第59話 神格を得たようです。
「……ここは」
「おはようございます、巧美さん」
「……あぁ、お久しぶりです、女神様。俺はまた、死んだので?」
ふと気が付くと、俺は転生時に訪れた空間に存在していた。そして転生の手続きをしてくれた女神様も同様に存在している。
……というか、前会った時は分からなかったけど、女神様の神力パネェ。
「いえ、死んではいませんよ。条件を満たしましたので、こちらの空間にお呼びしたのです」
「条件?」
「それに関しましては私ではなく――おっと、お早い到着ですね、
「そりゃ、
「狐さん……」
いつの間にかそこに存在していたのは、俺が幼いころに出会った狐さんだった。
……底が知れねぇな、狐さん。俺とは次元が違うとしか言えない力を感じる。
「改めてのご報告ですが、巧美さんは無事に、
「うん、どうやらそのようだね。
相変わらず中性的で、優し気な表情を見せる狐さん。
「……お久しぶりです。ところで、なんとお呼びすれば?」
「ふふっ、変わらず狐さんでいいよ」
「分かりました。狐さんには、色々聞きたいことがあるのですが……」
「うんうん、そうだろうね。何から話そうか……そうだね。まずは私の目標を伝えようか」
「目標……?」
「そう、目標。ダンジョンシステムを適用した
……つっこみたい気持ちは一旦仕舞うとしよう。
「私はね、巧を
……俺を神へと育てるのが、狐さんの
「……なる、ほど。では、俺が神格を得たというのは?」
「そのまま、
「……神力を一定量以上保有することが、神格を得る条件?」
「概ねその通りだよ」
なるほど。そして、その神力を保有するには、格と信仰が必要。
……うわぁ、ということは?
「ダンジョンシステムの目的って、人を神へと育てることですか?」
「ふふっ、察しが良いね。私が試しに作ってみたんだ。なかなか良いシステムだと思わない?」
「試しに作ってみたって……えぇ?」
「でも、今回はちょっと、贔屓が過ぎちゃったね。巧が効率よく格を上げられて、なおかつ自由に行動できるようにって無理を通したんだ。でもそれによる穴ができて、逸脱種なんてイレギュラーが生まれるようになっちゃった。これは反省だね」
「ええ、反省してください主様。システムが崩壊しないようにするの大変だったんですからね?」
え、俺のせいで逸脱種生まれたの……?
「……なんか俺のために、すみませんね」
「いえいえ、巧美さんは悪くありませんよ。でも、主様みたいな眷属に無茶振りをする神にはならないように気を付けてくださいね」
「ひどい言い草だね。ちゃんと世界が崩壊しても問題ないように、コピーの世界を用意して、システムを適用したのに」
「コピー?」
いや、さっきも世界作ったとか言ってたっけ?
「うん、巧が死んだあたりまでの世界をコピーして、そっちにダンジョンシステムを適用したんだ」
「……?」
ちょっと何を言っているのか分からない。
「まぁ、あんまり気にする必要はないよ。多少は、前世の記憶と齟齬が生じたかもしれないけどね」
「は、はぁ……」
さらっと流せる内容ではないと思うが……いや、気にするだけ無駄か。世界五分前仮説とかと同じノリだろう、きっと。
「さて、巧には2つの選択肢がある。1つ目は神となって、これからは私たちとともに過ごす。神としての研修がさっそく始まる感じだね」
ふむ?
「2つ目は神となって、しばらくはこれまで通り過ごす。特にしなければならないことはないよ。遅くとも、あの世界が崩壊するタイミングで研修スタートだ」
「……神になる以外の選択肢はないのですね?」
「どうしてもというなら、断ることもできるけど、いいの? 巧の眷属になってる、西園寺彩は死んでしまうよ?」
「どういうことですか?」
「巧も理解してると思うけど、西園寺彩の魂は崩壊寸前だ。あれは神にしか治せない。あ、ちなみに主が死ねば、眷属も死ぬよ。一心同体だからね」
なるほど、神になることはほぼ確定ってことか。
「……分かりました。ちなみに他に、眷属化の影響はありますか?」
「そうだね……寿命が無くなったり、神力を使えるようになったりかな? 他にあったかな?」
「主となった者は、眷属に対する絶対的な命令権を有します」
「ああ、それがあったね。滅多に命令なんてしないから忘れていたよ」
なるほど……なら、答えは決まったな。
「――2つ目の選択肢でお願いします。まだ俺は、色んな人と関わっていきたいので」
「……うん、なんとなく巧はそう言うと思っていたよ。それじゃあ、巧は今から――戦神だ。その名の通り、戦いを司る神だね」
狐さんがそう告げた瞬間、俺の魂が大きく変化した。
「うん、神化おめでとう。また何か困ったことがあったら、気楽にこの神界へとおいで。今の巧なら行き来は自由だ」
「……分かりました。それじゃあ、俺は一旦向こうに戻ります」
「ああ、いってらっしゃい。次は眷属と一緒においで」
「ええ、そうしますね。それでは、また」
俺はそう言って、転移を発動させたのだった。
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