第3話 スカート丈短すぎませんか(前編)

「明日の朝、六時に校門前へ集合だからな」

 突然のあおいの命令に大輝だいきはいつもながら驚いた。


「返事がないな。まさか起きられないとか言うんじゃないだろうな。

 生徒会役員たるもの、早寝はともかく早起き一つできなくてどうする」

「いきなり朝六時はつらいですけど、いきなりのいきなりでびっくりしてるんですよ。まさか朝練じゃないですし、学園祭の準備とかじゃないですよね」


「抜き打ちであることに変わりはないが、明日の朝に服装検査を行うのだ。本来なら風紀委員の仕事だろうが、我が校には風紀委員は存在しないいからな。

 ちなみに、生活指導担当の教諭もいないのだ。だからこそ、時折、我々が服装検査をしなければならないのだ」


 風紀委員の不在はともかく、生活指導の先生もいないとは初耳だった。

 服装検査は生徒会の仕事なのかと意外に思う反面、無用な教師の介入を避けるために生徒会が率先して行っているだけかもしれない。


「服装検査なんてやってたんですか。僕は知りませんでしたよ」

「今年度に入ってから二回目なんだがな。まぁ、男子にはあまり関係のない話だ。気づかなかったこともあるだろう。

 服装検査といっても、スカートの長さをチェックするだけだからな」


「ああ、確かに女子高校生のスカートって短いですよね。

 この学校はみんな短いし、そもそも会長からしてミニスカじゃないですか」


 今更と言えば今更だが、本当に本校の女子のスカート丈は短い。

 どうしてこんなに短いのか大輝は疑問でもあったが、最近の女子高生というものはこういうものだと思い込んでもいた。

 実際に校内でもちらほらとスカートの中が見える事故が起きていてなかなか美味しい思いをしていたりもする。

 幸か不幸か生徒会の面々のパンツはまだ見えていないのだが。


 改めて大輝は葵のおみ足を眺めた。

 すらっとした足のシルエットと、細身とはいえ年頃の少女らしく丸みを帯びた太股が大胆にも衆目にさらけ出されている。

 その太股の半分をわずかに隠すだけの短いスカートは彼女が動く度にひらひらと揺れ、太股の全貌をさらすとともにパンツまで見えるのではないかと期待したくなる。


 そんな大輝の視線に気づいたのか、葵は頬を膨らませて大輝をにらみつけ、びしっと指を突きつけて言った。


「ジロジロと見るな、いやらしい。言っておくがこれが我が校の校則に則った正しいスカート丈なのだからな」

「そんなバカなことがありますか」


 間髪入れない突っ込みも予測していたのか、葵はスカートから生徒手帳を取り出し、ぱっと開いて服装に関する規定のページを大輝に突きつけた。


「ほれ、ちゃんと読んでみろ。乃木坂高校校則第五条一項付則、女子の制服のスカート丈は膝上二十五センチを基準とし、それ以上長いものを認めない」


 校則を全て暗記でもしているのか手帳を見もせずに葵の口から流暢りゅうちょうに出てくるものの、その内容はとても校則とは思えない常軌じょうきいっしたものだった。

 しかし、生徒手帳にもしっかりとその言葉のままの文字が記されており、大輝は唖然あぜんとするとともに、自分の生徒手帳を取り出して何かの間違いでないことを確認した。


「まったく、そこまで疑り深いのか。まあいい、どちらにせよ校則であることに変わりはないのだからな」

 堂々と真っ平らな胸を張る葵に大輝は恐れつつ、絞り出すように声を出した。

「会長、なんて恐ろしい校則を作るんですか。権力の濫用らんようにもほどがありますよ」


「馬鹿者。いくら私でも校則を好き勝手変えられるわけがなかろう。

 というかだな、乃木坂高校の校則は改正が無茶苦茶難しいんだぞ。その硬さは日本国憲法よりもはるか上だ。

 たとえ憲法九条が改正される日が来ようとも、我が校の校則が改正される日は来ないだろう」


