閑話17.3 夏の海辺の風物詩は男の夢

 女子たちのぷにぷにの柔肌に日焼け止めのオイルを塗る。なんというご褒美、と喜ばない男子などいないだろう。もちろん大輝も胸が高鳴っていた。


「あ、そうだ後輩くん。これプレゼントだから」

 そのご褒美を前に、真由が思い出したかのように大輝の手に柔らかい布を握らせた。彼女の笑顔は夏空そのものである。


 この気持ちの良い感触のものは何なのかと手を開くと、ピンクの可愛いパンツがお目見えした。


 大輝は頬を染めながら動揺する。ふたりきりならともかく、生徒会の面々が揃っているなかでのパンツの進呈はさすがにまずい。今回が初めてではないことを知られたら、きっと葵や明日香から軽蔑されるだろう。さっそく、翠緑はどん引きした冷たい目で大輝を見つめていた。


「ちょっ、真由先輩なんなんですかこれは。さすがにこういうの困りますよ」

 慌てて返却しようとした瞬間、声にならない奇声がわき起こり、大輝に柔らかい何かが襲いかかってきた。


「わわわわわっ、だめっ、見ちゃだめぇーっ。なっ、なんであたしのパンツを持ってるの真由先輩っ」


 圧倒的な勢いに大輝も押され、そのままくんずほぐれつ砂浜に尻餅をつく。必死になってパンツを奪い返そうとする誰かと、咄嗟のことでパンツをむしろ握りしめてしまった大輝。体のあちこちに柔らかい感触と女の子の良い匂いを感じて幸せから頬が緩む。


 気がついた時には彼女の豊かすぎる胸を鷲掴みにしていた。この圧倒的な質量に手応えと、かつてそれを揉んだ経験を思い出す。

 襲いかかってきたのは明日香だった。


「電車のなかでボクと翠緑ちゃんのパンツを見られちゃったじゃないか。明日香ちゃんのも見せてあげないと不公平っていうものだよ」


 悪戯を仕掛けた犯人はいけしゃあしゃあと言う。

 手に握っているこれは真由のものではなく、明日香のものだったと知り、大輝は未知の感触に感動を覚える。


「あれは事故ですっ。だいたい、脱ぎたてのパンツを大輝にあげるなんて酷いじゃないですか」

「脱ぎ立てだからじゃないか。ぬくもりがなくなっちゃったら、パンツの良さも半減だよ?」

「論点はそこじゃないと思うんですけど」


 明日香がパンツをぐいぐいと引っ張るものだから、大事なところを包んでいる部分が伸び、パンツの全容が大輝たちに見えていた。


 明日香がパンツを取り返そうと力を込めるなか、なぜ大輝がパンツを握り続けているかというと、そこにパンツがあるからだった。


「大輝も返して。どうして放してくれないのっ」

「ごっ、ごめん」


 パンツを握る手は緩めても、おっぱいを鷲掴む手はそのままだった。むしろ磁石のように手が吸い付いてしまっている。水着の上からでも彼女の暴力的とも言える膨らみは健在で、むしろ薄布一枚しか隔てていない分、いつもより柔らかく感じる。


