根本的な問題に突き当たり、葵は唸った。


「ううむ。被験者を代えるわけにはいかないから、対象を変えてみるか。ええい、明日香もパンツを見せてやれ」

「ええっ? な、なんでわたしがするんですか? 話が違いますよっ」


 これまで大輝の股間の膨らみを見て興奮していた明日香も、いきなり自分がパンツを見せろと言われて耳まで顔を赤くして恥ずかしがる。


「パンツの一枚や二枚どうだというのだ。ただの布ではないか。それに、妄想の中では大輝にパンツを見せたり、それよりもっとすごいことを想像しているんじゃないのか」

「もっ、もももっ、妄想なんかしてませんっ」


 説得力がまるっきり欠ける叫びをしつつ、明日香はスカートの裾を抑える。妄想中の彼女がいったいどんなことをしているのか気になって、大輝も頬を赤らめつつ、彼女の艶態を頭に浮かべる。


「ほらほら、明日香ちゃん。ごにょごにょっと」

 そんななか、未来が人の悪い笑みを浮かべて明日香に囁きかけると、彼女は一変してやる気を見せる。


「ううっ、恥ずかしいけどやらせてください。大輝に、パンツを見せればいいんですよね。ちょっとだけですよ?」


 何を言ったのかわからない大輝は不思議に思うものの、明日香のパンツが見られるなら大歓迎だった。そのままスカートをめくり上げてくれるのかと、ついつい彼女の肉付きの良い太ももに視線が吸い寄せられる。


「大輝もあんまりジロジロ見ないで。恥ずかしいんだから」

「ごっ、ごめん。でも見せるのがミッションなんでしょ?」

「そうだけど……まだダメだからっ」


 パンツを見せることになったとはいえ、踏ん切りがつかない明日香は大きなため息をついて逡巡している。その様子に、葵はさらに追い打ちをかけるようなことを言った。


「ほら、さっさとパンツを脱がないか。大輝に見せるのはこっちだぞ」

 そう言って差し出したのは、お尻にクマの顔が描かれた俗に言うクマさんパンツだった。


「なんでこんな子供っぽいのをはかなきゃいけないんですかっ」

 叫びつつも、明日香はパンツをひったくるように受け取り、大輝に見られるのは嫌だと手の中でくしゃくしゃに丸めた。


「どのパンツなら大輝が興奮するか調べているのだから当然だろう。それとも、こっちの方がいいか?」

 悪魔の笑みを浮かべつつ葵が提示したのは、逆に大人っぽい下着だった。

「これ、ほとんど紐じゃないですかっ。こんなの穿けませんっ」


 あやとりでもするかのように広げられたパンツは、明日香の言う通り大事なところを隠す布がかろうじてあるだけで、ほとんど紐みたいなものだった。セクシーと言われればその通りだが、さすがに彼女らの年代の娘が穿くには過激すぎる。

「はわわわわ……」


 広げられた紐パンに明日香が絶句し、これまで素知らぬ顔をしていた未来も、さすがにエッチすぎる下着に羞恥を覚えている。葵のみが平然としていたが、まさかこれも自分で穿くために用意したものなのだろうか。


「ほれ、どっちにする? 好きな方を選ばせてやるぞ。それとも、両方穿いて大輝を誘惑してみるか?」

 究極の選択に、明日香が選んだのはクマさんパンツの方だった。


 観念してスカートの中に手を入れ、穿いているパンツを脱ぐ。脱ぎたてほかほかの下着が彼女の太ももを滑り落ちる。できるだけ急いで脱ぎたい心境ながらも、スカートが短すぎるため慌てて足を上げれば中身が見えてしまう危険もある。涙目になりながらも、純白の可愛い下着を脱ぐと、彼女は急いでポケットの中に押し込んだ。


 生替え中の、スカートの下に何も穿いてない姿を大輝はついつい妄想してしまう。明日香のまん丸のお尻に、先ほどの紐パンを穿いた姿を妄想する。やわ肉に食い込む紐に、思わず大輝は鼻血が出そうになる。


 大きなため息をついて、明日香はクマさんパンツを穿く。一瞬、露わになる太ももに大輝は眼福を覚えるが、真の眼福はここからとも言えた。


「さぁ、ボクサーパンツ一枚という間抜けな大輝にお気に入りのクマさんパンツを見せてやるがいい」

「間抜けって言わないでくださいよ。さっきから考えないようにしているんですから」


 葵の茶々が入って、ようやく明日香は踏ん切りをつけてスカートをめくり上げた。こんもりとした恥丘を包んだ厚手の布地がお目見えする。注目のクマさんは、前からでは見えない。


 恥ずかしくて卒倒しそうなほど顔を赤くしている明日香は、涙を目尻に貯めて恥ずかしそうに後ろを向く。前を見られるよりは後ろの方がマシとの思いだろうが、彼女のお尻を飾るクマが、彼女のお尻の丸みに沿って歪んでいることで、笑っているように見える。


「あんまり見ないで……」

 見るなと言われても、目が釘付けになってしまうのは男の悲しい性だ。同時に、生徒会室に黄色い悲鳴が上がる。


「大輝っ、パンツから大事なものがはみ出ているではないかっ。これは反則だっ。それ以上に、しまパンが一番好きじゃなかったのか?」


 未来と翠緑が目を丸くして大輝のそれを凝視している。葵もなんだかんだ言いながらも嬉しそうに見ている。明日香も何事かと振り向いたため、パンツからこんにちはしているアレを不幸ながら全員に見られてしまったことになる。


「ちょっと、あんまりジロジロ見ないでくださいっ」

 興奮を収めればパンツの中に戻るはずだが、極限状況でパニック状態になっているためか、なかなか元には戻らなかった。それどころか、赤黒い中分けの肉塊の先端から、うれし涙があふれ出ている。

 とんだどんでん返しに、大輝は心の中で涙するほかなかった。


 今回のオチ。というか、後日談。報告書は無事校長に提出され、校則の追加は避けられた。それもなにも、参考資料としてつけられた大輝のボクサーパンツ姿をこの年で独身である校長が気に入ったからだという。


 しばらく葵のお気に入りパンツがクマさんになったというのだが、残念なことに大輝がそれを目にする瞬間は訪れなかった。

 

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