第49話乱戦

「セバス……何を言って?」

「ここは我らが犠牲に成ります、ペドフィリアの理想実現はこの戦いに掛かってます…行って下さい…」

セバスがまともな事を言っている?

私は戸惑ったが思い出した、彼は幼女の事となると何時も真剣だった。

「わかったわ……」

私は魔術礼装を起動させ姿を消す。

「逃がすか!」

モグラ野郎が飛び掛って来る、だが私の仲間達が立ちふさがる。

「邪魔はさせない!」

「うおお!!」

「くっ!これ程とは!!」

モグラ野郎が仲間達の勢いに押される。

獣人、しかもアニマールの正規軍相手に互角渡り合っている。

当然の帰結だった、彼等は性癖以外の全てが高スペックなのだ。



何だ……これは……

私、リリーエ・ノロイは目の前の凄惨な光景に息を呑んだ。

臭いを頼りに来てみれば、偵察に向かわせた部下が惨殺されていた。

「!」

血の臭いの中に覚えのある臭いがあった。

あのペドフィリアの臭い!アニマールでテロを起こし、我が帝国の民の命を奪った。

あの気持ち悪いの悪い男の臭いだ。

「獣化しろ!」

私は危険を感じ、部下達に獣化を命じる。

「イタチの嗅覚が優れているというは本当のようだな……」

血と臓物の下から男が立ち上がる。

この臭い!この嫌悪感!アニマールで私が戦った男だ!!

「油断するな!この男は私がやる!お前たちは周囲を警戒しろ!」

「あ……そうだったのか……」

男は私達を睨みつけ呟く、これが人間の眼なのか?こんな気持ち悪い視線が存在したとは…

「女の子達が怯えていたのはお前たちのせいだな!?」

何を言っているのか理解出来ない、ペドフィリアとは本当に人間なのか?

「お前等の様な獣がいると!女の子が怯えちまうだろあがよぉ!」

「それ以上喋るな!!」

私は堪らず、奴の息の根を止めようとした。

右手の爪で喉を呟こうと攻撃を繰り出すが、男は私の一撃を剣で弾いた。

「どいつも!こいつも!人の婚活邪魔しやがって!お前等のせいで聖都の女の子が笑わなくなったんだ!!」

くっ、アニマールの時と同じ意味不明なことを!

聖都の民が笑わないのはペドフィリアのせいだろう!!


「ぐぁぁ!」

周囲を警戒していた部下が声を上げる。

やはり潜んでいたか!

血溜まりから現れた何者かに襲われ部下は手傷を負ったようだ。

「つまり!俺等がこの獣を退治すれば!」

「幼女達はラブリーな笑顔を向けてくれるんだな!?」

「うへへ、頭なでなでしても大丈夫かな?」

奴らは血と臓物に塗れていた、私の部下の成れの果てだ、そのせいで臭いに気が付かなかった。

「ハグも良いぞ!……たぶんな…」 

本当に気持ち悪い!

何なんだこいつ等は!

私は目の前の男を睨みつけ殺気を放つ、男は私の殺気に何も感じてないのか動じない。

「やりたくも無い解体作業をやったんだ……ハグのご褒美ぐらいないとな……」

解体作業?その意味を私は瞬時に理解すると同時に怒りに身をまかせてしまった。

私の放った爪の一撃と男の剣が交差する。

「解体作業とは!部下達への遺体損壊の事か!?」

「ああ、臭いを付けるために必要だった、モグラやイタチは嗅覚に優れている、現に礼装で気配遮断していたが見つかってしまったからな……」

「貴様!」

「怒るなよ…ちゃんと絞めてから解体したさ、狩猟が趣味でな?解体から料理まで自分でやるんだ……」

この男は私を怒らせる為に言ってるのではない、本当に獣人の遺体を損壊する事と、狩猟動物を解体する事を同一の物として語っている。

この男だけは絶対にここで殺さねば!












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