第55話斬首
トーマス様と変態女の戦いは長引いていた。
私の見たところ奴の義体と人形のスペックに差はない、となれば操作技術や経験が物を言うのだが、結論から言うと操作においても互角だった。
トーマス様は操り糸に魔力を通す事により人形をコントロールし、マーガレットは脳が直接ネットワークに繋がれているのだろう。
多分、生身と変わらない操作で済んでいる。
トーマス様は天才ではあるが研究者、戦闘経験に置いてはあの女に分がある。
「トーマス!ストリングパペットなど、お前らしくないな、新しいもの好きのお前らしくもない!」
「そう言う訳ではない、有用なら古い技術であっても使うさ……」
有線操作であるストリングパペットは操縦者が敵の前面に姿を現すリスクがある。
だがメリットもある、魔力を遮断する結界などの中でも稼働することができるのだ。
先程の爆破もトーマス様が直接有線で自爆コマンドを入力したのだろう。
しかし……トーマス様とここまで闘えるのは最新の義体とはいえ強いと認めざるを得ない、変態なのに。
統計情報によるとドール国民は性癖が歪んでいる者ほど強く、特に軍に所属してる者ほどその特徴が顕著に出るという。
(あの統計データ……本当だったのかしら……)
「これで終わりだ!トーマス!」
変態は手刀に魔力を集中させる!
「ナットクラッカー!!」
魔力を帯びた赤い手刀が振り下ろされる。
振り下ろされた刃は獅子人形を両断する、獅子は頭部から尻尾に至るまで真っ二つになる。
ガッシャと音をたて人形は地に伏した。
「はっ、次はお前だトーマス!」
変態は下卑た笑みを浮かべる。
「お前を美少女にしてやるからな……」
(自爆しかない!)
私は決意した、隙をついて飛び掛かり変態諸共自爆する。
それしかトーマス様を救う方法はない。
「………何だ?……身体の制御が……?」
私が隙を覗っていると変態の様子がおかしい。
機械トラブルだろうか?
全身が小刻みに震え、動きが鈍い、いや全く動かないようだ。
「自分の身体をよく見てみろ…」
「これは?トーマスの操り糸か!!」
変態の身体に無数の糸が刺さっている、そしてその操り糸はトーマス様の指に繋がっている。
「人形を両断した隙にお前の身体に接続した、マリオ……お前は性癖を除けば素晴らしい軍人たからな、隙を作らせるために態と人形を切断させた」
「身体の制御が効かない!」
「ああ……今やお前自身が俺の操り人形だからな……」
トーマス様が指から魔力を流し込むと変態の右手が水平に上がる。
すると先程のように右手刀に魔力が集中した、赤い光の刃が。
「その義体を壊すのは忍びない……だから首を刎ねる……」
「トーマス!!」
それが奴の最期の言葉だった、トーマス様の指令通り右手刀が首を刎ねたのだ。
身体は後に倒れ、首は宙を飛んだあと離れた場所に落下した。
奴は脳さえ有れば墓は要らないと言っていたがさすがに死んだと思いたい。
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