第37話 竜の迷宮に挑戦するようです。



「ごきげんよう! 今日はついに竜の迷宮に挑戦しようと思う」


〈ごきげんよう!〉

〈ついにAランクダンジョンか~〉

〈共闘来るか!?楽しみ!〉


「それにしても、日曜日のわりに閑散としているなぁ……」


 俺がいるのはダンジョンの入り口だが、周りにハンターはいなかった。まぁ、ダンジョンの中には誰かはいるだろう。とはいえ、がら空きなのは事実だが。


〈そりゃ、Aランクハンターなんてそう多くないし〉

〈沖縄にあるダンジョンって極端やから、ギルドが本拠地とするには向いてないんよね~〉


 ――まぁ、そういうことだ。


 沖縄にあるダンジョンはここか、Dランク以下かだもんな。ギルドメンバーの育成を考えると、やはり不向きな場所だろう。


「さて、それはさておき。さっそく進んでいこうか!」



 竜の迷宮。その名の通り、日本で唯一、ドラゴンが出現するダンジョンだ。


 そしてここのボスは、アクアドラゴン。水属性のドラゴンである。これを考慮すると、水竜の迷宮といった名前の方が適切な気もするが、日本で竜が出るのはここだけということもあり、竜の迷宮という名前になっている。


 ボスがアクアドラゴンなら、道中現れる魔物は何か?


 その答えは――



「おっと、早速お出ましか」



 コウモリのような翼で飛んでいるのは、体長5メートルほどのワイバーンだ。亜竜・・とも呼ばれている。そして今更だが、このダンジョンはかなり広い通路となっており、ワイバーンが十分に滑空できるほどには広い。



「ギュアァアア!」



 こちらを認識したワイバーンは、一直線に滑空し、体当たりを仕掛けてきた。


 俺は十分近づけたところで横に避け、すれ違いざまに翼を斬りつける。


「ギャァッ!」


 ――チッ、なかなかに固い。


 両断する気で斬ったのだが、傷がつくだけに留まった。


 そして追撃とばかりに魔刀を生み出し、俺が先ほど斬った傷口へと殺到させる。



「――ッ! ギュアァアア!」



 なんとか翼を片方、使い物にならなくすることができた。これでもう飛ぶことはできまい。



 ワイバーンはなんとかこちらに接近しようとするが、バランスがうまく取れないのか、なかなか進めていない。



 その隙に、俺は魔力を凝縮させて、居合の構えをとる。



「シッ――!」



 足裏で魔力を爆発させ、推進力を得た俺は、全速力以上の速度でワイバーンへと接近する。


 そして、ワイバーンが反応するよりも早くに抜刀。


 その一撃は、ワイバーンの首を両断した。



「……ふぅ。なんとか1人でも戦えそうだな」


〈さすがお嬢〉

〈最後の一撃エグイな~。なんも見えんかった〉

〈気が付けばワイバーンの首が落ちていたんですが???〉


 やはり、この前の試験よりも調子がいいな。配信をすると力が増すのはよく分からないが、まぁ、たぶん、気分的な問題だろう。知らんけど。



「いや、すまんな。もっと余裕をもって狩れるようになったら、見やすい戦いができると思うんだが」


「一人で狩れるだけで、十分すごいと思うんだけどね?」


〈それはそう〉

〈お嬢いっつもソロだけど、普通はパーティで狩る定期〉


「……まぁ、高望みしすぎるのも問題か。今後の俺に期待だな」




 俺たちはそれからも順調に攻略を進め、10階層を超えた。


「こっからワイバーンが魔法を使ってくるよ」

「了解」



〈そろそろ共闘も見たいな~なんて〉



 そんなコメントが目に入る。この前に共闘をほのめかしたこともあり、少なくない人が俺と彩姉の共闘を待ち望んでいるようだ。



「……そうだな。この辺りで彩姉と共闘してみるか」


〈マジで!?〉

〈半年間待ち望んでいた共闘がついに実現するのか!〉

〈キター!〉


「いいの?」


「まぁ、いいんじゃないか?」


 共闘すると、1体の魔物から吸収できる魔力量が減るが、視聴者の希望の方が優先度は高いだろう。


「ふふっ、ちょっと楽しみね。サポートは任せて」


 彩姉は機嫌よさそうに、そう答えた。


 やはり、ずっと裏方を任せていたのは、ストレスになっていたのだろうか……?



「なんか変なこと考えてない? 私は巧美ちゃんのサポートをやるために、ハンターになったんだよ? どんな形であれ、巧美ちゃんの手助けをするのは私の望みなんだから、安心してね」


「……分かった。ありがとう」



 そんなこと言われたら、気合入れざるを得ないなぁ……!



「――ギュガアァアア!」



 さぁ、ワイバーンのお出ましだ。



「彩姉、準備はいい?」



 俺がそう尋ねると、彩姉は宙に浮かぶ半透明な球体ダンジョンシステムによるカメラ――俺と彩姉以外は認識できない――を操作して、撮影方法を手動から自動に変えた。


 そして弓を構え、自信満々に答える。



「おっけー」



 さて、この配信では初めての共闘だ。


 俺たちの戦いをその目に焼き付けろッ!



「いざ、ショータイム」



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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


初配信ぶりに、カメラについて描写しました。ダンジョンでのカメラは摩訶不思議なのです。


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皆さまの評価が執筆の励みとなっていますので、今後もよろしくお願いします!

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