閑話5.8 無意識のうちのハプニング

 トイレで便器を妊娠させるほど処理した後に、大輝は明日香の部屋に戻った。

 時間にしてどれくらいだたのだろう。それほど長いはずうもないが、五分で済んだはずもない。一発目はそれこそ世界記録で出たわけだが。


 明日香も一人でしていたのかと気にはなったが、さすがに尋ねるわけにもいかない。

 なんとなく気まずい雰囲気ではあったが、とりあえずすっきりしこともあって、大輝は軽く笑って再びベッドの上に腰掛けた。


『ぁん……ぃぃっ……もっと……もっとぉ……』

 相変わらず隣の部屋からは艶めかしい声が漏れてくる。賢者モードになった大輝は苦笑しつつ、明日香と顔を見合わせる。


「もう付き合いきれないし、寝ちゃおうっか」

 時間はまだ十時を回ったところだが、隣が終わるまで待っていたらまたシたくなってしまう。布団を被って寝てしまうのが一番だった。


「大輝の顔、いつもと同じに戻ってる」

「えっ、ああっ、まぁ、すっきりしたし? ってか、そんなすごい顔してた?」


「うん……。飢えた狼みたいだった。このまま食べられちゃうのかなって思ってた……」

「食べないって」


「でも……そういうのもちょっといいかなって期待してたんだけど……」

「えっ、なんだって?」

 明日香がぼそっとつぶやいた声は大輝の耳までは届かなかった。


「ううん、なんでもない。ねっ、そろそろ寝よ。疲れちゃったし」

 なにに疲れたのかといえば、いろいろあっただろうし、そもそも互いに疲労するようなことをしたことは確かだった。ベッドに横になって休みたいというのは、普通の感情だった。


 賢者モードになった大輝は明日香に促されるまま、同じ布団の中に入った。

 とはいえ、互いに遠慮や緊張というものは残ったままで、布団を被っても出来る限り端と端に陣取っていたのだが。


「一緒の布団で寝るのって不思議な感じ」

「不思議っていうか、普通はないと思うんだけど」

「そうだよね。幼稚園の頃とかならともかく。って、幼稚園の頃も男の子と一緒の布団で寝たことなんてなかったよ」


 恋人か夫婦でなければ、それこそ漫画の世界でしかないような話だ。年頃の男女が同じ布団で一夜をともにする。何かがあってもおかしくはないし、むしろなにもなかったということのほうがおかしいのだろう。


 とはいえ二人とも緊張してしまってやましいことなどとても考えられなかった。隣から絶え間なく嬌声が漏れ聞こえてきてもだ。


「うるさいからいつもこうしてるの」

 明日香は小さく笑って布団を頭まで被った。つまり大輝の顔も布団の中に入ったということだ。


「あとは聞こえないフリして目をつぶって寝ちゃうんだけど」

 真っ暗な布団の中で明日香の声と暖かい吐息だけが伝わってくる。

 狭い空間の中でひそひそと話す様は何か二人だけの秘密を共有しているような風があり、大輝は少しだけ嬉しくなった。


「でも、大輝と一緒だと緊張して眠れないかも」

「僕もそんな感じだよ」


 互いに苦笑しあうのがおかしくて微笑んだ。

 実際に、真っ暗な中とはいえ、手を伸ばせば届く位置に女の子がいるというのは気が気ではなかった。


 賢者モードとはいえ、触ろうと思えば柔らかい頬でもぷにっとした唇でも、はたまたマシュマロのようなおっぱいも自由にできるのだ。いきなり触れば驚かれるだろうし、拒絶されて布団から叩き出されるリスクもあったが、ちょっとだけなら、一回だけならしてみたいという誘惑が沸き上がってくる。


「ねぇ、胸触ってみる?」

 と、幻聴ではないかと思えるような言葉が大輝の耳に飛び込んでくる。


「えっ、どういうこと?」

「ドキドキしすぎて心臓の鼓動がすごいことになってるの。大輝にも伝わるかなって……」


「そんなことしたら、僕の心臓だって破裂しちゃうよ」

「大輝もドキドキしてる?」


「うっ……うん、もちろん……」

「じゃあ触ってみようかな。いいよね……?」


 大輝は返事をせずにいると、明日香は了解と受け取って手を伸ばしてきた。

 ぴとっと彼女の手が大輝の胸に当たる。心臓の位置を探るために優しく撫でられるのが気持ちよくて、ついもっとしてほしいと思ってしまう。


「ここかな。うわっ、ほんとだ。すっごくバクバク言ってる……。これじゃ眠れないよね」

 明日香に触られて余計に胸は高鳴ったが、あえて言うまでもない。


「ねぇ、ドキドキして眠れないよ……。大輝の手を握ってもいい?」

「うん……」


 手を握ったくらいでドキドキが収まるとも思えなかったが、とりあえず大輝は頷いた。

 暗闇の中、明日香の手の柔らかさが伝わってくる。暖かいぬくもりとすべすべとした感触に、女の子の手を握るだけでも気持ちいいと実感する。




 緊張して眠れそうにないと言っても、いつの間にか眠っていたようだった。

 大輝は両手に極上のクッションを握っている感触を覚えながら目覚めた。


 自分のベッドにそんな上等なものがあったかと疑問に思いながらも、あまりにも心地よい感触に手を何度かにぎにぎさせる。

 ウォーターベッドのようなぽにょぽにょとした感触と人肌の暖かさに、大輝は思わず顔を近づけて頬ずりした。

 顔に沈み込む肉感に、大輝はようやく我に返った。


 クッションだと思っていたそれは明日香のおっぱいだった。

 なんで明日香が自分のベッドに? と、一瞬パニック状態に陥るものの、そもそもここは自分の部屋ではなく、明日香の部屋に泊めてもらったことを思い出す。


 顔はすぐに離せたものの、両手は明日香の左右のおっぱいを握りしめたままだった。磁石で張り付いているかのように離せそうにない。


 指先から伝わってくる感触は白子のようなふわふわとしたもので、指先にかかっている力の分だけ、乳肉に沈み込んでいる。

 普段、何気なく当たる明日香の胸の柔らかさに大輝はドギマギしっぱなしだったが、ノーブラでパジャマ一枚で触るおっぱいは、ブラというものがどれだけ硬いのかよくわかるものだった。