 戦後、一度も一字一句たりとも変えることができていない日本国憲法よりも厳しいなどという、とても想像もつかない世界の話で比較されて大輝はおののいた。


「ど、どうしてそんな大変な校則にそんなおかしな校則が入ってるんですか」


 もっともな疑問に、葵はしょうもない答えを返す。

「校則を変えるのはやたらと厳しいのだが、一つだけ盲点があってな。新しく付け足す場合は校長権限でなんとかなるのだ」


「とんでもない大穴じゃないですか」

「まったくだ。当時も当然、大騒ぎになってな。

 今後も校長の横暴を許さないように当時の生徒会が次々と新校則を付け加え、同時に校長も生徒会に好き勝手させないように対抗して新校則を次々と打ち出したのだ。

 おかげで今ではほとんど追加する余地はないし、たまにあっても紳士協定が結ばれたことで校長と生徒会との協議の上で決められている。

 たとえば携帯電話の持ち込み規定とかだな。

 ちなみに男子の細かい制服の規定もないから付け加えようと思えば付け加えられるのだが、まだ誰もその提案をしてこないな」


「話を戻しますけど、どうしてそんな短いスカート丈が校則になったんですか」

 もっともな疑問に葵は大きく頷いて答えた。

「一九八〇年代だったか、スケバンが流行った頃があっただろ。

 本校でも女子がスカート丈をやたらと長くするのが流行ってだな。

 先々代の校長が主導し、生活指導の先生方と本校の生徒がスカート丈で揉めに揉めたのだ。

 当時の生徒会は生徒側の立場に立って校長とトップ会談を持ってだな。

 不幸なことにそこで生徒会長が校長をやりこめてしまったそうだ。

 ぶち切れた校長が強権を発動してセーラー服からブレザーに制服を変更し、ついでにスカート丈の規定も付け加えてしまったのだ」


「校長乱心にもほどがありますね」


「ブレザー自体は当時、新進気鋭のデザイナーに依頼したことで可愛いと評判になったのだがな。

 長さ的にも短い方が似合うデザインなのだろう。

 スカートの短さを規定するのも男の校長では不可能だっただろうし、女子校だったことも幸いした。

 校長が教育者として立派で各方面にかなり力を持っていたのも大きかった。

 むしろ女子らしさを磨くのにちょうどいいスカートの長さなのではないかと評判になったくらいだ」


「いやぁ、それはちょっとおかしいですよ」


「いや、そうでもないのだ。

 お嬢様学校とはいえ、女子だけの環境だと意外にだらしなくなるものでな。

 スカート丈が長ければ平気でドタバタ走り回るし、飛び跳ねるし、座る時だって股を拡げたりといろいろやり放題だ。

 これがちょっと派手に動けばパンツが見えそうなほどのスカート丈になることで、立ち居振る舞いに気をつけるようになる。

 実際にこの校則が導入されて生徒はよりおしとやかになり、我が校の評判は上がったのだ」


「酷い怪我の功名もあったものですね」


「ともあれ、学校側が全生徒のブレザー代を負担してまで強行したことで生徒は従わざるをえなくてな。

 それでも抵抗した数名は最終的に転校に追い込まれた。

 これはどちらかというと後日談で、間に挟まる話もあってな。

 校長の横暴に生徒会は全校生徒の先頭に立って抵抗を試みたんだ。

 どちらかというとロングスカートも生徒の個性を尊重するということで消極的賛成だったのだが、さすがに強制的にミニスカにされてはほぼ全ての生徒が抗議をしてだな。

 せめて膝上一〇センチ程度にしてくれと全校生徒出決起集会を開いたりしたものだ。

 先生方の中でもさすがにこれはと生徒側に同情してくれてだな。

 ミニスカ校則も比較的あっさりと覆るのではないかと期待されたのだが、ここで本校の校則改正の難しさが立ちはだかったのだ。