「おほんっ。そっちの左手はいつまでそこに置いているんだ」

 葵の介入が入って、ようやく大輝は我に返る。慌てて手を放すが、むしろそれによって明日香の体を支えていた分もあり、彼女は一気に大輝の胸へとダイブする。


 大輝の厚い胸板に、明日香のやわらかい二つの膨らみが押しつぶされる。

 夢のような柔らかみに大輝は思わず明日香を抱きしめてしまう。


「明日香先輩、ずるいです。翠緑だって大輝先輩とイチャイチャしたいのに」


 恥ずかしがり屋な明日香は大輝の力が弱まった瞬間に飛び起き、ざっと離れていく。パンツを握りしめ、耳まで真っ赤にした彼女は体を腕で隠し、縮こまる。


「先輩もそんなにパンツが欲しいなら、あとで翠緑の脱ぎたてをあげますよ?」

 嬉しい申し出ではあったが、まさかくださいとは言えない。葵の視線が冷たい。


「うん、これは事故だから。それに、こんなところでパンツを握っててもどうしようもないし」


「ポケットないもんね。まぁ、ポケットがないなら、パンツをかぶればいいじゃない」

 わけのわからないことを真由が言う。


「浜辺でパンツなんかかぶってたら変態にもほどがあるじゃないですか」

「浜辺じゃなくてもパンツなんてかぶったら変態だと思うんですけどぉ」

 じと目で翠緑が突っ込む。たしかにそれはシュールな光景だった。


「事故なんですから許してくださいよ」

 むしろこういう事故なら大歓迎、とは思っても口に出さない大輝ではある。


「くだらないことをやっとらんで、早くオイルを塗って欲しいんだが」

 葵の要求を渡りに船として、大輝は我に返って彼女のもとへと行く。パラソルの下に敷かれたレジャーシートの上に葵はうつ伏せになる。慎重に肩紐をずらしてビキニを緩める。彼女の真っ白な背中が露わになる。


 大輝は葵の側に座ってごくりと唾を飲み込む。

 瓶を手にとって中のどろっとした液体を手に垂らす。手のひらで弄ぶように暖めつつ、オイルを伸ばしていく。


 葵の処女地にぬるっとした液体を塗り込んでいくことに妙な背徳感を覚えながら、大輝はゆっくりと手を伸ばす。


「じゃあ、いきますよ」

「うむ……」


 緊張しているのは葵も一緒で、いつもより口調が堅い。

 オイルまみれの手で彼女の背中に触ると、まだ暖めが甘かったのか「んっ」と敏感な声を漏らした。


「冷たかったですか?」

「大丈夫だ。すぐ慣れる」


 うっすらと肉がついている女の子らしい柔らかな背中の感触に大輝は感動していた。背中を触っているだけというのに、気持ちいい。すべすべな肌を堪能し続けたくて、大輝は入念にオイルを塗り込んでいく。潤滑油となったオイルがさらに葵の柔肌の感触を良くする。気持ちいいのは葵も同じようで、マッサージされながら次第に鼻にかかった甘い声を漏らすようになっていく。


 肩甲骨から腰、そして脇腹まで丹念にオイルを塗り込んでいく。外したビキニからかろうじて見える胸の膨らみも可愛い。ささやかな膨らみながら、無防備なそれを大輝はちらちらと見てしまう。


「じゃあ次に足を塗りますね」

 背中と横乳に名残惜しいものを感じながらも大輝は葵の下半身側へと移動する。太ももは弾力に溢れ、手のひらでオイルを塗り込むたびにプルンと揺れる。


 正面を塗るために葵の太ももを抱え込むように持ち上げる。海老反りのような状態に彼女はまた艶めかしい呻きを漏らす。


 質量感のある太ももに頬摺りしたい衝動を大輝は覚える。丸見えとなった水着の股間部分にもつい視線が行ってしまう。


 葵の大事なところが薄布一枚隔てた先にある。凝視すれば割れ目が見えるのではないかと期待するが、さすがにそれは錯覚だった。


 弾力のある太ももと、ぷにぷにとしたふくらはぎを堪能すると、もう塗るところはほとんど残されていなかった。


「次はこっちも頼む」

 名残惜しかったのは葵もなのか、荒い息のままごろんと仰向けになる。赤くなった顔を見られるのが恥ずかしいのか、腕で顔を覆う。


 反転して仰向けになったため、胸に被さっていただけのビキニが少しずれて胸の曲線が少し露出する。


 大輝はそれにドキドキしながらオイルを再び手に垂らす。背中も正面もほとんど変わらないと言えばそれまでだが、仰臥してもささやかに主張する胸はつんと張っている。手のひらにすっぽり収まりそうな膨らみにもオイルを塗ってあげたくなるが、さすがにそれはマナー違反だろう。


 鎖骨のあたりから塗りはじめ、徐々に手を下へと下ろしていく。うっかり水着を引っかけてしまったら怒るだろうか。それとも、上気した葵は気づかないだろうか。そんな邪念が頭に浮かぶ。


 小さくても膨らみを主張する乳房の丸みを網膜に焼き付けながら、お腹へと手を滑らせていく。


 余分な肉はついていないとはいえ、細身でもそこは女の子だった。大事な臓器が詰まっているお腹は適度な脂肪がついていて、触っていてまた気持ちいい。


 悪戯心に可愛いおへそをいじると、葵はビクッと体を震わせる。あくまでも偶然を装うため執拗に責められないが、つい楽しくなって二度三度と卑猥な反応を見せるそこに指先を走らせる。


