第40話 反撃が始まったようです。
――痛ぇえぇぇえええッ!
ブレスを跳ね上げた反動で、俺の腕はボロボロだ。
いや、まぁ、こうでもしないと被害がヤバイことになるから仕方ないんだけど……それにしても、痛い。調子に乗って、てきとーに「奥義天跳」とか言ってみたけど……ダメだな。見栄えはいいかもしれないけど、毎回名前を考えるのがめんどくさい。
「さて、どう動くか……」
腕を回復薬で癒し、改めて現状を確認する。
街への被害は、想像よりも少ない。伊達にAランクパーティではないようだ。手下として呼び出したワイバーンの数はそれなりに多いけれど、これだけなら、なんとか対処は可能だ。
問題は――あのアクアドラゴン。
迷宮内のワイバーンを殺しまくったのだろう。魔力量がとてつもない。
ふむ……やはり人手が足りない。ある程度はワイバーンの数を減らすのに貢献したほうがいいか?
――とそこで、彩姉から魔力の高まりを感じた。
空を覆うように魔法の矢が現れ、雨のように降り注ぐ。
「おー、圧巻だな」
一本の矢にワイバーンを殺せるほどの力はないものの、何本もの矢がワイバーンを襲うことで、少なくないダメージを与えていた。
なるほど、彩姉はワイバーンの殲滅に力を注ぐらしい。さっきの一撃は、彩姉の魔力の半分は使う大技だ。ならば俺は、アクアドラゴンに専念するとしよう。
「さぁ、お前の相手は俺だ」
距離があるのでアクアドラゴンの耳には入っていないだろうが、それでもアクアドラゴンは、ブレスを弾いた俺を敵と認めたのか、こちらに意識が向けられた。
彩姉たちを巻き込まないようにするため、俺からアクアドラゴンへと接近する。
そしてアクアドラゴンもそれに応えるように、俺に向かって飛翔を始めた。
――速いッ!?
20メートルはありそうな巨体にも関わらず、そのスピードは弾丸のように速かった。
あっという間に距離が詰められ、その鋭利な爪による攻撃が繰り出される。
俺はその攻撃をなんとか回避したものの、風圧により体が吹き飛ばされた。
「……ははっ、やべぇなこれは」
少し距離ができた俺に向かって、水でできた槍が何本も射出される。
その魔法の合間を縫うように、俺は再び接近し、魔力を込めた刀で切りつけた。
「チッ! 堅いッ!」
その一撃は、アクアドラゴンの鱗にわずかな傷を負わせるだけに終わった。
アクアドラゴンは体をひねり、尻尾による攻撃をする。
距離を取ろうとしたが間に合わず、俺は地面へと吹き飛ばされた。
……なんとか受け身をとり、ダメージを減らすことができたが、それでもあばらが何本か折れたな。
回復薬を用い、空中にいるアクアドラゴンを見据える。
さて、どうしたものか――?
◇
「アクアドラゴンは向こうに任せて、私たちはワイバーンを殲滅することに集中しましょう!」
「一人であれの相手をするだって!? 無茶だ!」
Aランクハンターの男がそう叫ぶ。
私も正直、無茶だとは思う。だけど――
「人手が足りない現状、そうするしかありません! 大丈夫、彼女ならきっと一人でも耐えることはできます!」
1対1でアクアドラゴンの相手をするなら、私より巧美ちゃんの方が向いている。そして私は、巧美ちゃんよりも対集団が得意だ。
つまり、私の役割は――
「いち早くワイバーンを殲滅し、加勢に向かいましょう!」
先ほどの大規模な魔法により、大半のワイバーンは翼がダメになり、飛行できなくなっている。
私は、まだ飛べそうな余力を残しているワイバーンから順に狙いを定め、魔法の矢を放っていった。
これで、彼らの飛行能力は奪えたわ。
「さぁ、みなさん! サクサクと狩っていきましょう!」
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