第60話 これからも活動を続けるようです。



 配信が急に途切れてしまったことを謝罪し、リスナーたちに無事であることを伝えた後、俺は彩姉の眠る病室へと足を運んだ。


「……この感じるつながりが、眷属であることの証、か」


 おそらく、無意識に眷属化が進んでいたのだろうな。彩姉の魔力吸収量が、悪魔の迷宮の攻略途中から上昇したのも、その影響だと思われる。


「さて、やるか」


 彩姉に手をかざし、神力を操る。


 失敗すれば、確実に彩姉は死んでしまうので、出来るだけ慎重に、正確に……。



「――ふぅ、なんとかなったな」


 うむ、我ながら上手くいった。あとは気付けをするだけだ。



「……んっ、巧美ちゃん?」


「おはよう、彩姉。体の調子はどうだ?」


「んー、ん? 悪いどころかむしろ良くなっているような……いや、え? 魔力量が凄い増えてるんだけど?」


「あー、たぶんそれは俺が神になった影響が、眷属の彩姉に及んだんだろう」


「……へ?」


 そこから俺は、彩姉が眠っていた間に起きたことを一つずつ説明していった。


「……なるほど。まぁ、巧美ちゃんが嘘つく理由もないもんね。そっかぁ、私不老になったんだ」


「事後報告になってしまって、すまんな」


「いいよ、もしそうならなかったら、私は死んでいたわけだし。それに、巧美ちゃんを1人にしたくなかったから、むしろ好都合よ」


「……そっか、ありがとう。これから末永く、よろしくな」


「――! もちろん!」


 ……さて、やることは山積みだな。









「むぅ……」


「まだ拗ねてるの、巧美ちゃん?」


「別に拗ねてないし」


「うん、分かるよ。負けたのが悔しかったんだね」


「……次は勝つ」


「そうだね」


 絶対勝てると思ったんだけどな……なんで神になっても、オヤジに勝てないんだよ。まったく神力は感じなかったが、実はオヤジも神なんじゃないだろうな?


「いつか絶対にボコす……」


「今日はお休みする?」


「いや、大丈夫だ」


 ふぅ……と息を吐き、俺は気持ちを切り替える。


「いつでもいいぞ」


「了解、それじゃあ始めるね」



「――みなさん、ごきげんよう!」


〈ごきげんよう!〉

〈お嬢、今日も可愛いね〉

〈ごきげんよう!!!〉

〈元気そうでなにより〉

〈悪魔の迷宮踏破おめでとうございます!〉


 コメント欄をよく見ると、日本語や英語だけではなく、様々な言語があふれていた。


「この配信も、随分国際的な感じになったなぁ」


〈そりゃ、ねぇ?〉

〈ほぼ間違いなく、今世界で一番注目集めてるハンターだし〉

〈強さはもちろんやけど、お嬢可愛いし〉


「そうかそうか、俺が可愛いから見にきてくれているのか。なら、サービスとしてこんなものを見せてやろう」


 そう言って俺は神力を操作し、背中に翼を広げた。


「むふふ、どうだ!」


〈え???女神降臨した?〉

〈天使だ……〉

〈あまりにも神々しい〉

〈お嬢、マジ神〉


「良い反応をありがとう。まぁ、ルシファーのマネにすぎないんだが……これ、戦闘には邪魔だな。消すか」


〈あぁ、なんかもったいない〉

〈そんな実用性だけ求めなくても〉

〈草〉


「……さて、ハンターになった時に、俺は悪魔の迷宮を踏破することを目標としていた。だが、それはもう達成してしまったな」


〈おめでとう!!〉

〈めでたいけど、え、このまま引退とかしちゃうの?〉

〈もっとお嬢たちの活躍見たい!〉


「ああ、安心してくれ。当分は配信者を引退するつもりはないぞ。あれ、というか"引退"って、俺は何から引退するんだ……?」


「いや、巧美ちゃん。忘れてるかもしれないけど、一応神武ギルド公式の広報担当ハンターだからね?」


「ん、そういえば一応、広報担当だったか」


〈草〉

〈全く広報活動はしてないけど、普通に活躍するだけで充分やし〉


「んんっ、さて、世の中には六大迷宮と呼ばれるダンジョンが、悪魔の迷宮の他にまだ5つ存在している。とりあえずは、これら全ての踏破を一つの目標とする」


〈全部未踏破ダンジョンなんですけどねぇ〉

〈お嬢たちならいけるんやろうな、っていう確信あるわ〉


「あとはそうだな。もちろんメインはダンジョン配信だが、もっと色んなことに挑戦していこうと思う。その一環として、なんと……」


〈なんと……?〉

〈どぅるどぅるどぅるどぅる〉

〈溜めるねぇ!〉



「荒河巧美は、映画に出演することになりました!」



〈映画!?!?〉

〈すげぇ!!!〉

〈でっけぇスクリーンでお嬢見れるってことか!やったぜ!〉

〈え、お嬢演技出来るん???〉

〈どんな映画に出演するんですか?〉

〈何役を務めるん?〉

〈お嬢、顔も声もいいから、絶対売れる〉

〈西園寺財閥って芸能界にもエグいコネ持ってそう〉



「まぁ、詳細は追って連絡するから、気長に待ってくれ」



 ずっと麻衣から、一緒に演技をしようって誘われていたからな。ハンターとして一区切りついた今が、ちょうどいい機会だと思ったんだ。



「さて、実は何人ものリスナーから要望が来ていたんだが、今回はそれをやってみようと思う」


〈何するんだろ?〉

〈弓姫との結婚発表かな?〉

〈わくわく〉



「……さて、準備はいいか? 彩姉」


「うん、いつでもいいよ」



 彩姉がカメラを空中に固定し、弓を構え、俺と相対する。



「今回は、俺と彩姉2人で模擬戦をしてみようと思う。俺が言うのもなんだが、世界最高峰の2人だ。近距離を得意とする俺と、遠距離を得意とする彩姉。……良いほこたて対決だとは思わないか?」


〈うぉおお!マジか!〉

〈お互いのこと知り尽くしている者同士が戦うとどうなるんやろ?〉

〈わくわくが止まらん!〉



 神になったり、不老になったり、眷属ができたりしたが……結局、俺のやりたいことは、変わらない。



「さぁ、俺たちの舞台戦いをその目に焼き付けろ」



 ――いざ、ショータイム!




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一旦この物語はここで【完結】です!


みなさまの応援がなければ、まず間違いなくここまでたどり着かなかったと思います! 本当にありがとうございました!


ぜひ、一言でも構いませんので、作品に対する【コメント】をしていただけると幸いです!

「このシーンが良かった」「ここは分かりにくかった」など何でも構いません!


また、後日談も書くかもしれませんので、ぜひ作品の【フォロー】と、ついでに作者(holin)のフォローもよろしくお願いします!


近況ノートに「あとがき」も投稿しますので、気になる方はご覧ください。


それではみなさま、ごきげんよう! holinでした!

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