第35話オルタナティブ

私、ユリアン・ダグラスは聖騎士だった。

騎士の家に産まれ才能にそった生き方をした結果だった、崇高な思想があったのかもしれないが今となっては思い出せない。

いや、全てが夢だったのではないか?

「アンドレ先輩……」

不幸な事に明確に覚えてる事があった。

アンドレ先輩は私より二つ上の聖騎士で、ルームメートだった。

田舎出身の私に彼はプライベートでも良くしてくれた、良い店を紹介してくれたり、休みが合えば

酒を一緒によく飲んだ。

そんな彼に、私が抱かれるのは必然だった。

気持ち悪く感じる方もいるだろうが、聖騎士団では暗黙の了解だった。

普通の騎士団でも男同士と言うのはあるのだが、聖騎士団は特に多い。

普通の騎士であれば娼館に行ったところで問題はない、騒ぎを起こしても注意や謹慎。

だが、聖騎士は清廉潔白でなければならないのだ、娼館にいった事がわかれば除名処分、当然退職金などでない。

だから現状妻がいる聖騎士も昔は男色をたしなんだというは普通だった。

最初は痛かったが、四回目位から気持ち良くなり最期には彼との行為に夢中になった。

いつか終わるのは理解していた、彼も並ではあったが無能と言うわけでもない。

彼に良い縁談があれば私は身を引くつもりだった、私では彼の子を産めない。

騎士同士の単なるお遊びに私は本気になってしまっていたのだ。


「アンドレ先輩が……退団した?」 

私が故郷から騎士団に戻るとアンドレは退団していた、私は何も聞いていないし、そもそも今回の帰郷はアンドレが勧めてきた。

たまには親御さんに元気な顔見せてやれよと、土産まで用意してくれて……

「何も聞いていないのか?あいつ子爵家に婿入りが決まってな?それで退団したんだ」 

混乱する私に同僚がさらなる追い打ちをかける。

子爵家に婿入り?馬鹿な!

聖騎士は準男爵と同格!一つ上の男爵家ならよくある話だ。

だが聖騎士として並のアンドレが子爵家に何故だ……


調べるとすぐに真相が分かった。

彼は手柄を独り占めにしていのだ、虚偽の報告書により私と二人の任務は彼主体で解決した事になっていた。

私は騙されていた、彼は戦闘ではお前の方が活躍してるから書類ぐらいやらせてくれと言ってきたのだ。

私はその言葉を鵜呑みにし騙された訳だ。

そして、ユリアン・ダグラスという間抜けな聖騎士は任務に失敗し死んだ。


「オルタナティブ様配置完了いたしました」

部下が私に跪き報告する。

オルタナティブ・ガール、それが今の私の名だった。



私の部下達はパークス子爵の屋敷を取り囲んでいる。

そう、アンドレが婿入りしたパークス子爵家だ、

聖騎士で無くなった私にもはや枷は無い。

今までは自分さえ黙っていれば、子爵夫人も令息も幸せで居られる。

そう思っていた、子爵家の方はアンドレに騙されているだけなのだからと……

だが、それはユリアン・ダグラスの思いであって私ではない。


「今会いに行きますよ…先輩……」















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