第46話思惑
「想定より敵が多いな…」
トーマス・アークロードは聖都の高台から敵陣を観察していた。
「アニマールまででてくるとはな、余程我らを滅ぼしたいらしい!」
彼は敵陣にアニマールの軍服を着ている者が数人居ることに気がついた。
彼は常人の視力では判別できない距離に居たが、右目の義眼により鮮明に敵陣をみることが出来たのだ。
「マスターの捕獲部隊が居ない様ですが?」
彼のオートマータフランが発言する。
「ふん、秘密裏に派遣されているのだろうよ、他国から見れば人形師一人の為に部隊を派遣するなど正気を疑われるからな…」
「そうなのですか?」
「ああ、あの狂った国だからこそ、俺は尊敬されたのだ」
彼自身もまたアガルマトフィリアではあるが、それを正常とは思って無かった。
彼に父親は居ない、居るのは精子提供者とアガルマトフィリアの母親、ドールでは珍しいことではない、女性は優秀な男から精子提供を受け、男性は卵子提供と代理母により子孫を残す。
そうで無ければドール共和国は人口が減少し滅ぶのだ、人形との間に子供は作れないのだから。
「フラン…脱出不能と感じたら即座に自爆しろ…彼奴等は金と人形とやる事しか考えてない!捕まればお前は全身を汚され!解体され!ネジの一本に至るまで標本にされる!俺の最高傑作であるお前が凡人どもの玩具になるのは耐えられない」
自立思考型であるフランは全てを理解できた訳では無いが…大切に想われて居るのは理解できた。
「数を揃えてきたか……」
幼女神は部下からの報告を受けていた、トーマスからも連絡を受けているが想定より多い。
「籠城しますか?」
籠城、確かに聖都は要塞都市としての面もあるが……
「聖都の幼女を巻き込む訳にはいかない……我らの目的は洗脳や調教ではない、相互理解によって幼女との愛を育む事にある、我らへの恐怖が収まって居ない今、聖都を戦場にすれば幼女との溝が益々深まることになるのだ」
「撃って出るので?」
「そうだ、会議をする幹部を呼んできてくれ……」
「お嬢様達はどうしますか?」
部下の男は尋ねる、お嬢様とはペドフィリアの三幼星、恐るべき強さと可愛いらしさを兼ね備えた、彼等の理想の体現者である。
そして……全員元男!元男の幼女である!
「呼ばなくて良い…後で私が直接指令を下す…」
じきに戦闘になる、あと僅かではあるが自由にさせてやろうと彼は思った。
『アナ・ホール…神の啓示により選ばれた、初めての非処女の聖女……ふん、当初は何かの間違いでは無いかと言われていたが!神も見る目があるではないか!』
当時、奴が聖女に選ばれたとき一騒動が起った。「私は既に純潔を失っています……何かの間違いでは?」
教会内部に激震が走った、聖女は純潔であると言う認識だったからだ。
愚かな話だ、純潔とかどうでもいい、そんな事で人間の価値は変わらないというのにな。
一部のユニコーン系神官が騒いだが、結局は神の啓示に従ったという。
神の目は節穴では無かった、奴は実績を積み上げ今や歴代聖女でも随一と評される。
私が奴を恐るべき相手だと確信したのは、フェイクの尻を見た時だった。
男の尻をここまで育てる事が可能なのか?
フェイクの第二ホールは完成されていたのだ。
出来上がっていたのだ!
マキシマムと言う男だった時に既に!
フェイクのホールは既に女のメインホールに匹敵する柔軟性を獲得していたのだ。
そして育てたのは聖女だ、惜しい才能だ!
あと十歳いや五歳若ければ嫁にしたいぐらいだが……残念だな……
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