第45話 Sランクハンターに昇級したようです。



「「Sランクへの昇級おめでとう!」」


 そんな声とともに、パンッ、と一斉にクラッカーが鳴った。


「ありがとう! お堅いのはもういいから、気楽に楽しもう!」

「私からも、ありがとうございます。今日は楽しみましょう!」


 俺たちが集まっているのは我が家――荒河邸だ。


 正直少し狭く感じるが……まぁいいだろう。



 公的なSランクへの昇級式は先ほど大々的に行われた。新たなSランクハンターの誕生は、国中から注目を集め、俺もそれなりにお堅いインタビュー等を受けた。


 別にそれが嫌ってわけじゃないが……もっと気楽な方がいい。


 というわけで、俺の知り合いだけを集めた、小規模なパーティを催すことにした。



「あの、お姉様」


「ん? どうした麻衣?」


 最初に声をかけてきたのは、俺の同級生で役者をやっている浅見麻衣だった。


「このパーティに呼んでいただけたのはありがたいんですけど、私、場違いじゃありませんか?」


「んー、確かに周りはハンターがほとんどだが、そんなこと気にする必要はない。俺が呼びたいと思った人を呼んでいるだけだし。それとも、ここに来るのは嫌だったか?」


「いえいえいえ! とんでもない! こうしてお姉様の記念すべきSランク昇級を祝うことができて私はとても幸せです!」


 麻衣は早口でそう言い切ると、バッと俺を抱きしめた。


「わずか7か月で最高峰のSランクハンターになってしまうなって、さすがはお姉様です!」


「ははっ、そうだろう、そうだろうとも!」



 気分よく麻衣を抱きしめ返し、笑っていると、彩姉から冷え冷えとした声がかけられた。



「――浅見さん、ご両親はご一緒ではないのですか?」


「……チッ。嫌だなぁ、西園寺さん。私はもう16歳ですよ? 子供じゃないんだから、いつまでも両親同伴で来るわけないじゃないですか」


 麻衣は俺から離れて彩姉の方を向き、そう答えた。


 てか、今舌打ちしなかった……?


「まだ未成年じゃないですか。大人というにはまだ早い気もしますけどね」


「そうでしょうか?」


 麻衣はそう答えると、なぜか胸を張り、手を腰に当てた。


 ……俺や彩姉よりも、どこ、とは言わないが強調されている。


「むっ……」


「ふふふっ」


 怖いって。


「俺は他の人に挨拶してくるな~」


 そう言い残して俺は、そそくさとその場を去った。



「――よっ、今日は来てくれてありがとうな」


「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。改めて、Sランクハンターへの昇級、おめでとうございます」


 鉄仮面モードで返事をしたのは、蒼牙のギルドマスター、露崎蒼。


 何を隠そう、蒼は紛うことなき――ぼっちである。


「……これを機に友達作れよな」


「うっさい――こほん。……それにしても、あっちは、ほっといていいの?」


 蒼は俺の耳に近づいて小声でそう言うと、彩姉と麻衣の方に目を向けた。


「あー、うん。ほら、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃないか」


「そう? あの子たち、随分とこっちを見てるようだけど」


「……まぁ、気にしたら負けだ。あっ、そうだ。あいつらと仲良くなったらどうだ? まだハードルは低いだろ」


「そう、かしら? 私にはそうは見えないけれど」


「まぁまぁ、そう緊張せずにさ」


「ちょ、押さないでよ」


「まぁまぁ、そう言わずにさ」


 俺はそう言いながら、蒼を2人がいるところへと連れて行った。


「――彩姉、麻衣。こちら、蒼牙のギルドマスターたる露崎蒼さんだ。仲良くしてやってくれ」


「……初めまして。露崎蒼と申します」


「堅いって」


「うっさい、巧美は黙ってて。あ……こほん。あの、仲良くしてくれると、その、嬉しいです?」


「なんで疑問形?」


「さっきから、うるさいわよっ」


「はははっ!」


 まぁ、蒼が友達を作るには、これぐらい強引でないとな。



 頑張れ、蒼。応援しているぞ。



「こちらこそ、氷華と呼ばれる露崎さんにお会いできて光栄です。……随分と巧美ちゃんと仲がよろしいようで」


「え、あ、はい」


「ぜひとも、巧美ちゃんとどのような話をしているのかをお聞かせいただきたいですね」

「私も気になります」


「あの……?」


「どうかしましたか? ええ、これから仲良くしていきましょう」

「西園寺さんの言う通りです。仲良くしましょう」


「ひっ……! ちょっ、この2人なんかこわいんだけど!?」



「あー、その……頑張れ」



 こちらに手を伸ばす蒼を見て見ぬふりをして、俺はその場を立ち去るのだった。



「――巧美」


「ん? なんだオヤジ?」


「いや……」


 オヤジはポンと俺の頭に手を載せ、くしゃくしゃと撫でた。


「随分と成長したもんだなぁと思ってのぅ。まぁ、まだまだ儂には遠く及ばんが」


「はっ、今に見てろ。あっという間に追い越してやるから」



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