第44話 ダンジョン協会の会長と話すようです。



「お久しぶりです、龍口会長」


「久しぶりだね、荒河さん、西園寺さん。どうぞ、席に座ってくれ。……さて、早速だが、先日のスタンピードにあたっては2人とも、随分と活躍してくれたね」



 そういうと龍口会長は、お茶を少し口に含み、ふぅ、と息を吐いた。



「いえいえ。ですが、人的被害がゼロだったのは幸いでした」


 龍口会長の言葉に、彩姉がそう答える。


「もっと誇ってもいいと思うんだがね? そうは思わないかい?」


「ええ、全くもってその通りだと思います。ワイバーンを討ち漏らすこともなく、迅速に殲滅できたのは、彼女のおかげといっても過言ではないかと」


「ああ、話を聞く限りそのようだね。もちろん、荒河さんのことも高く評価しているよ。何といっても、単独で元凶を排除したんだから」


「ありがとうございます。正直、最初は歯が立たなかったのですが、人間やればできるものですね。自分でもよくやったと思います」


 今思い返しても、やはりあの一戦での成長は素晴らしい。さすがは、俺だな。うん。


「はははっ! そのぐらい堂々と誇っている方が、私は良いと思うよ! 西園寺さんも、荒河さんぐらい胸を張ると良い!」


「ええ、巧美ちゃんのドヤ顔可愛いですよね」


「ん?」


「え?」


 ……俺は反応しないぞ。



「……こほん。まぁ、ともかくだ。私は今回の件において、君たち2人を特に評価している。そこで、君たち2人に提案があるんだ」



 そこで龍口さんは言葉を区切った。




「――2人とも、Sランクハンターにならないか?」


「なります」




「……えっ、ちょ、巧美ちゃん? もうちょっと話を聞いてからでもいいんじゃない?」



「何を悩む必要があるんだ? もとよりSランクハンターになるのは、俺の目標だったからな。断る理由なんて無いだろう?」



「……ははっ! 断られるとは思っていなかったけど、即答とはね。もしかして、予想していたのかい?」


「いえ、そういう訳ではないのですが、こういった機会は見逃さないように意識しているんです」


「なるほどなるほど……その貪欲なまでの向上心が、君をそこまで強くしたのかもしれないね」


 そこで再び、龍口会長はお茶を口に含む。


 そしてそれに倣い、俺もお茶を一口飲んでみた。


「おぉ……」


「ふふっ、良いお茶だろう?」


「はい。豊かな香りもさることながら、旨味が強いですね」


「緑茶の王様とも呼ばれているんだ。気に入ったなら、持って帰ると良い」


「良いんですか? ではお言葉に甘えて頂戴いたします。……彩姉もそう悩まずに、とりあえずお茶でも飲んでみたらどうだ?」


「……そうね、それじゃあ頂きます……あ、おいしい」



 ふぅ……と俺たちは一息ついた。



「さて、話を戻すが、Sランクに昇級してもらうのは1か月後ぐらいになりそうだ。人的被害がゼロだったとはいえ、未だ避難所で暮らすことを強いられている人もいる。だが、1か月もあればある程度改善するだろう」


 1か月か……前世、15年ほど前だったらこれほど早くはいかなかったはずだ。ダンジョンの出現による恩恵はやはり大きいな。


「そして1か月後、今回のスタンピード解決の活躍を大々的に讃え、新たなSランクハンターの誕生を発表しようと思う……そういえば、西園寺さんからはまだ返事を聞いていなかったね」


「……お気遣いありがとうございます。ですが、問題ありません。私も巧美ちゃんと一緒にSランクに昇級したく思います」


「良い返事を聞けてなによりだよ。昇級に関する詳細はまた後日、連絡する。一応、今回の昇級に関しては内密に頼むよ。まだ段取りも出来ていないからね。……うん、今日私から君たちに伝えたかったことはこれだけだよ」



 龍口さんはそう言うと立ち上がり、茶葉を紙袋に入れて渡してくれた。



「それじゃあ、今後も頑張ってね。ああ、あとそれから、戌亥君が会いたがっていたから、帰るついでに顔を出してやってくれ」


 戌亥さんと言えば、あのダンジョンの研究もしている学者だな。あの研究室に行けばいいのだろう。


「分かりました。ありがとうございます」



 俺たちは退出し、地下にある研究室を訪問した。



 ここで戌亥さんと話し、とある疑問点が出たのだが、その真相が明らかとなるのは、もう少し先の話だった。



 そして配信や鍛錬を変わることなく続け、あっという間に1か月が経ったのだった。



******************************************************

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたなら【フォロー】【応援】【★★★のレビュー】などをしていただけると嬉しいです!


皆さまの評価が執筆の励みとなっていますので、今後もよろしくお願いします!

******************************************************

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る