閑話14b 探し物はなんですか
「ちょっと資料を探してきてくれ」
葵からメモを手渡される。生徒会の資料かと思いきや、生徒会顧問である美穂ちゃんのものだった。メモにぎっしりと書かれたリストは、とても一人で集められるものではなさそうだった。
「明日香も一緒についていってやってくれ。というか、大輝は荷物持ちだな」
二人は互いに顔を見合わせる。きっととんでもなくめんどくさいのだろうということだけは瞬時に悟った。それは事実でもあったのだが。
最初の目的地である図書室で、司書の先生から閉架を案内される。
カビと本の匂いが充満する密室に、大輝は妙に胸を躍らせた。
本を探すのは明日香で、大輝は荷物持ちとなった。これは大輝が本を探すのが苦手ということもあり、逆に明日香は司書のようにどこにどの分野の本があるのかだいたいわかるみたいだった。
大輝の両手に次々と目的の本が積まれていく。残りあと2冊となったところで、明日香は書棚の上の方を見つめて立ち止まる。
明日香の背では飛び跳ねても届きそうにない。大輝とて、背伸びではとても無理だった。明日香は周囲を見回して踏み台を探す。見つけたのはやたらと老朽化した木製の台だけだった。
「大輝が乗ったら壊れそう」
女性の司書が普段使っているものなのか、踏み台は高いが不安定だ。大輝なら余裕で最上段の棚にも手が届くが、小柄な明日香ではどうだろうか。
ほかに手頃な台はなく、明日香は心配そうな顔を見せなが台に上った。
案の定、ぐらぐらと揺れる。運動神経の鈍い明日香は台から落ちそうになるものの、なんとかバランスを取って踏みとどまる。
ようやく揺れも収まり、大きく息を吐いて安堵する。
「大丈夫? 届きそう?」
明日香は小首を傾げながら手を伸ばすが、最上段の棚にはわずかに手が届かない。背伸びをした途端、台がぐらっと揺れて明日香は怖がってしゃがみ込む。
「台、押さえてるから」
「うん、お願い……」
今度は大輝が下で台を押さえる。すべすべでふっくらとした生足が大輝の視界に入る。間近で見る明日香の足は思わず頬摺りしたくなる美しさがある。
再び明日香が背伸びをする。今度は最初にちょっとぐらっと揺れただけで、台は安定している。それでもなかなか最上段に届かず、「うーん」と唸りながらつま先立ちになり、手も目一杯伸ばしてなんとか目当ての本に手がかかりそうだった。
「明日香、もうちょっとだからがんばって」
明日香が心配で大輝は見上げると、当然のことながら最初に目に入ってきたのは彼女のむっちりとした美味しそうな太ももだった。ただでさえ短いスカートなのに背伸びをしているおかげで、スカートは傾いてパンツさえ見えそうだった。
「大輝、上見ないでよ。絶対だよ」
覗くのにばっちりな角度ということもあり、大輝は慌てて目を伏せる。見えたとしても不可抗力だったし、そもそもこっそり覗いても気づかれない気もするが、真面目な大輝は明日香の言葉に従った。
「とれ……たっ……」
安堵の吐息とともに、明日香の体のバランスが崩れる気配がする。「危ない!」と見上げると、スカートに包まれた彼女の大きなお尻が眼前に迫ってきていた。
どんがらがっしゃんと激しい音とともに視界が暗転する。明日香に巻き込まれて上下が逆さまになったような感覚を覚え、必死になって彼女を支えるために手を伸ばす。
鈍い痛みを覚えながらもようやく揺れが収まり一息つく。つまり床に倒れたというわけだが、無我夢中で明日香を抱きしめたおかげか、彼女の体重も体に感じる。なんとか無事助けられたのではないかと思う反面、両手に極上のクッションを握っているような感触を覚える。
「あいたたた……」
真っ暗な視界も回復すると、目の前に見えたのはピンクのシマシマだった。綿の布地に包まれたふっくらとした何か。そこに大輝の鼻は押し当てられている。鼻を安置するには十分な弾力のある膨らみと甘い香りを感じる。
これはいったい何かと気づいた頃には、大輝は額に汗を浮かべてどう言い訳すべきか頭の中で会議を繰り広げていた。
「明日香、大丈夫?」
おそるおそる上目遣いで見る。明日香は顔を赤らめ、目尻に涙を浮かべて絶句していた。大輝が鷲掴みにしている極上のクッションは、彼女の豊満すぎるおっぱいに他ならない。もうこのまま死んでもいいかもと思える夢のような展開に、大輝も硬直してしまう。
「離……して……。じゃないとわたし……わたしっ……」
本当に泣き出す3秒前の明日香に、大輝は慌てて飛び起きようとするものの、体が変にこんがらがっているのか、彼女の足に引っかかってかえって彼女の体に倒れかかるようになってしまった。
縞パンが守る小さな丘に再びダイブし、ぐりぐりと鼻を押しつけてしまう。丘というか、すっぽりハマった谷間をこすりつけられたことで、明日香は声にならない声をあげて体を震わせる。
明日香の力がぐったりと抜けたことで、大輝はようやく立ち上がることができた。
こんな時、どうやって泣き顔の女の子に声をかけるべきか、大輝はさっぱりわからない。仕方なく愛想笑いをしつつ手をさしのべるのだが、明日香は頬をぷくーっと膨らませて大輝を再び自分の体の上に押し倒した。
「ちょっ、なにやってんの……んぷっ」
今度はパンツに顔面ダイブしたのではなく、豊かすぎるおっぱいに顔が押しつぶされる。どちらにせよ天国に違いないのだが、さすがに両頬に感じる乳房の柔らかさとともに、口元を柔肉で塞がれて呼吸すらままならなくなる。
「すっごく恥ずかしかったんだからね。だからお仕置きっ」
「ちょっ、苦しいってば。息が……できないっ……って」
「だーめ。おしおきなんだから我慢して」
ふわふわな乳肉に両頬が押し潰される。文字通り死んでも本望な展開に、大輝は嬉しいような苦しいような幸せを味わい、もうずっとこのまま明日香の胸に顔を埋めていたい気分にかられた。
「えっと、すごい音したけど大丈夫?」
血相を変えて閉架に飛び込んできた司書が、明日香と大輝の様子を見て絶句した。何が起きたのかは、バラバラになった踏み台と、床に倒れ込む二人を見て察したようだが、それでも悪戯っぽい笑顔で男子の顔をおっぱいで抱きしめている女子と、それを嬉しそうに頬摺りしている男子とを見て呆れたのは間違いない。
「……ごっ、ごめんなさい。お取り込み中だったのね」
頬を赤らめてそそくさと退散しようとする司書に、明日香も大輝も飛び上がって否定する。
『違いますからっ、これは事故ですって』
「怪我はなかったのよね。踏み台だったら、図書室に男の子が乗っても大丈夫なやつがあるから」
異口同音に叫ぶ二人に、司書はそれでも気まずそうに早口で言う。
大輝は我に返って図書室に駆け出し、明日香は着崩れたシャツを整え、大輝に向けて頬を膨らませて言う。
「ばかっ……」
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