第44話聖女の名の元に!
聖都奪還の旗印として聖女アナ・ホールが立ち上がると言う知らせは各国に伝えられた。
聖女アナが戦場に出るならばと、彼女が訪れた国家から援軍が送られることになるのだが、思惑は様々だった。
ドール共和国の大統領官邸に首脳陣が集結していた、議題は聖都奪還についてだ。
「大統領……援軍は出されるので?」
「無論だ、聖女アナの人気は高い…慰霊祭であれほど真摯に祈りを捧げた聖女は居なかった…」
大統領は言った、ドールの慰霊祭とは人形の為でもある、その為聖女の中には手抜きとは言わないまでも不満を言う者がいたのだ。
『何で人形の為に祈る必要があるのか!』
国民も分かっていた、所詮アガルマトフィリアは他国からみれば異常者……
聖女を派遣して貰えるだけでもありがたいと思わなければならない。
だが!聖女アナはアガルマトフィリアの性癖を尊重し真摯に祈りを捧げた。
「聖女アナの名を出されては援軍を出さない訳にはいかない…出さなければ国民の反感を買うだろ……問題は……」
「トーマス・アークロードですね……」
側近の言葉に大統領は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「トーマスを死なせる訳にはいかない…そして報告書にあったフランと言うオートマータ絶対に手に入れなければならない!完璧なる自律型オートマータ完成していたとは!」
報告書にあったフランを解析し、量産できれば共和国に莫大な利益をもたらす。
それに大統領にはトーマスが必要だったのだ。
『妻のメンテナンスを出来る人形師は……制作者であるトーマスのみ!妻の寿命を伸ばす為にも活かして捕らえなければならない!』
大統領はアガルマトフィリアであり、妻はトーマスが創り上げたオートマータである。
人形とて不滅ではない、駆動時間は有限であり、この国では人形の寿命と言う。
天才であるトーマスには弟子は居らず、大統領夫人をメンテナンスできるのはトーマスしか居ないのだ。
トーマスの死は愛する妻の寿命を縮める事になる、それだけは何としても避けなければならない、他国では異常ではあるがこの国ではこれが普通だった。
「正規軍の他にトーマス捕獲部隊を派遣する、絶対にトーマスを殺すな!!」
アニマール帝国の南にノロイ辺境伯の領地があった、リリーエ・ノロイは墓に語り掛けていた。
姉であるリース・ノロイの墓、僅か十二歳でペドフィリアに犯され惨殺された。
「姉さん……ペドフィリア共から聖都奪還する任務を受けたよ……」
聖女アナの為に女帝レッドヘルムは援軍を出す事にした、そして辺境伯令嬢であるリリーエが指揮官に択ばれたのだ。
「ノロイ一族の誇りに掛けて今度こそ勝つよ…」
リリーエは思い出していた、初めて戦ったペドフィリアを…悍しかった、本当に気持ち悪い、存在してはいけない汚物……
ただの汚物ではない、獣化した自分と同等の力を持つ狂人、奴の報告書を読んで憎悪がました。
あの汚物は聖女アナを襲うさい、怪我人を踏んで歩いた、踏まれた者は皆心臓破裂で即死だった。
意図して心臓を踏み抜き!同胞達を惨殺したのだ。
「何が幼女神だ!殺してやるぞペドフィリア!」
リリーエは姉の墓の前で誓うのだった。
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