第2話聖女の拳

私は何を見ているのだ?

聖騎士である私は如何なる時も精神を乱さぬよう鍛錬していた、そんな私でも目の前の光景に頭が可笑しくなりそうだった。

『せ、聖女様が男の尻に指を入れた!?』

聖女様の人差し指が光り輝いたと思ったら、男の尻に指を入れたのだ。

いやいや魔力による精神干渉なら頭に手をあてるとかでしょう?

尻から魔力注入とか聞いたことがないんですが?

「二本目いきますよ……」

「や…め…」

聖女様は男を攻め続けている、男の尊厳を破壊し下僕にしようというのか……

『あの慈悲深い聖女様がこのようなことを……』

もしや聖女様は頭を打って正気ではないのでは、先程も男の尿を飲もうとしたし。

いや、あれは私を助ける為の自己犠牲的な物だ、聖女様を信じて見守ろう。


「おや?もう御尻でいけるようになったんですか!?」

聖女様が笑みを浮かべながら男に語りかける。

「いってない…」

男は否定するが聖女様は追い込む。

「可愛らしい物から垂れてますよ?」

「ぐあっ!」

男は悲鳴をあげた、聖女様が光り輝く指が三本ねじ込んだのだ。

「観念して私の仲間になって下さい…」 

「ぐう……聖女…何かに負けない…」

男は必死に耐えているが、落ちるのは時間の問題だろう。

「仕方がありません……拳でいきますね…」

私は耳を疑う、拳でいく?

「や、やめて…」

「ホーリーフィスト!!」

聖女様が叫ぶと拳が光と化し、男のホールをこじ開ける。

「はっ…はいったぁ……」

衝撃の光景に私は気を失った。



「レイナさん…大丈夫ですか?」

聖女様の声が聞こえる、どうやら気絶したようだ。

「聖女様……私は……」

「レイナさんには少し、刺激が強かったみたいですね」

あれで少し……聖女様はどんな精神構造なのだろうか。

「マキシマムさんが仲間になってくれました」

聖女様の後ろに控えていた男が前に出る。

「本当ですか…?」

私が尋ねると男は真剣な顔で宣言する。

「聖女アナ様により私は目覚めました、これからアナ様に仕えます。」

目がキラキラしてる……聖女様わからせるとは何なのでしょう?私にはわかりません。


「これより聖女アナと聖騎士を監獄に連行する」

マキシマムは部下にそう告げると私と聖女様を馬車に乗せる。

暫く馬車で走るとマキシマムが声をかけてきた。

「ここまで来れば大丈夫です、縄を外して下さい」

私達は縄を外した、元々すぐ外れるようにしてあったのだ。

全ては逃げる為の芝居、聖女様は本当に男を仲間にしたのだった。

「ありがとうマキシマムさん」

笑顔で礼を言う聖女様、良かったいつもの聖女様だ。

「取り敢えず馬車で近くの教会に向かいます」

「教会?」

「私が少女時代いた教会です、泊めてくれると思います」

私は安堵した取り敢えずベットで寝れそうだ、自分は野宿でもいいが、聖女様はそうはいかない。

「マキシマムさん!」

「何にか御用でしょうか!アナ様!!」

マキシマムはすっかりアナ様に洗脳……いや改心し信徒になったようだ。

「自分でホールを弄ってはなりませんよ!」

「…なんと…」

マキシマムの声が震えている、人格まで改変してませんか…

「いいですか…貴方は覚醒し新たな道を見つけました…ですがホールを酷使すると寝ている時に便を漏らしたり、命に関わる病を発病することがあるのです!」

便を漏らすとか、やはり聖女様は可笑しくなったのでは?

『彼の体を心配しての発言だろうから……おかしくはないかな…』

「ですので、週に一度お湯で洗浄し、出入り口であることを再確認する程度にしておきなさい…」

「御言葉ですが!」

なんで泣きそうになってるの?

御尻ってそんなに気持ちの良いものなの?

私は彼の執着ぶりに聖女様のもたらした覚醒に興味を持った。

「後遺症が出ないよう、定期的にわからせて上げますから悲しまないで下さい」

「ありがとうございます!!アナ様…」

定期的にわからせるとはいったい……

わたしは恐ろしくなったので考えるのをやめました。

やがて小さな村に辿り着く、その一番奥に聖女様の仰っていた教会があった。

辺りはもう暗くなっている、夜間の移動は危険なので予定通り泊めてもらいたいものだが…

「先に私が行って話してきますね」

馬車から降りる聖女様に私は声を掛ける。

「私は馬車で寝てもかまいませんから…」

「最悪アナ様だけでもベットで寝て下さい」

マキシマムも続いて申し出た。

「大丈夫ですよ、部屋は余ってるはずですから」

聖女様は笑みで返した、尊い……

今日あった事をそのまま報告したら、私は正気を疑われるだろう。


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