第43話御茶会

「そう……」

フェイクは小さな声で返事をした。

『聖女の洗脳を解くための副作用と聞いていたが……』

彼女の姿を見て私は驚いた、生気がなくまるで人形のようだったからだ。

「お菓子ある……二人共お茶をしよう…」

「うーん、ごめんね!大きなお友達と遊ぶ約束があるの!また誘ってね!」

アンは彼女の申し出を断った、私は内心大きな友達しかおらんだろとツッコミを入れていた。

「……貴方は?」

「ああ…いただくよ、君の部屋でかい?」

彼女は頷くと私の手を取った。

可愛い手だ……

私と同じ本物の幼女の手だ、これで元男、しかも軍人だったと言うのだからな。

「お帰りなさい、お嬢様」

メイドオートマータが彼女の部屋で私達を出迎える。

「シャークちゃんお茶を淹れて……」 

「シャーク……ちゃん?」

彼女は青い髪のオートマータをそう呼んだ。

トーマス・アークロード制の高性能の幼女型メイド自動人形なのだろう。

だが、シャークちゃんとは?

「トーマス様が……名前を好きにつけていいと…サメみたいな髪の色だから……」

「そ、そうか…」

私はもっと他にあっただろうにと思ったが、言わなかった。

「トーマス様が……フランちゃんの妹をくれたんだ……」

フランちゃんとはトーマス氏直属のメイドにして、八十八体目の作品だったか?

確か姉妹機が十二体あり、八十九番以降は量産型と聞いていたがそれでも凄いな。

人間のように受け答えし行動する、上位互換であるフランはさらに人間に近いと聞く。

私はフェイクに促させ丸テーブルの彼女の対面に座った。

暫くして紅茶と菓子を載せたワゴンが到着した。

メイドは手早く茶菓子と紅茶をテーブルに並べると一礼して部屋からでた。

「美味いな…」

私は紅茶をストレートで飲んだ、爽やか薫りが鼻を抜ける。

「シャークちゃんは何でもできるの……」

フェイクは菓子を食べながら言う、確かにトーマス氏のオートマータは大概のことができる。

アガルマトフィリアが大金を出して買うのも頷ける、維持費が気にかかるが下手に人を雇うより良いのかもしれない。

「オルタナティブちゃんも……元々男だったの?」

「この体になったのは最近だからね、まだ覚えている…」

「私は……良く覚えていないの……」

聖女の洗脳を解くため副作用が出たと聞いていたが……

「大切な……人が居た気がするんだけど思い出せない……女の人だと思うのだけど…」

大切な人とは恐らく聖女アナだろう、彼女は聖女アナに下り帝国を裏切り、終戦後も仕え続けた。

気の毒だが教える訳にはいかない、記憶を取り戻せば敵にまわるのは確実だ。

故に偽りを教える、心は傷まない。

私も人でなしになった物だと心の中で自笑した。

「フェイク…私達三幼星はペドフィリアの希望であり、幼女神様の理想…幼女と健全にお付き合い出来る世を実現する事だけだ…」

「そっか……幼女神様の為に生きれば良いんだね……」

「そうだよ……フェイク……」

















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