 具体的な手続きはこうだ。

 校則改正を行う場合は生徒会で発議の決議を取った上で生徒集会にかけ、そこで出席者の三分の二の賛成を得た上で職員会議にかけられる。

 職員会議で過半数の賛成を得られれば校長の決裁を受けた上で今度はPTA集会にかけられるのだ。

 ついでに言っておくと、学校側発議の校則改正は校長の決裁を受けた上で生徒会長がオブザーバーとして参加する職員会議にかけられる。

 生徒会長には議決権はないが、発言権はある。

 そこで先生方の総意を取り付けると初めて生徒会で改正の発議が行われ、全校生徒の三分の二の反対がなければ可決される」


「あの、学校側が主導しても、生徒が主導しても互いに改正を認めることって難しいんじゃないんですか?」


 大輝の素朴な疑問に葵は力強く頷いた。

「そうだ。一応、学校側も生徒会側も互いの会議や集会でどうやって決を得るかが最初の鍵になる。

 一応、いろいろと根回しは行うのだよ。部活の予算の権限は生徒会側にあるから、そちらを軸に顧問の先生方の協力を取り付けたりだね。

 逆に学校側は成績優秀な生徒や部活に所属している生徒に圧力をかけて三分の二ラインを下回るようにする。

 まったくもって醜いものだが、そうやって過去に何度も闘争が繰り広げられ、その都度、結果的に失敗に終わっている。

 まぁ、ここまで改正案を通すことは歴史上何度もあったのだがね。

 本校の校則が九条より硬いと言われるのは、次の条項によるものなのだよ。

 学校側、生徒側の手続きを経て、最後にPTA集会にかけられる。

 ここで全父兄の三分の二の出席の上、過半数の賛成をもって初めて校則は改正される。

 はっきり言って仕事だのなんだので全父兄の三分の二が集まるなんてよほどなことがない限りありえない。中学や小学校ならまだしもな。

 高校ともなると親も放任状態であるし、いちいち学校のことに関わってこない。PTA会長が声をかけたところでこればかりはどうにもならん。

 先のスカート丈問題も、最後に三分の二の父兄を集められずに廃案となった。

 生徒が各自、自分の親に出席するよう頼み込んだのだが……。

 議題が議題だけに自分くらいは欠席しても大丈夫だろと考えた親が多くてな。

 わずかに定数に足らず、その責任をとって当時の会長は辞任を余儀なくされたのだ」


「どうしてそんな無茶苦茶な条件をつけたんですか」


「まったくだよ。

 これではよほど父兄の関心事でない限り改正は不可能だ。

 過去にもう少し改正条件を緩和しようとの提案もあったのだが、生徒会側、学校側の思惑が絡んで不成立になっている。

 どちらにせよ、PTA集会を通らないから意味はないがな。

 それと、スカートは短くなっても、生徒の方で対抗手段はあったからな。

 下にブルマを穿いたり、アンダーパンツを穿いたりしていたから、万が一見えたところでそう大過はなかったようだ。

 まぁ、今は短いスカートも一般的になったからそういうものを穿いたりはしないようにもなったがな」


 遠い目をしたところで葵は元の話題に戻す。

「そういうわけで服装検査だ。校門前でメジャーを使ってスカート丈を計るのだ。ほれ、とりあえず私で計ってみろ」

 ポケットから取り出したメジャーを大輝に手渡した。


「ほ、本当に僕がやるんですか?」

 赤くなって動揺する大輝に葵は平然と言いのける。


「当たり前だ。お前は副会長だろ。少しは自覚を持て」

「確かに僕は副会長になってますけれど、男ですよ?

 僕がそんなことしたら大問題になりませんか?」


「大問題になるかならないかはお前次第だ。

 堂々としていれば誰もやましくは感じない。

 逆にお前の方が恥ずかしがっていれば女子生徒も嫌悪感を覚える。

 医者が男だからって恥ずかしがるのはおかしいだろ?