「大輝っ……んっ……あっんっ……」

「ちゃんと塗っておかないとムラができますよ」


 声にならない抗議を受けるものの、大輝はすっとぼける。葵の呼吸が荒くなってお腹が激しく上下に揺れる。思わぬ性感帯の発見に大輝はもう少し責めたかったものの、叱声が飛ぶ前にやめるのが正解だった。


 おへその下、そこには女の子の大事な部分が指先の下にある。将来、赤ちゃんを育てる部屋があるのだ。子宮のあたりを撫でながら、その部屋を自分のドロドロの白濁液で汚す瞬間を想像する。普段、強気な葵が為す術もなく男の種を孕む瞬間を思い浮かべ、大輝は興奮していた。


「もういい…、もういいからっ……」

 葵の方も限界が来ていたようで、下腹部を入念にオイルを塗り込んでいると、彼女の方から制止が入った。実際に塗り終わっていたのは確かで、大輝としても名残惜しくは感じるものの無理に彼女の肌を触り続けるわけにもいかない。


 むしろ限界なのは大輝も同じだった。危うく股間が元気よく膨らんでしまうところだった。


「終わりましたよ」

「じゃあ次はボクの番だね」


 力尽きてぐったりとする葵を脇目に、真由が嬉しそうに言う。

 ただオイルを塗るだけのはずなのだが、大輝は彼女の妙な明るさに警戒を抱く。


「スクール水着だとあんまり塗る場所ないですね」


 さすがに元は学校指定の水着だけあり、肌が出ているのは背中の肩甲骨のあたりだけだ。奇をてらった水着のおかげで、むしろオイルを塗り込めるスペースが少ない。これが翠緑だったら大変なことになるところだった。主に股間が。


「んー、別にこのまま塗らなくてもいいじゃないかい」

 そう言って真由はいきなり肩をはだけさせる。水泳部らしい大胆な脱ぎっぷりで、彼女の豊かな丸い膨らみが陽光に照らされる。


「ちょっ、ちょっ、真由先輩? なに考えてるんですか。早く、早く隠してください!」


 大輝は顔を真っ赤にしながら慌てて制止する。思わず伸ばした手が真由の乳房にタッチしそうになるが、触れなければセーフではある。見ちゃいけない、とできる限り目を細めるのだが、その実、こっそりとおっぱいを凝視せずにもいられない。


「まぁまぁ。どうせ浜辺には他の男なんて誰もいないわけだしさ。見られて困ることがないじゃないか」

「いやっそのっ、僕が見えてるんですけど。僕も男ですよ?」


「なに恥ずかしがってるのさ。別に初めて見るものじゃなかろうし」

「初めてですよっ」


「えっ、そうだったっけ? てっきり後輩くんはボクのおっぱいなんて見飽きてると思ったけど」

「変なデマばらまかないでくださいっ。みんなの視線が冷たくなるじゃないですか」


 押し問答をしているうちも、真由は胸を隠そうとはしなかった。みんなもみんなで白けた視線を大輝に送っている。


 むしろ誰か早くこの人を止めてくれ。と嘆きたくなる大輝である。


「まぁまぁ。そっか、初めてだったかー。照れるなぁ。急に恥ずかしくなってきたじゃないか」


 そう言って頬を染めながら体をくねらせるが、やはり胸を隠そうとしない。水泳によって鍛えられた張りのある乳房が揺れる。球体の中央に薄いピンク色の小さな輪っかと、それが戴く突起がある。その突起が、体をくねらせているうちにピクンと堅くなる。


「なんで見られて勃起してるんですか。恥ずかしいんでしょう?」

「恥ずかしいから興奮しちゃったんじゃないか。んー、後輩くんのエッチ。濡れてきちゃったじゃないか。どうしてくれるんだい」

「いや、もう知りませんから」


 大輝も冷たく言うが、その間もしっかりと真由のおっぱいを脳裏に焼き付けている。女子しか見たことがなかった水泳部エースの美しい裸体を初めて男として鑑賞する栄誉に預かり、むしろ触ってみたい気持ちがわき起こる。


「えっと、この流れはむしろ翠緑も脱いだ方がいいんですか?」

「翠緑ちゃんは何もしないで……」


 ほとんど全裸に近い水着を着ている翠緑に、大輝は死んだような目で言った。


「いつまで真由のおっぱいを凝視してるんだこの馬鹿ものがぁぁぁぁ!」

 我に返った葵の鉄拳制裁(蹴)が炸裂したのは、きっかり10秒後のことだった。

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