第2話 アクション俳優が転生したようです。
「お、ここがダンジョンか。ぱっと見、ただの洞窟だな」
どうもこんにちは。俺は鈴木巧。35歳の男性、でした。アメリカで腹撃たれて死んだあと、目を覚ますとそこには女神と名乗る人物がいた。
どうやら「ダンジョンシステム」とやらを地球に適応した瞬間に俺が死んで、バグで肉体が消失したらしい。公平を掲げる女神様的にはそれが許せないらしく、俺は新しい肉体を使って転生したってわけ。
「ダンジョンシステム」についても少し説明があったが、全容は分からん。まあ、ゲームとかで出てくるダンジョンが、現実世界に登場するようになった、って感じだな。やっぱり魔物や宝物なんかもあるらしい。わくわくするな!
まあ、ダンジョンについてはいいんだけど、問題は俺の身体だ。天使のデータを元に作るって聞いていたから、ある程度予想はしていたが――俺、女になってる。
身長もだいぶ低くなったな。女神の話によると、俺は10歳らしい。まだ鏡を見ていないからなんとも言えないが、髪は金髪になっているし、西洋人っぽい顔をしているのかもしれないな。
まあ、とりあえず人を探そう。転送されたここは、ダンジョンの1階層って言ってたから、すぐ見つけられると思うんだが……お、この道、足跡が多いな。ここを歩いて行ったら、誰かに会うだろう。
というわけで、てくてくと歩いて行くと、地上に繋がる開けた場所に到着した。人もいくらかいるな。あれは受付だろうか? 一先ず、あそこに行ってみるか。
……と思ったら、逆に向こうがこっちに来てくれた。
「お嬢ちゃん、1人で来たの? ここは危ないところだよ?」
こちらに視線を合わせるためにしゃがみ込みながら、心配そうに尋ねてくるお姉さん。なんとなくだが、いい人そうだな。
「ううん、はぐれちゃったの。でも、電話持ってないから連絡できなくて。お姉ちゃん、電話貸してくれない?」
若干の抵抗はあるものの、演技なんて、これまで何回もやって来た。幼女のふりをするぐらい、朝飯前だ。やったことないけど。
「電話番号は覚えてるの?」
「うん、大丈夫」
「分かった。じゃあ、こっちにおいで。お部屋があるから、そこでお電話しよっか」
「うん!」
……さて。女神の話だと、ここは10年後の世界らしいが、連絡はつくだろうか?
まずは1人目。
『お掛けになった電話番号は……』
期待はしてなかったが、やっぱりだめか。次は本命の2人目!
――プルル、プルル……プルル、プルル……
『……どちら様ですか?』
「よし、繋がった! お前、洋介であってるよな?」
俺の記憶にある声より、若干老化しているようだが、この声は洋介で間違いないはずだ。
『……ええ、そうですが。君は一体……?』
「分からないのも無理はないが、なんとなく気づいているんじゃないか? 俺、巧だよ」
『…………』
あれ、切れたか? いや、無言なだけか。
『なるほど、10年前に死んだはずの親友が、女の子の声でいきなり電話してきたと。意味が分かりませんね。何かの詐欺ですか?』
「いやいや、待てよ。そもそもこの番号、身内にしか教えてないやつだろ? そんな詐欺に、この番号は使えねぇよ」
『ですよね。分かってますよ』
「おい、なら聞くなよ」
『冗談ですよ……さて、無駄話はこれぐらいにしておいて、君が巧であることを証明してください』
俺が、巧であることの証明、ねぇ……あぁ、そうだ。これがあった。
「お前が薫さんにプロポーズするか悩んでるとき、俺の家に転がり込んできて、ベロベロに酔いながらもずっと飲み続けて、終いには、俺の家で派手に嘔吐してくれたことがあったな。あとは……そう、お前が高校生の時、不良どもに喧嘩売られて……」
『――ストップ、ストップ、もう止めてください。十分ですよ。というか、そんな黒歴史掘り返さないでください』
「いいじゃねぇか。手っ取り早いだろ?」
『……えぇ、まぁ、それは否定しませんが。それで? 一体どうして今更連絡してきたんですか?』
「あぁ、実はついさっき生き返ったところでな。今はどっかのダンジョンの受付にいる。そこのお姉さんにこの電話も借りてるんだ」
『……詳しい話は、直接会ってから話しましょう。そのダンジョンの名称は分かりますか?』
「ちょっと待てよ……。おーい、お姉さん!」
部屋の外で待機してくれていたお姉さんを、俺は部屋に呼んだ。
「はーい、どうしたの?」
「ここって、なんていうお名前のダンジョンなの?」
「ここはね、"小鬼の迷宮"と呼ばれるダンジョンだよ」
「そっか! ありがとう!」
「どういたしまして」
「ここは"小鬼の迷宮"っていうらしいよ」
『……ふふっ。分かりましたよ巧ちゃん? 迎えを送るので、しばらくそこで待っていてください』
「はーい!」
『それでは、またあとで』
はぁ……なんとか前世の親友とコンタクトが取れたし、これで一先ずは安心かね。
「これ、ありがとう! しばらくしたら、お迎えがくるらしいから、それまでここにいてもいい?」
「もちろん、いいわよ。お菓子と飲み物を用意するね」
「いいの? ありがとう!」
それからしばらく、お姉さんと話していると、ついに迎えの人がやってきた。
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