 変態医師なら話は別だがな。

 だからまずは生徒会の面々でお前が任に堪えるかどうか試してやる。さぁ、文句を言わずにさっさとやれ」


 指を指して促し、大輝は渋々ながら逃げ道がないことを悟り、葵のかたわらにしゃがみ込んでメジャーを延ばした。


「…………」


 いくら葵が堂々としていても、女子の生足を鼻息がかかる位置から眺めるという刺激は女性経験のない思春期の男子には刺激が強すぎた。

 意識しないように努めながらも体温の上昇を頬で覚える。


 視線はいったいどこにやればいいのか。

 嫌が応にも葵の傷やシミ一つないすべすべとした太股が視界に入ってくる。

 見上げればスカートの中が見えそうでもあった。

 下を向けば息をのむようなふくらはぎの流線型が目に入り、普段は横暴な君主である葵にも女の子らしい所があるのだと知覚する。


「いつまで私の太股を凝視しているんだ。さっさと計らんか」


 葵の叱責が飛び、大輝は我に返って慌ててメジャーを葵の足に沿わせる。

 膝の先端にメジャーの端を当て、ゆっくりとスカートの裾まで延ばしていく。

 指先から感じる葵の足の柔らかな感触に大輝はいっそう鼓動の高鳴りを覚えた。


「二十五センチです」

「うむ、これで合格だ。こういう要領で計っていくんだ。

 人数も多いから、テキパキこなしていかないと時間がなくなるぞ。

 さぁ、次は明日香の番だ」


 無事に計り終えて大輝はほっと一息をつくとともに、開放された喜びを表情に出した。

 だが、すぐに次の試練があると聞かされ、再び眉を曇らせた。


「えっと、あの……、わたしもなんですか?」

 まさか自分が指名されるとは思ってもみなかった明日香は後ずさりしながら大輝を見た。

 明日香は葵とは違って見るからに恥ずかしがり、嫌そうな顔を向けた。

 そのまま振り返って逃げ出しそうな様子を見て、大輝は困り顔で葵を見た。


「当たり前だ。むしろ私より明日香の方が適任だろう。

 明日香でうまくこなせれば誰が来ても安心だ」

 それはそうだろう。校内でも最も恥ずかしがり屋の明日香に嫌悪感を抱かせずに測定することができれば、もう何も怖くない。

 とはいえ、それは不可能に近いような困難にも思えたが。


「明日香、逃げるんじゃないぞ。他の男子がやるくらいなら大輝の方がマシだろ。覚悟を決めてこっちに来い」

 どうして明日香が素直に葵の命令に従うのか大輝には理解できなかったが、明日香は葵と大輝の顔を交互に見比べて観念したのか、ついに躊躇ためらいがちな足取りながらもふらふらと大輝の側へ近づいてきた。