 すぐ手をどかさなければと思う反面、明日香はまだ寝息をたてていて、起きる気配はない。どうせならこのままもう少しおっぱいの感触を堪能してみたかった。

 気づかれないように、気づかれないように、大輝は慎重に指先に力を込める。


 大輝の指先がおっぱいに沈み込むたびに明日香は小さく吐息を漏らすものの、目を開ける気配はない。

 寝ている時にこんないたずら紛いなことをしてはいけないと頭では思うのだが、指先のほうが言うことを聞いてくれない。


 普段から寝起きが良い方ではないが、こんなことがあれば一発で頭はエンジン全開になる。

 そうなったところで大輝は自分の股間の違和感に気づいた。


 朝だから勃起しているのは不思議ではない。いつもと違うのは、妙に股間も気持ちいいということだった。

 下を見やれば、どういうわけか明日香の柔らかい手が大輝の股間に添えられていた。


 どうしてこんなことになっているのか。わからないが、推測すれば、寝ているうちに無意識に触ってしまったのだろう。竿と玉を包み込むように握っていて、眠りながらも小刻みに上下にさすってくれていた。


(どうしてこんなことに?)

 大輝は焦るものの、寝ている時のことなど説明できるはずもない。

 明日香が目覚めたら大変なことになりそうだと不安になるものの、勃起を収めることも彼女の手をうまくどかしてあげることもできないでいる。


 どうせならもう少し気持ちいい思いをおしていたかったが、無意識下で触られている程度の動きでは達することもできない。まぁ、そんなことになればパンツを汚してしまって大変なのだが。


 大輝の手の方も明日香のおっぱいから離せずにいる。さすがに寝起きみたいに顔をおっぱいに埋めるのは躊躇するものの、今既に触ってしまっている手を離すのはできれるだけ後にしたかった。


 上と下と、起きている人と眠っている人とで違いはあるものの、互いに敏感な場所を触って刺激しあっている。

 大輝は明日香のおっぱいの大きさと感触を確かめていると、手の平に固い突起が当たるのに気づいた。


 朝だから勃起してるということはないだろう。大輝が胸を揉んでいることでしこってしまったに違いない。睡眠中とはいえ体は快感に対して素直な反応を見せていることに驚かざるをえない。


 一点に狙いを定めて指をさすると、コリュっとした感触が伝わってくる。同時に明日香が小さく「あっ」と熱い吐息に似た声を漏らし、大輝は血の気が引いた思いになる。


 明日香の目が開かないことに安堵をして、再び指を左右にスライドさせる。

 指が障害物に当たるたびに明日香はピクッと体を震わせ、心なしか大輝の股間を握る手が気持ちいいところを刺激する。


 このままではいけない、早くやめないとと思いつつも、大輝はスリルと興奮に満ちた行為をやめられずにいた。

 どれくらいしていたのかはわからないが、いつの間にか明日香と目が合っていたことに気づく。


 大輝が胸を揉んでいる状況に彼女は驚いたように目を見開いている。大輝も硬直するが、おっぱいにかかった手は彼女の乳肉に沈み込んだままの状態だった。


「えっと……大輝……おはよ?」

 それでも明日香は優しく微笑むだけで、悲鳴をげたりはしなかった。むしろ自分が触っている硬いモノの感触に驚き、大輝の手とを交互に見てどう反応していいか困っているようにも見えた。


「えっと……その……これは違うんだ……。寝てることをいいことにってわけじゃなくて、寝てるうちに無意識のうちに手が当たってて……。明日香の手も僕のに当たってて……。おっきくなってるのも、興奮してってわけじゃなくて、朝勃ちっていうただの生理現象だから。それだけなんだ」


 硬直しているからとはいえ、明日香のおっぱいを揉んだまま弁解するのにどれだけの説得力があっただろう。まず手を離せというところだが、あまりにも気持ちよくて手が強力な磁石にでもなったかのようにくっついて離せそうにない。


「おっ、男の子ってこんなにカチコチになるんだ……。普段はすごく柔らかいんだよね? って、なに言ってるんだろ……。あの……大輝……、おっきくなっちゃったら出さないとダメなんだよね? 触っちゃった責任もあるし、もっとシてあげよっか?」

 頬を真っ赤に染めながら明日香は言った。


「違うからっ、それ誤解だからっ、別にほっといても大丈夫だし、もしシないとダメなら世の男性がみんな朝から処理しなきゃならないってことになっちゃうでしょ」


「みんなシてるんじゃないの?」

「そんなことになってるなら大変だから。ほっとけばそのうち収まるから」

 大輝ははねのけるように飛び起きてトイレに駆け込んだ。

 その後何をしたのかまでは言うまでもない。

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