第6話 初配信は気合十分なようです。



 ――ギルド、神武。


 日本最強と名高い、そのギルドを知らない人はいないだろう。


 誰もが憧れるギルドだが、その加入には非常に高いハードルがある。メンバーは基本、ダンジョン発生以前からの門下生かその推薦者であり、少数ながらもそのほとんどが一騎当千の高ランクハンター。


 そんな神武であるが、その実態をよく知るものは少ない。


 ギルド長は広報活動に関心を示さず、彼らに取材をしたければ、その親会社とでもいうべき西園寺財閥に話を通す必要があった。


 そして、他の多くのギルドには存在する、広報担当のハンターが存在しなかった・・・・・・・のだ。


 しかし、それもすでに過去の話となった。



 ――神武ギルド公式ダンジョン配信者の誕生が、発表されたのだ。



 普段ほとんど稼働しないギルドのSNSが動き、西園寺財閥も全面的にこれを支援。


 一体だれが、配信者として活動するのか、数々の議論がネット上で行われ、大きな注目を集めた。


 そんな中、出された続報に、人々はさらに驚くことになる。



 ――その配信者は15歳の少女である。



 15歳というと、ダンジョンに入れる最少年齢。つまり、ハンター初心者なのは間違いない。


 ギルドの広報担当は、そのギルドの顔となるため、基本的に高ランクハンターが望ましいとされている。


 ギルドの意図が読めず、混乱する人々が多かった。


 だが、他でもないあの・・神武ギルドが選んだ人物ということもあり、不安とともに大きな期待を寄せられていた……。







「……さて、いよいよだな」


 目の前に映し出された待機所には、初配信とは思えないほどの人が集まっており、すでに多くのコメントが流れていた。どういう仕組みなのか全くわからないが、ダンジョンシステムの1つだ。


彩姉・・、カメラの準備はいいか?」


「うん、ばっちりだよ」


 彩姉は宙に浮かぶ半透明な球体を操作しながら答えた。これもダンジョンシステムの1つである、摩訶不思議なカメラ。指定した人物以外は認識することができず、また撮影方法は手動と自動の2パターンあるらしい。


 今回は、彩姉がカメラマンを担当してくれる。



「よし、それじゃあ始めようか」



 深呼吸ののち意識を切り替え、俺は配信をスタートした。









「みなさん、初めまして。この度、神武ギルドの公式配信者となった、巧美だ。よろしく。それで、ちゃんと聞こえているか?」


〈は?可愛すぎん?〉

〈聞こえてるよ~〉

〈あまりにも美少女〉

〈聞こえる〉

〈めっちゃ声いい〉

〈顔採用かよ〉

〈こんな金髪碧眼の美少女なのに、名前かっこくて草〉

〈ここ小鬼の迷宮じゃね?〉


 よし、音声の方も大丈夫そうだ。


「気づいた人もいるようだな。ここはEランクダンジョン、小鬼の迷宮。その入口だ。この後、ボスまで一気に倒す予定だぞ。ちなみに今回はソロ攻略だ」


〈初心者にはボスキツイやろ〉

〈ここのボスって強い?〉

〈小鬼の迷宮は10階層まであって、ボスはDランクモンスターのゴブリンロードやな〉

〈Eランクのダンジョンの中でも、レベルは高い方やのに大丈夫か?〉

〈ダンジョン初めてじゃないん?〉

〈男口調の美少女すこ〉


「今回が初めてのダンジョン攻略だな。ほら、これがハンターカード。ちゃんと発行日が今日だろ?」


〈ほんとだ。日付今日やわ〉

〈ちゃんとEランクって書いてるな〉

〈待って、苗字荒河??〉

〈いや、初日でソロボス攻略は無理やろ。ダンジョンなめすぎ〉

〈武神と苗字一緒やんw〉


「ああ、俺のオヤジが荒河武雄だからな。そりゃ苗字は一緒だよ」


〈は?〉

〈俺っ子なんですね。かわいい〉

〈え、武神って子供いたの!?〉

〈そもそも結婚してたっけ?〉

〈顔全然似てなくて草〉


「色々あって、養子になったんだ。だから、血はつながってないぞ」


〈ほへー〉

〈情報量多いて〉

〈親が武神で、こんなかわいいとか、人生勝ち組すぎんか?〉

〈こんな天使に罵倒されたい〉

〈キモイの湧いてて草〉


「まぁ、俺の身の上話はこれぐらいにしておいて、次はアシスタントの紹介だな。彩姉こっちに」


「は、はーい。初めまして。西園寺彩です。巧美ちゃんのアシスタントを担当します。よろしくお願いします」


〈アシスタント豪華で草〉

〈彩姉呼びかわいい〉

〈アシスタントも美人さんやな~。百合配信ある?〉

〈ガチガチに緊張してるやんww〉

〈弓姫が保護者なら安心だ〉

〈配信者が彩さんっていう予想多かったんだけどな~。そう来たか〉


 実は俺が転生するまでの間、彩姉もオヤジのもとで修行していたらしく、15歳からはダンジョン攻略をしていたのだ。それから5年経った今では、"弓姫"と呼ばれるAランクハンターになっていた。


「今回私は、巧美ちゃんのカメラマンとして働きますので、攻略には手出ししません」


〈弓姫の攻略見たかったな〉

〈二人仲良さそうやな〉

〈でも、初心者一人で攻略は無理じゃね?〉

〈巧美ちゃんは、刀持ってるし前衛?〉


「俺は生粋の前衛だぞ。魔法も光属性と無属性しか適性がない」


〈ゴブリンの群れも出てくるし、一人はキツイやろ〉

〈そんなんで大丈夫か?〉

〈まあ、弓姫おるし、最悪なんとかなるか〉


 俺が攻略できないと思っている視聴者が大半のようだな。


 まぁ、無理もない。このダンジョンは、あと少しでDランクに手が届くと言われるような、Eランクハンター4、5人ほどのパーティで攻略するのが、適性とされている。ソロとなると、Cランク相当の実力がいる。


 そんな小鬼の迷宮を、ダンジョン攻略未経験の素人がソロ攻略するなんて無謀そのもの。



 ――だが、だからこそ面白い。



 俺は別に、攻略を目標としていない。俺が目指すはただ一つ。圧勝だ。



 視聴者どもよ、目を見開け。今から見せるのが、俺の戦いだ。俺の舞台だ。



「話はこれぐらいにして、さぁ、今から攻略を始めるぞ」



 いざ、ショータイム。



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