第60話 これからも活動を続けるようです。
配信が急に途切れてしまったことを謝罪し、リスナーたちに無事であることを伝えた後、俺は彩姉の眠る病室へと足を運んだ。
「……この感じるつながりが、眷属であることの証、か」
おそらく、無意識に眷属化が進んでいたのだろうな。彩姉の魔力吸収量が、悪魔の迷宮の攻略途中から上昇したのも、その影響だと思われる。
「さて、やるか」
彩姉に手をかざし、神力を操る。
失敗すれば、確実に彩姉は死んでしまうので、出来るだけ慎重に、正確に……。
「――ふぅ、なんとかなったな」
うむ、我ながら上手くいった。あとは気付けをするだけだ。
「……んっ、巧美ちゃん?」
「おはよう、彩姉。体の調子はどうだ?」
「んー、ん? 悪いどころかむしろ良くなっているような……いや、え? 魔力量が凄い増えてるんだけど?」
「あー、たぶんそれは俺が神になった影響が、眷属の彩姉に及んだんだろう」
「……へ?」
そこから俺は、彩姉が眠っていた間に起きたことを一つずつ説明していった。
「……なるほど。まぁ、巧美ちゃんが嘘つく理由もないもんね。そっかぁ、私不老になったんだ」
「事後報告になってしまって、すまんな」
「いいよ、もしそうならなかったら、私は死んでいたわけだし。それに、巧美ちゃんを1人にしたくなかったから、むしろ好都合よ」
「……そっか、ありがとう。これから末永く、よろしくな」
「――! もちろん!」
……さて、やることは山積みだな。
◇
「むぅ……」
「まだ拗ねてるの、巧美ちゃん?」
「別に拗ねてないし」
「うん、分かるよ。負けたのが悔しかったんだね」
「……次は勝つ」
「そうだね」
絶対勝てると思ったんだけどな……なんで神になっても、オヤジに勝てないんだよ。まったく神力は感じなかったが、実はオヤジも神なんじゃないだろうな?
「いつか絶対にボコす……」
「今日はお休みする?」
「いや、大丈夫だ」
ふぅ……と息を吐き、俺は気持ちを切り替える。
「いつでもいいぞ」
「了解、それじゃあ始めるね」
「――みなさん、ごきげんよう!」
〈ごきげんよう!〉
〈お嬢、今日も可愛いね〉
〈ごきげんよう!!!〉
〈元気そうでなにより〉
〈悪魔の迷宮踏破おめでとうございます!〉
コメント欄をよく見ると、日本語や英語だけではなく、様々な言語があふれていた。
「この配信も、随分国際的な感じになったなぁ」
〈そりゃ、ねぇ?〉
〈ほぼ間違いなく、今世界で一番注目集めてるハンターだし〉
〈強さはもちろんやけど、お嬢可愛いし〉
「そうかそうか、俺が可愛いから見にきてくれているのか。なら、サービスとしてこんなものを見せてやろう」
そう言って俺は神力を操作し、背中に翼を広げた。
「むふふ、どうだ!」
〈え???女神降臨した?〉
〈天使だ……〉
〈あまりにも神々しい〉
〈お嬢、マジ神〉
「良い反応をありがとう。まぁ、ルシファーのマネにすぎないんだが……これ、戦闘には邪魔だな。消すか」
〈あぁ、なんかもったいない〉
〈そんな実用性だけ求めなくても〉
〈草〉
「……さて、ハンターになった時に、俺は悪魔の迷宮を踏破することを目標としていた。だが、それはもう達成してしまったな」
〈おめでとう!!〉
〈めでたいけど、え、このまま引退とかしちゃうの?〉
〈もっとお嬢たちの活躍見たい!〉
「ああ、安心してくれ。当分は配信者を引退するつもりはないぞ。あれ、というか"引退"って、俺は何から引退するんだ……?」
「いや、巧美ちゃん。忘れてるかもしれないけど、一応神武ギルド公式の広報担当ハンターだからね?」
「ん、そういえば一応、広報担当だったか」
〈草〉
〈全く広報活動はしてないけど、普通に活躍するだけで充分やし〉
「んんっ、さて、世の中には六大迷宮と呼ばれるダンジョンが、悪魔の迷宮の他にまだ5つ存在している。とりあえずは、これら全ての踏破を一つの目標とする」
〈全部未踏破ダンジョンなんですけどねぇ〉
〈お嬢たちならいけるんやろうな、っていう確信あるわ〉
「あとはそうだな。もちろんメインはダンジョン配信だが、もっと色んなことに挑戦していこうと思う。その一環として、なんと……」
〈なんと……?〉
〈どぅるどぅるどぅるどぅる〉
〈溜めるねぇ!〉
「荒河巧美は、映画に出演することになりました!」
〈映画!?!?〉
〈すげぇ!!!〉
〈でっけぇスクリーンでお嬢見れるってことか!やったぜ!〉
〈え、お嬢演技出来るん???〉
〈どんな映画に出演するんですか?〉
〈何役を務めるん?〉
〈お嬢、顔も声もいいから、絶対売れる〉
〈西園寺財閥って芸能界にもエグいコネ持ってそう〉
「まぁ、詳細は追って連絡するから、気長に待ってくれ」
ずっと麻衣から、一緒に演技をしようって誘われていたからな。ハンターとして一区切りついた今が、ちょうどいい機会だと思ったんだ。
「さて、実は何人ものリスナーから要望が来ていたんだが、今回はそれをやってみようと思う」
〈何するんだろ?〉
〈弓姫との結婚発表かな?〉
〈わくわく〉
「……さて、準備はいいか? 彩姉」
「うん、いつでもいいよ」
彩姉がカメラを空中に固定し、弓を構え、俺と相対する。
「今回は、俺と彩姉2人で模擬戦をしてみようと思う。俺が言うのもなんだが、世界最高峰の2人だ。近距離を得意とする俺と、遠距離を得意とする彩姉。……良いほこたて対決だとは思わないか?」
〈うぉおお!マジか!〉
〈お互いのこと知り尽くしている者同士が戦うとどうなるんやろ?〉
〈わくわくが止まらん!〉
神になったり、不老になったり、眷属ができたりしたが……結局、俺のやりたいことは、変わらない。
「さぁ、俺たちの
――いざ、ショータイム!
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一旦この物語はここで【完結】です!
みなさまの応援がなければ、まず間違いなくここまでたどり着かなかったと思います! 本当にありがとうございました!
ぜひ、一言でも構いませんので、作品に対する【コメント】をしていただけると幸いです!
「このシーンが良かった」「ここは分かりにくかった」など何でも構いません!
また、後日談も書くかもしれませんので、ぜひ作品の【フォロー】と、ついでに作者(holin)のフォローもよろしくお願いします!
近況ノートに「あとがき」も投稿しますので、気になる方はご覧ください。
それではみなさま、ごきげんよう! holinでした!
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