第28話 研究の手伝いをするようです。
「ここが私の研究室だ!」
戌亥さんに連れられ、俺と彩姉はダンジョン協会本部の地下へとやって来た。オヤジと龍口会長は別に話すことがあるようなので、来ていない。
「まさか地下が、研究室になってるとはな……」
見てもよく分からない機材がたくさんあり、一目で活発に研究が行われていることが分かった。
「ダンジョンシステムに関する研究をするなら、ここ以上に適している場所はないだろうからな!」
確かに、素材が手に入れやすいというのは、研究を進めるうえで非常に楽なのだろう。
「君たちには今から、機械により放出された魔力を感じてもらう。ハイリザードマンが吸収したと感じる魔力量に達したら合図をしてくれ」
「それって、俺たちの感覚任せってことですよね? あまり正確な数値にはならないと思うんですが……」
「ははっ! それで十分だろう! いいかよく聞け。研究が正確な理論で始まり、正確な理論で終わると思ったら大間違いだぞ! 私たち
「なるほど?」
俺は前世でも高卒で、しっかり研究に携わったことはないため、あまりピンとは来ない。
「とりあえず、
「む、私を科学者と言ったか?」
「はい……何か問題でも?」
いや、そういえば、戌亥さんは自分のことを科学者ではなく、学者と呼んでいたか……?
「……まあ、知っておいて損はないか。いいか、もともと
「え、そうなんですか?」
「専門バカ的な意味合いがついているという認識でとりあえずいいぞ!
「へぇ……」
デカい胸を張り、高説を垂らしてくれているが、ぶっちゃけどうでもいいなぁ。
「あまり興味がなさそうだな?」
「いえいえ、とんでもない。自分の無知を恥じることはあれ、どうして関心を持たないことができましょうか」
バレテーラ。
「……ふむ。ならば1つクイズをしてやろう。ギターの演奏者を英語でなんという?」
「ギタ
「正解だ。では、ピアノの演奏者は?」
「ピア
「正解。では、音楽家は英語でなんという?」
「ミュージ
「語尾が変わったな? このように、専門的な職業の語尾には-istがつくんだ! そして総合的な職業は-ianなんかがつくことが多いぞ!」
「へぇ! ああ、だからサイエン
クソ、普通に面白い話だった。
「語学も面白いだろう? さて最後に、数学者は英語でなんという?」
「マセマティシャン……あれ?」
「実は語源的には"学んだ者"というのが本来の訳に近いんだぞ! 博学者も英語でpoly
「なるほど……」
なんか、最初はどうでもいいと思っていたから、普通に感心してちょっと敗北感あるなぁ。別にいいけど。
「そういうことだから、私のことは科学者ではなく、学者と呼べ!」
「分かりました」
「――まあ、今まで話したこと全部、デタラメかもしれないけどな! ハハハッ!」
「えぇ……」
それでいいんか?
「……あの、いつになったら魔力量の推定を始めるのですか?」
「あぁ、すまない、西園寺ハンター! そうだな、じゃあ2人にはこの部屋に入ってもらうぞ!」
「分かりました」
指示に従い、俺と彩姉の2人は指定された部屋に入った。
その中心には不思議な機材が存在する。
「魔石を砕くと、魔力が放出されることは知っているな?」
「はい、もちろん」
確かその魔力をエネルギーに変換したりしているはずだ。
「それを利用した、特定量の魔力を放出する機材がこれだ! 2人とも目をつむり、放出された魔力に集中してくれ! さっきも言ったが、ハイリザードマンが吸収したと感じる魔力量に達したら合図をしてくれ!」
「了解です」
「では、少し待て!」
戌亥さんは部屋の外で何やら操作をし、こちらを注目した。
「それでは行くぞ!」
その声とともに、徐々に魔力が放出されていった。
俺たちは指示通り目をつむり、放出された魔力に集中した。
――次第にその魔力量は高まっていき、あの時感じた上昇量になったと俺が感じたタイミングで手を挙げた。
「――OK! もう目を開けてもいいぞ!」
さて、どういった結果が出たのだろうか?
「2人とも、ほとんど同じタイミングで手を挙げたな? これは少し精度に期待できるな!」
「それで、吸収率はどれほどでしたか?」
「まあ、そう焦るな! ……む、結果が出力されたぞ! だが、これは想像以上だな……」
「どれどれ……えっ、マジか?」
そこに書かれた数字は、78%――つまり、自分とほとんど同じ強さの魔物を1体殺した魔物は、それだけで強さが約1.8倍になるということ。
「……確か、人が魔物を殺したときの吸収率は、3%未満でしたっけ?」
「ああ、そう言われているぞ!」
「えぇ……ってことは魔物は人の26倍の速度で成長する可能性があるってことですよね?」
「可能性はあるな! まあ、今回のデータが正しい保証もないんだがな!」
思ったよりも、この逸脱種というのは危険な存在なのかもしれない。
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