第53話閃光

「行かせないよ」

私の前にマーガレットが立ちはだかる。

私はボウガンを撃つ、彼女は僅かに体を逸らすだけで回避する。

なるほどいい目――レンズを使っているらしい。

彼女は脳以外人工物だ、それ故の立ち振舞だ、生身ならば大きく躱すだろう。

彼女がそう動く事は計算済みだった、私は一気に距離を詰める、相手の懐に入りナイフを繰り出す。

トーマス様特注のナイフだ、義体の素材は判らないがダメージを与えられるはずだ。

「!」

私の刺突を女は右手だけで止めた!

そして強引に腕の力だけで字面に叩きつけた。

人形である私は痛みは感じないが、そのかわりダメージが瞬時に数値化された。

信じられない、如何にドールの義体と言えどもトーマス様の最高傑作である、私がここまでのダメージを負うなど!

「私がパワー負けした……」

動力系に異常をきたした、私は何とか立ち上がる。

「負けた理由がわからないかい?」

女は作り物の笑いを浮かべながら解説を始めた。

「私とお前の動力に殆ど差はない、たが一つ大きな違いがある、お前は高度な思考が出来る、それこそ人間と変わらない位にな……だけどな!そのために多くのエネルギーを演算に使ってしまっている!

だが私は脳による思考により純粋に動力を戦闘に使えるの…」

「理解した……」

「理解したなら降伏してくれないか?あんまり壊すと復元が面倒だからね、いやなら首をねじ切るよ?妹君みたいにね……」

私は演算した……降伏後の処遇ではない。

どの位の距離で自爆すれば相手を道連れにできるかを?

答えは出なかった……データがたりなすぎる。

「隊長!その子の首をねじきったら頭使わせて貰っていいですか!?」

女の部下が興奮気味に発言する、演算する迄もない、女の部下は私の頭を使ってソロプレイをするつもりなのだろう。

『本当に気持ち悪い……絶対に自爆しないと……』

「はぁ!?勝手に使ったら私が怒られるだろうが!そんなにたまってるなら、私が抱いてやるからテントに今晩こい!!」

「ええ!いいですよ!だってマーガレット様はもと……ぐが!?」

もう人の男が慌てて口を塞いだ、もと…何なのだろう?

「計画通り!我々は先に戦利品を持ち帰りますね!」

男はそう言うと仲間を引きずって妹の身体に近づく。

ああ……私が弱いせいで妹の身体が解体され、尊厳を破壊される。

私が諦め自爆特攻しようとした、まさにその時妹の体が発光した。

私にはすぐわかった、自爆指令が入力されたのだ。

「離れろ!」

女は部下に命じるが間に合わない、妹との身体は光と熱を発生させ爆裂した。

男は爆発に巻き込まれ吹っ飛ばされた、自爆時のエネルギーから視て生存者は居ないだろう。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る