第12話 質問を受け付けるようです。



 質問をコメントで受け付けると言った途端、コメントの流れが速くなった。


 そして俺は、数多くの質問の中から、答えられそうなものを選んでいく。


「『次はダンジョンどこにする予定ですか?』――そうだな。とりあえずDランクに昇級して、その後はDランクダンジョンへ向かうつもりだ」


〈Dランクへの昇級は余裕やろうね〉

〈散々、ゴブリンをソロで倒してたしな〜〉

〈Dランクダンジョンもソロで行くん?〉


 ハンターランクの昇級に関してだが、Bランクまでは、単純に実力が認められればいい。具体的には、現在のランクのモンスターをソロで安定して討伐できること。これが条件である。


 前回のボス、ゴブリンロードはDランク。つまり俺は既に、ギリギリではあるが、Cランクハンター相当の実力があるということ。


「Dランクダンジョンもソロ攻略の予定だ。前回、Dランクモンスター相手にも、ダメージが与えられることは確認できたからな」


〈流石にゴブリンロードは一撃で倒せなかったけど、倒せてるだけで凄い〉

〈今後もソロか〜〉

〈Dランクダンジョンのソロ攻略とか、ダンジョン1回しか潜ってない人が、やろうとする事じゃないけどな〉



 それからもしばらく、ダンジョンに関する質問が続き、それに答えていった。


 そしてある程度答えたところで、ダンジョンに関する話題は一旦落ち着き、話題は俺の私生活へと移っていった。



「『武神って厳しいですか?』――修行中は限界ギリギリまで追い込まれるが、それ以外だとただの爺さんだぞ。介護の必要はまだ無いがな」


〈祖父と孫ぐらい歳離れてるし、普段は甘やかしてそう〉

〈介護必要な武神が想像つかんww〉

〈男手一つで女の子育てるのは大変そうやな〉


 オヤジはずっと独身だったから、普通に料理や家事も出来るんだよな。一緒に暮らすようになって、色々新しい発見があったのは面白かった。


「『母親代わりは欲しいと思ったことないの?』――強いて言うなら彩姉の母親が、それに該当するかな。色々相談に乗ってくれているよ」


 薫さんは「娘が増えたみたいで嬉しいわ」とか言いながら、よくお節介を焼いてくれる。中身が"俺"だと分かっていながら、よく俺を着せ替え人形にするので、もはやそれも慣れてしまった。


 ……む、家族についての質問を答えていったからか、何故俺が養子になったか等を尋ねる質問が少し増えたな。答えようがないし、少し軌道を変えていこう。


「『勉強って得意な方?』――めちゃくちゃ得意って訳では無いな。そもそもあまりやる気がない」


〈それでええんか、高校生ww〉

〈勉強は大事やけどね〉

〈まぁ、ハンターに学歴は関係ないか〉


「授業をサボったりはしてないぞ? むしろ、授業中しか勉強に時間を当てたくないから、そこで完結するように集中している」


〈偉すぎる〉

〈授業は睡眠の時間やと思ってるワイとは大違い〉

〈居眠りしなかった日がないわ〉


「『得意教科は何ですか?』――うーん、自慢できるとしたら、英語かね? 俺、一応英会話できるし」


 前世では、海外の映画にも出演していたからな。世界的な有名人になりたかったが為に、頑張って勉強したんだよな。懐かしい。


〈英語話せんの裏山〉

〈海外の配信者ともコラボ出来るじゃん〉

〈海外のダンジョンにも行く予定ある?〉

〈なんか英語で話してみてや〉


 海外勢とのコラボか……将来的にはありだな。どうせ、アメリカのダンジョンには行こうと思っていたんだ。


「じゃあ少しだけ、英語で話すぞ? 『まだ先の話ではあるが、Sランクハンターに昇級したら、六大迷宮の1つ、アメリカの"悪魔の迷宮"に行くつもりだ。その時を楽しみにしておいて欲しい』」


 悪魔の迷宮。六大迷宮、あるいは始まりの迷宮と呼ばれるダンジョンの1つだ。未だに最下層まで攻略はされていない未踏破ダンジョンであり、そのランクは脅威のS。



 ――そして何より、俺が死んだ場所のすぐ近くで出来たダンジョンだ。



 運命的な何かを感じずにはいられず、俺はこのダンジョンへ行くことを決めていた。


〈流暢すぎて、なんも分からんかったんだが〉

〈『やべぇこと言ってんな!』〉

〈コメ欄に海外ニキ湧いてるやん〉

〈いずれ、悪魔の迷宮行くってさ〉

〈リスニングは苦手なんだよ〉

〈日本語の解説コメント感謝〉


「まぁ、さっきも言った通り、まだまだ先の話だ。切り替えて、他の質問に行こう」


 俺がそう言うと、悪魔の迷宮に関して盛り上がりを見せていたコメント欄も徐々に落ち着いていった。


「『周りから呼ばれているあだ名は?』――あだ名か。何かあったかな……」


「え?」


 彩姉が何言ってんだこいつ、みたいな顔で俺を見つめる。


「俺にあだ名ってあったっけ?」


「いや、いつも"お嬢"って言われてるでしょ?」


〈お嬢ww〉

〈お嬢、しっくりくるな〉

〈これからワイもお嬢って呼ぶわ〉


 主にオヤジの門下生や、洋介の部下が俺に対して使うものだ。お嬢様は止めてくれ、って言ったら"お嬢"になったんだよな。


「え、あれってあだ名か?」


「あだ名じゃなかったら、何になるの?」


「……それもそうか」



 それからもいくつか質問に答えていったが、その過程で俺の"お嬢"呼びが定着していったのだった。



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