第30話 遠距離攻撃の手段を増やすようです。



「――そろそろ、遠距離攻撃の練習もすべきか?」


〈確かにお嬢、近接戦闘ばっかりよね〉

〈魔法? それとも弓とか?〉

〈遠距離攻撃も出来ると便利よね〉


 俺はまた蜥蜴人の迷宮で配信しており、ハイリザードマンを狩っていた。


 相手が毎回魔法を使った遠距離攻撃をしてくるから、俺も練習した方がいいかなと思い始めたのだ。


「武器を持ち替えて攻撃するのはめんどくさいから、魔法を使おうと思う」


 俺の適性は、光属性と無属性。光属性はどちらかと言えば支援向きで、攻撃向きとは言えない。

 やはり、最近練度の上がっている無属性魔法でやるべきだな。


「久しぶりやってみるか――マナバレット!」


 少し離れた位置にいたハイリザードマンに、魔力で作った弾丸を放つ。


 だが、ハイリザードマンの鱗にはじかれ、有効打とはならなかった。


「むぅ……これじゃあダメだな」


〈これまでサクサク斬ってたけど、あの鱗かなり硬いからなぁ〉

〈普段銃を使わないから、イメージが足りないんじゃない?〉

〈いっそ、剣の形にした方がいいかもね〉


「ふむ、剣の形ねぇ……クリエイトソード」


 試しに、いつも使っている刀をイメージして、魔力を具現化させる。


 ――ふむ、なかなかいい出来だな。


 反撃とばかりに水の玉を放ってきているハイリザードマン。


 俺はその魔法を切り裂くように、魔力で出来た刀を射出する。


「リリース!」


 おぉ、しっかり魔法を斬ることが出来たな。


 そのままハイリザードマンに向かって、魔力で出来た刀――魔刀と呼ぶか――を操作する。


 致命傷を与えることは出来なかったが、傷をつけることは出来た。


「この形の方が、俺に向いてそうだな」


〈おー、カッコイイ!〉

〈ロマンがあるね!〉

〈何本も作るのはキツい?〉


「魔力量的には……後1本が限界かな。2本使って攻撃してみよう」


 怒ったハイリザードマンがこちらに接近しようとするが、それを阻止するように魔刀を操作。


 そしてそれと同時に――


「クリエイトソード」


 ――さらに1本追加する。


「あー、2本となると、複雑な操作がムズいな」


 とりあえず俺は、二刀流のように2本の魔刀を操作してみた。


 最初は慣れず、ぎこちない動きだったが、徐々に滑らかになっていき、最後にはハイリザードマンの首を掻っ切った。


「ふむ、これは練習しがいがあるな」


〈おーーー!〉

〈うっまwwww〉

〈実質、手が増えたようなもんやん!〉


「よし、この調子でやって行こうか!」









 魔刀を使い始めてから、一週間後。


 俺は今、蜥蜴人の迷宮のボス戦に挑んでいる。


「ガァァアアッ!」


 リザードマンロードが召喚したハイリザードマン達を既に殲滅し、一騎打ちへと持ち込んでいた。


「フッ――!」


 接近し、リザードマンロードと切り結びつつ、魔力刀で背面から攻撃する。


「ガァッ!」


 魔力刀に気を取られ、リザードマンロードの意識が俺から外れた。


「……イリュージョン」


 俺は光魔法で自分の幻影を作り、死角へ入り気配を殺す。



 そして、ハイリザードマンが幻影を攻撃し、油断した所で再び接近。そのまま首を斬りつけた。



「――チッ! 一撃では無理か!」



 傷をつけることはできたものの、致命傷とはならなかった。



 そして、リザードマンロードから魔力の高まりを感じ、俺は一旦後退した。



「ガァァアアッ!」


 水魔法により槍が8本作られ、一気に俺に向かって放出された。



「なら、魔法比べと行こうかッ!」



 俺も魔刀を8本作り出し、相殺させる。



 その後接近した俺に、リザードマンロードは手に持つ槍で迎え撃つ。


 ハイリザードマンより巧みな槍捌きだが……オヤジほどではない。


 俺は槍を跳ね上げて、槍の間合いの内側へと入る。



「――ガァッ!」



 だがここで、それを待っていたかのように、リザードマンロードは口から水属性のブレスを吐き出す。


 この近距離で、この高火力の魔法。


 これに被弾すると、間違いなく致命的なダメージを負うだろう。



 だがまあ――魔力の流れから、このタイミングで魔法を放つことは予想出来ていた。



「――ガッ!?」


 魔刀を放出し、リザードマンロードの口を強制的に塞ぐ。


 すると行き場を失ったブレスが暴走し、リザードマンロードに大きなダメージを与えることができた。


 そして追撃とばかりに、リザードマンロードの首を一閃。


 こうしてリザードマンロードは魔石を残して消滅したのだった。



「ふぅ……」



 納刀後、カメラに向き直る。



「だいぶこの魔刀の扱いにも慣れてきたな。そしてこれで――蜥蜴人の迷宮踏破だ!」


〈88888888〉

〈踏破おめでとう!!!〉

〈魔刀の扱える本数も順調に増えてきてるなぁ~。すごい〉

〈さすがお嬢!〉

〈ハンターになって3か月ほどで、Cランクダンジョン踏破すんのはヤバすぎるwwww〉



 この調子なら、最初の雑談配信でも宣言した「1年以内にSランクハンターになる」という目標も、現実味を帯びてきたな。



「――さて、毎回恒例の宝箱開封の儀を始めるぞ!」


 初めてのCランクダンジョンの宝箱だ。良いやつが出ると嬉しいなぁ……。


「何が出るかな、何が出るかな~っと。あー、ハイポーションか」


 まあ、悪くはないんだけどなぁ……。


「俺、あんまり被弾しないし。回復魔法も使えるからなぁ」


〈草〉

〈ハズレではないね〉

〈そういえば、お嬢まだ死に戻り経験なしか〉

〈普通はもっと喜ぶぞ?〉



「……まぁ、備えあれば患いなしって言うしな」



 さて、これから何回か蜥蜴人の迷宮を周回して、次はBランクハンターへの昇級試験だな。なかなかいいペースじゃないか。



「よし、今回の配信はここまで! ごきげんよう!」



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