第13話 Dランクハンターになったようです。



「――それでは、本日の試験は以上となります。お疲れ様でした」


 俺がいるのはハンター協会の一室。ちょうど今、昇級試験が終わり、更新されたハンターカードが配られたところだ。


 Dランクへの昇級試験は受験人数が多く、集団での試験だった。ほとんどが成人であり、中には俺の容姿に釣られて突っかかってくる奴も居たが、試験が進むにつれてその威勢も失われていった。


 まあ、気持ちは分からんでもない。自分で言うのもあれだが、俺は可愛いからな! 幼気な美少女の前で、いい格好をしたかったのだろう。結局、空回りして落ちたようだが。


 そして俺の配信を見てくれていた人もおり、そんな人たちにはちょっとしたファンサービスをしておいた。視聴者は大切にしないとな。


 神武に入れてくれだの、パーティを組もうだの、弟子にしてくれだのと言い寄ってくる連中は追い払い、俺はダンジョン協会を出た。



「――お嬢、お疲れ様です」


 転生してすぐ、小鬼の迷宮まで迎えに来てくれていた人でもある道田が、俺を待っていた。相変わらずビシッとスーツを着こなしているが、そのガタイの良さは隠しきれていない。

 今では俺の専属となっており、運転や護衛などを務めてくれている。


「おめでとうございます。これで、Dランクですね」


「まだ結果は言ってないんだが?」


「まさか、お嬢が落ちるはずありませんよ。さ、どうぞ、お乗り下さい」


 まあ、受かってはいるんだが。何かしら問題が起きて、落ちた可能性は考慮しなかったのだろうか。それだけ信用されていると考えれば、嬉しいものだがな。


 道田が開けてくれたドアから、俺は後部座席へと乗り込む。そして、道田はドアを閉じた後に運転席へと乗り込み、こちらを伺う。


「今後はどのようなご予定で?」


「そうだな……」


 ぶっちゃけ特に予定はないんだが、せっかくDランクに昇級したしなぁ。


「――よし、ここから一番近いDランクダンジョンはどこだ?」


「今から行くんですか?」


「問題はないだろう? ああ、それと道田も一緒にダンジョンへ入ろう」


 俺は試験のために、武器とかは持ってきているし、道田も備えはあるだろう。まあ、道田にとってはDランクのダンジョンぐらい素手でも問題ないだろうが。


「……承知しました。最寄りのDランクダンジョンとなると、"豚頭の迷宮"ですね。40分ほどで着くかと」


「なら、そこに行くか。ついでに配信するのもいいな。直前ではあるが、予告しておこう」









「どうも、"豚頭の迷宮"の入り口から、こんにちは」


〈お嬢こんにちは~〉

〈あ、Dランクに昇級したんか。お嬢、おめでとう!!〉

〈土曜日やし、そこそこ人居るね〉


 前回は俺の初配信ということで、金に物を言わせて迷宮を貸し切っていたが、さすがに毎回そんなことはできない。そのため俺の周りには、普通にハンターたちがいるのだ。


「勘の良い人は既に気づいているようだけど、俺はDランクハンターになったぞ。1時間ほど前に」


〈1時間前ww〉

〈あー、協会から直で行ってんのか〉

〈生でお嬢と出会えてラッキーやった〉

〈昇級してすぐに、解禁されたランクのダンジョン行くのは、ハンターあるある〉


 先程、協会で出会ったらしい人も居るな。


「まあ、突発なのは間違いない。特に何も準備せずに来ているしな。それと今回、彩姉は不在だ。配信する予定は元々なかったからな」


〈弓姫なしか〉

〈ん?じゃあ、誰が一緒にダンジョン入るん?〉

〈ほんまに突発なんやww〉


「今回、一緒にダンジョンへ行くのはこいつだ」


「皆様、初めまして。道田と申します。私のことは、お嬢専属の従者だとお考え下さい」


〈ナチュラルにお嬢呼びで草〉

〈お嬢、ほんまにお嬢って呼ばれてんのか〉

〈お嬢呼びも相まって、もうヤのつく人にしか見えんww〉


「道田はBランクハンターだし、そこそこ強いぞ」


〈見た目から強そうやしな〉

〈Bランクハンターなの普通に優秀やん〉

〈お嬢の護衛は任せたぜ、道田の兄貴〉


「ご安心を。お嬢はDランクモンスターごときでやられたりしませんよ。おそらく、私の出る幕はないでしょうね」


「いや、今日はガッツリ出てもらうつもりだが?」


「……え?」


〈草〉

〈道田さんがドヤ顔で「出る幕はない」って言ってたのにww〉

〈Bランクハンターが戦っても、一方的になるだけじゃない?〉


「もちろん、俺も戦うぞ? ただ、前回の攻略でそこそこ魔力量が増えたからな。身体強化や照明以外の使い方を練習していこうと思う。今回、道田はその先生役だ」


「聞いてませんよ?」


「言ってないからな」


「……」


 これまでは魔力量が少なくて、出来ることがほとんどなかったんだが、ある程度の魔力を得た今、これを練習しない手はあるまい。


 ということで、ここで出るオーク君たちには、実験体になってもらいます。拒否権はないぞ。



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