閑話22.3 背中合わせのお風呂
「はっくしょん!」
体の冷えを覚えて大輝はくしゃみをした。
湯気が蔓延している浴室とはいえ、素っ裸ではさすがに冷えを覚える。先に入っていたであろう明日香の体からは湯気が立ち上っている。
「お風呂、入ろっか」
明日香は大輝の下半身から視線を移して笑顔で言った。
湯気でよく見えないから安心したのか、それとも今更、大輝に裸を見られてもどうかと思ったのかは定かではない。素っ裸のままで戸惑う大輝の背中を押して浴槽まで誘う。
背を取られているのなら、明日香の裸は見えない。安心と言えば安心だが、つい振り向いてじっくりと堪能してみたい欲望も大輝にはある。
ドキドキして猛る下半身も、年頃の男子ならしょうがないが、これまた気恥ずかしい。
明日香に促されるまま湯に足を入れる。
家族風呂というだけあって、大人が三人くらい入るのがやっとの大きさだ。
檜風呂の良い香りと、透明な泉質の湯が体に染み渡る。
そういえば、体に湯を掛けてないなと気づいたのは、肩まで浸かってからだった。
ぴちょんと明日香の足が湯に入った音がする。
振り返れば彼女の裸が見えるというのに、大輝はどうしていいのかわからず、ただただ硬直していた。
「大輝、ドキドキしてる?」
ふにょんとした柔らかいものが背中に当たった。同時に、胸をまさぐられるように明日香に抱きしめられる。ドッドッっと太鼓を打つような音が伝わってくる。
「大輝も心臓すごいことになってるね。わたしも破裂しそう」
背中から伝わる音は、自分のものに負けず劣らず大きく、落ち着いた声の割には明日香が緊張していることに気づかされた。
「ねぇ、せっかく二人っきりでお風呂に入ってるんだし、顔を合わせておしゃべりしようよ」
振り返れば明日香の裸が丸見えだからこそ背を向けていた。真っ赤に染まった顔を見られるのが恥ずかしいという理由もあった。
「いいの?」
「うん……。大輝にはいろいろ恥ずかしいことされちゃったし、今更でしょ」
お互いに声は震えていた。許可が出たとはいえ、大輝はすぐに振り向くことができなかった。明日香がぎゅっと抱きしめてくる。促すような仕草に、大輝は心を落ち着けた。
「そんなに抱きつかれたら振り返れないよ?」
「うん、やっぱりちょっと恥ずかしい」
むしろ密着している分、背中で押しつぶされるおっぱいの感触に大輝は気が気ではなかった。声は優しくても、息子は狼のようにあらぶっている。むしろ振り返ればそのまま押し倒してしまいかねない気分だった。
明日香の腕を振り払って向き直る度胸もない。少なくとも今すぐには。彼女の腕の力が緩むまで大輝は心を落ち着ける。
「いい……よ……」
拘束が解かれてなお、大輝はすぐに振り向けなかった。ごくりと唾を飲んで、ゆっくりと向き直る。
目の前には明日香の紅潮した頬と、潤んだ瞳、そして熱い吐息が漏れるぷっくりとした唇があった。
(近い近い近い……)
そのままキスしてしまうのではないかという近さに明日香がいた。
大輝は目を見開いて硬直する。せっかく落ち着いた心拍は再びレッドゾーンに突入している。バクバクと波打つ心臓の鼓動がお湯にまで伝わりそうだった。
目と目が合ってしまったのが恥ずかしくて俯くと、二つのスイカが湯に浮かんでいる。ついさっきまで背中に当たっていた暴力的な膨らみがぽよぽよと漂っている。水面下にある頂には、ペールオーキッドピンクのぷっくりとした輪っかとささやかな突起が見える。湯の色が無色透明なことが幸いした。
一方で、ついつい見てしまいたくなる明日香の柔らかそうなお腹や、その下の女の子の大事な部分は見事に胸に隠されていてこの位置からは見えない。
明日香の胸が大輝から丸見えだということは、当然、明日香から大輝のものも丸見えというわけで。
大輝が視線を戻すと、明日香も俯いて顔を真っ赤にしている。泳ぐ目線のその先には、大輝のいきり立つアレがある。
この状況で思春期の男子なら仕方がないことだし、むしろ健全とは言えるが、さすがに興奮したところを見られるのは恥ずかしいにもほどがあった。
あまりにもジロジロ見るのは悪いと思ったのか、明日香も顔を上げる。当然、二人とも再び目が合ってしまう。
お互いの心の中を見透かされたような気持ちに、二人ともはにかむ。
もうどうしようもないほど素っ裸な状況に、大輝はそのまま明日香を押し倒したい気分になる。目の前には裸の女の子がいて、手を伸ばせばさっきまで背中で味わっていた暴力的な柔らかさのおっぱいを好き放題できる。ぷっくりとしてむしゃぶりつきたくなる唇も。
そんな大輝の気持ちが伝わったのか、明日香は同意するようにゆっくりと目を閉じた。
「……………」
大輝も目を閉じて、あとは顔を近づけるだけだった。ぷにっとした感触が唇に伝わる。ただ触れるだけの初心者の口づけだったが、触れ合った瞬間に一面の野原に花が咲き広がるような感動がそこにあった。
呼吸を止めていたため、息苦しくなって一度唇を離す。
酸素を吸って吐き出すと、明日香も同じタイミングで口を開いた。吐息が混じり合って互いの肺へと吸い込まれていく。明日香の息が、大輝の息が、互いの全身の隅々まで染み渡っていく。
「もっと……」
おねだりする明日香に、今度は力強く口づけする大輝だった。触れるだけのキスから、明日香の感触を味わうためにぎゅっと唇を押しつけるようなキスに変わる。
「もっと……もっと……」
今度はむしゃぶりつくようにキスをする。自然と唇が開いて互いの舌が相手を求めて伸びてくる。
舌と舌とが絡み合った瞬間は、脳に電気が走るような快感を覚えた。もっと、もっとしたい。もっと気持ちよくないたい。その一心で、貪るように唇を重ね続ける。
息継ぎをするために唇を離すと、目と目が合う。とろけるような明日香の瞳の中に、大輝の真っ赤になった顔が映る。
「もっとして……大輝……好きぃ……」
とろけすぎてろれつが回らない明日香の舌に、大輝は再びむしゃぶりついた。
このまま押し倒してしまいたい衝動に大輝はかられる。いきり立つ息子は今すぐにでも明日香の中に入って暴れ回りたいと、先端から涎を垂らしている。
もう我慢できなくなった瞬間に、明日香の反応は弱くなっているのに気づいた。
お湯の中でずっとイチャイチャしていたため、湯あたりしてしまっていた。
「明日香、大丈夫?」
「らいじょうぶやよ……。りゃいきがいっぱいいる。じゃあひとりくりゃいわたしぃがもらってもいいよにぇ……」
ゆでだこ寸前の明日香は、ぐったりと体を絡ませるように大輝に抱きついてくる。大輝は柔らかさを覚えるものの、それどころではないのは当然だった。
慌てて明日香を抱きかかえるように湯から上がる。温度を下げたシャワーで彼女の体を冷ます。乾きを欲したのか、小さな舌を伸ばして唇に滴る水を舐め取っている。
あれほど見たかった明日香の大事な場所も丸見えだったが、それどころではない大輝は気づかなかった。
このままふらつく明日香を脱衣所に連れて行き、バスタオルで体を拭いてやり浴衣を羽織らせる。自分も浴衣に着替え、明日香を横たわらせるべく、彼女の部屋へと連れて行った。
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