第52話義体

一瞬だった……

一瞬で隣に居た妹が地中に引きずり込まれた…

一瞬だけ、私の目が捉えたのは何者かの手だった。

人形?黒手袋をしていたが人形なのか?

人なのか分からない?

疑問が浮かぶ、人であれば体温や魔力を感じたはずだが、私のセンサーに反応は無かった。 

私は下半身の触覚センサーを全開にする。

迂闊に動くのは危険と判断し、妹と二人背中合わせで敵の出方をみる。

『来た!』

私のセンサーは地中から出た、何者かの手をスカートの中のサブアームで掴んだ!

そして地中から引きずり上げ、空中に放り投げた。

「空中で仕留めて!」

私は妹に指示を出す、妹は空中にいる敵にボウガンを撃つ。

『女?』

敵はドールの軍服を着た女のようだった。

女はボウガンの矢を僅かな体の動きで躱す、もとよりこれで仕留められるとは妹も思っては居ない。

妹は飛び上がり剣で斬りかかる。

相手の視線は妹を見据えていた、幼女型の私達の手足が短い、相手はまだ攻撃が届かないと思っているだろう。

『――!』

相手の目が大きく開く、妹が背中に備え付けられた隠し腕を展開したからだ。

隠し腕のリーチは本来の腕の倍であり、完全に不意をついた。

あと僅かで隠し腕が敵の両肩を掴む、そうすれば骨を握り潰し戦闘不能に出来る。

――!?

敵の両腕が人体の可動範囲を越え、あり得ない角度に曲がり逆に妹の腕を掴んだ。

そして力任せに隠し腕をへし折り、妹を地面に叩きつける。

ゴキッ!

妹とはすぐ立ち上がろうとするが、立ち上がる前に首をねじ切られた。

私は敵の体をスキャンするが詳細はわからなかった、ただ生身ではない。

「何なの貴方の身体……?」

私の問に女はニヤッと笑う、美形ではあるが何処か人工的なところがあった。

「何――全身が仕掛け人形なのさ、ここ以外ね」

トントンと右手人差し指で自分の頭を突付いた。

頭部以外、仕掛け人形……道理で体温も魔力も無いはずだ。

「私はマーガレット・ミミクリーだ、ドールからトーマス氏の捕獲を命じられてきた、投降してくれないかな?いやー君たちはドールの宝だからね?大切に保護するよ?」

胡散臭い作り物の笑顔信用出来ない。

『トーマス様は言った……奴らは金と人形とやる事しか考えてない……夜伽の相手……いや投降すればソロプレイ用の穴として使い潰される!』

私は妹の身体を汚されないようにするために自爆命令を発信する!

「――!」

爆発しない?確かに命令は送信した?

「自爆コマンドでも入力したのかい?」

マーガレットは腕を組ながら嘲笑する。

「隊長の読み通りでしたね」

地中から声と共にモグラの人形が頭を出した。

大きさから言ってハンドパペットだろう。

「さっさと人形を回収しろ!」

女が命じると地中から両手に人形をはめた男が二人現れた。

妹との身体辱められてなるか!

私は再度自爆指令を発信するが、自爆装置が作動しない。

「無駄だ、魔力遮断粒子を撒いた、自爆コマンド送ってるようだが伝わらない」

くっ、遠隔操作には魔力を使って命令を飛ばす、それが届いて居ないと言うのであれば!!

接触なら自爆出来るはずだ、私は自己保存よりも妹の尊厳を選んだ。








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