「さぁ、計れ」

 葵に背中を叩かれ、大輝はよろめきながら明日香の足下にひざまづいた。

 まさか背中を押されるとは予想だにしていなかったために危うく明日香のふとももに顔を突っ込むところだった。


 もしそうなれば彼女は悲鳴をあげて逃げ去ったことだろう。

 近づきすぎた顔を大輝は慌てて離し、明日香の顔を見上げた。

 予想通り、明日香の顔は真っ赤になっていた。

 それはもうお湯が沸くのではないかというほどに。

 あまりもの恥ずかしがり振りに大輝の方も意識してしまいそうになる。


「じゃあ計るよ。すぐに終わるから我慢してね」

 できるだけ明日香の負担にならないように手早くメジャーを彼女の足にあてがった。

 葵の足と比べて明日香のはむっちりとしていて妙な色気がある。

 指先に伝わる感触もふわふわと柔らかく、エッチな気分にさせてきた。


「おい大輝。お前まで顔を真っ赤にしてどうする。だいたい、私の時よりも恥ずかしがっているのはどういうことだ」

 険を含んだ葵に叱責に、大輝はしどろもどろになりながらも反論する。

「しょ、しょうがないじゃないですか。

 会長みたいに何とも思ってない風に立っていてくれればあまり意識なんてしませんけれど、こう全身で意識されたらこっちまで気が気じゃないですよ」


 明日香は顔を真っ赤にしているだけでなく、恥ずかしすぎて足まで震わせていた。

「だからお前まで恥ずかしがってはいかんと言っただろうに」

 ゴツンと鉄拳が大輝の頭に落ちた。

 あまりもの痛さに頭を抱え、メジャーを取り落としてしまった。


「今ちょっと力こもってましたよね。コブが出来たらどうするんですか」

「この程度でできるものか」

 抗議をしても葵は馬耳東風というか、意に介さずさらに拳を握りしめた。


「ちょっ、わかりましたから殴らないでください。がんばって意識しないようにしますから」

「当然だ」


 謝ってようやく許しを得、大輝は葵の視線を感じながらも急いでメジャーを拾い、再び明日香の太股にあてがった。

「ごめん、明日香。すぐ終わるから我慢してね。

 っと、えっと……二十四.六センチ。これって……?」

「誤差の範囲内だろう。

 四捨五入すれば二十五センチで合格というのは何か意図的なものを感じる。

明日香らしいな」


 実際に二十四センチでも校則違反とはしがたいが、明日香は律儀にも本当にギリギリのラインを攻めてきた。

「最後はあたしね。大輝君、よろしくね」

 未来みくが妖しい笑みを浮かべて大輝の下へやってきた。

 堂々としていてもどこかに照れがあった葵や、完全に恥じらっていた明日香とは対照的に未来は嬉しそうに大輝を見ていた。


「じゃあ計りますからじっとしていてくださいね」

「はいはい。うふふふ」

 未来の太股は葵ほどすらっとしておらず、明日香ほどむっちりもしていない。

 ちょうど両者の中間に位置してバランスのよい脚線美がそこにあった。

 三人目とはいえ、意識しないように努めてもやはり大輝は鼓動の高鳴りを覚えた。


 そうそう慣れるものではないと自覚しながらメジャーを未来の足にあてがった。

「ねぇ、大輝君。ちょっとこっちを見て」

「え、なんです?」

 言われるがまま、何気なく未来の顔を見上げようとすると、ちょうど視界にスカートの中が入り、燃えるように真っ赤なレース地の色っぽいパンツが見えてしまった。


 間近で見る艶めかしい女子高生のパンツに大輝は瞬間湯沸かし器のように上気した。

「だ・い・きぃ!」

 葵の二回目の鉄拳が大輝の脳天に直撃し、今度は目から星が出るような痛みを覚えた。


「す、すみません!」

 慌てて謝るものの、未来はにこにこ微笑んだまま大輝を見下ろして言った。

「あらあら。大輝君、たとえ呼びかけられても上を見たらパンツが見えちゃうから気をつけてね」

 完全にわざとな仕業しわざに大輝は唖然とし、葵は未来を睨みつけていた。


 その視線を感じ取ったのか未来はさらに挑発を加えた。

「どうだった? 興奮した? お家で思い出しながらオナニーしちゃだめよ」

 直球すぎる物言いに大輝も葵も絶句し、慌てて大輝は声を張り上げた。

「し、しませんよ! そんなこと!」


「あら。隠さなくてもいいのに。男の子って毎日するものなんでしょ。

 それって普通のことなんだから嘘つかなくてもいいのよ。

 それとも、葵ちゃんのパンツじゃないからオカズにしたくないのかしら。

 意外に身持ちが固いのね。かわいい」

 大輝どころか葵も明日香も顔を赤くしていた。完全に未来の手の上で踊らされ大輝は目眩めまいを覚える。


「未来っ、さすがに私も怒るぞ」

「うふふ。もう怒ってるくせに。よかったわね。オカズに使ってもらえて」

「未来!」

 拳を振りあげて頬を膨らませる葵に、未来は「こわいこわい」と笑いながら逃げていった。

 結局、未来のスカート丈を計ることはできず、気まずい雰囲気のまま下校時刻を迎えた。

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