第50話ギミックパペット

私はトーマス様から命じられ、妹達と出陣していた。

私は八十八番目の作品であり、トーマス様からフランと名付けられた。

そしてスクエア、トライアングル、サークル、トラピゾイドの四体の妹達と作戦に参加していた。


周囲にはストリング隊が使っていた、操り人形の残骸が散らばっていた。

「お姉様……殲滅完了致しました」

「ご苦労さま、引き続き周囲の警戒を続けて…」

「はい」

妹達である量産型オートマータは一礼すると持ち場に戻った。

『騎士型が二機と魔獣型が三機…偵察かしら?』

高度な自律型である私は状況を分析する、ドールの正規軍ではあるが数が少ない。

半時ほどの戦闘で相手は撤退を決め、ストリングパペットを自爆させてまで逃げたのだ。

ドール共和国にとって、妹達でさえ確保したいサンプルのハズ……諦めたとは考えにくい。

「ここはトーマス様と合流して指示を……!?」

サークルの魔力路が止まった?

妹の一体であるサークルの魔力路が突然停止した、魔力路は私達の心臓であり、通常停止はありえない。

答えは一つ敵襲だ、それも一撃でやられた。

トーマス様は安全の為に、私に妹達の魔力路とのリンクをさせた。

不調があれば直ぐにメンテナンスできるようにだ、何の前触れもなかったというのは単なる故障ではない。

私は妹達に魔力による伝達をする、直ぐに妹達達は集結するが、やはりサークルの姿がない。

「全速力で撤退するわ!」

「それは困りますね……美しいお嬢さん…」

いつの間に? 

声の方を向くとドールの軍服を着たメガネをかけた小太りの男が居る。

「貴方達は我が国の宝…トーマス様と共に来ていただきたい」

私は思考する、私達は宝……それは嘘ではないが、それは財産として、つまりは金に変えたいのだ。

トーマス様は言った…私達を切り売りしてまで生きる気はないと……

私は男の言葉には答えず、妹達と離脱しようとした。

次の瞬間地面を突き破って何かが飛び出した。

私は記憶装置のデータと照合する。

サンドワーム型の巨大人形完成していたの?

回避行動が間に合わず、妹の一体が丸呑みされた。

助ける?いえ、サンドワームのスペックが分からないいじょう交戦は避けるべきだ。

慰み物になるぐらいならと、妹に自爆指令を送る。

『――爆発しない……』

「自爆コマンドでも入れましたかな?」

メガネの男が笑いながら言う、私が人間であれば嘔吐するレベルの気持ち悪さだ。

「残念ですが……私のギミックパペットサンドワームの中は魔力を通さない素材で出来ているんですよ……自爆や自害されたら大変ですからね…」

魔力による自爆指令は遮断される…

「!!」

突如センサーが足元に熱源を感知した、私は妹達と急いで後退する。

次の瞬間地面から二体目のサンドワームが現れる!

次の瞬間、私は丸呑みにされる。

『粘液?』

瞬時に分析は出来ないが、恐らく捕獲用の薬品なのだろう。

何であれ触れ続けるのは危険と判断し、私は利用太ももに取り付けられていた、サブアームを展開する。

アームの先の振動ブレードを起動させ、ワームを内側から切り裂いていく。

人形である私に焦りはない、だが戦況は不利と言うのは理解できた。

余力を考えずブレードの出力を全開にする、暗い体内に火花が飛ぶ、そして隙間が生じ光が差し込んできた。

私は即座に両手で隙間をこじ開け、外にとびだしたのだった。




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